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第67話 雷神召喚

「嘘……よね」



「嘘と……信じたいですね」



互いに言葉を交わしあるモンスターを見上げるシャリエルとサレシュ、彼女達の目の前にはオーガが立って居た。



体長4メートル程のオーガ……だがその体は傷だらけで腐臭が漂って居た。



オーガのアンデット化、 死なないオーガ、初めて見る種類だった。



「サレシュ……支援お願い」



「分かりました」



シャリエルの言葉に頷くとサレシュは祈りを捧げる、そして彼女に身体能力の加護を与える、シャリエルは魔紙を破り捨て雷を纏うと拳を構えた。



普通のオーガ族の様に話したりする知能は無い様子……シャリエルは足元に素早く移動して打撃を喰らわせるも削り取った肉体から即座に再生し、無意味だった。



「再生能力は健在の様ね」



所々腐敗し抉れている部分が修復されないのは謎のままだが新しい傷は付けられない様子、それに加えてアンデットになった事によりオーガの時よりタフになりパワーも増している様だった。



のろのろと腕を振り上げるとシャリエル目掛けて振り下ろす、遅すぎるスピードにシャリエルは軽々と避けるが拳が地面に当たった瞬間、大地に亀裂が入った。



盛り上がる土に足を取られ動きが鈍る、咄嗟にその場から引こうとするが上を見上げた瞬間、オーガの拳が迫って居た。



「な!?」



先程とスピードが違った、新種というだけあり未知数な部分が多かったが……知性がないふりをして居た様子だった。



オーガの顔には不敵な笑みが浮かべられていた。



「シャリエルさん!!」



サレシュが叫んだ瞬間オーガの大木の様に太い腕から振り下ろされれる拳がシャリエルの居た場所を叩き潰した。



「危な……念の為破っておいで正解ね」



魔紙の破片を捨てながらシャリエルはオーガの頭に乗っかり呟く、シャリエルの纏って居た白のローブがいつの間にか雷を纏う鎧へと変わって居た。



シャリエルは拳を握り締めるとオーガの脳天目掛け振り下ろす、するとオーガの体に電撃が走り次の瞬間黒焦げになりその場に倒れた。



「しゃ、シャリエルさん……無事で良かったです」



「この程度で私がやられる訳ないでしょ」



心配するサレシュの背中を叩くシャリエル、そして顔を上げたその時、目の前に飛び込んで来たのは苦労してやっと一体倒したアンデットオーガの群れだった。



新種かと思っていたアンデットオーガが数百は超える群れを率いて近づいて来るその光景に一瞬思考が止まる、だが直ぐに我に帰るとサレシュの方を振り向いた。



彼女も同様に驚き戸惑っている様子、彼女のサポート魔法でどうにかなる数では無かった。



「サレシュ……ごめん」



「シャリエル……さん?」



シャリエルの言葉に首を傾げるサレシュ、次の瞬間シャリエルは魔紙をサレシュに無理やり破らせ転移魔法を発動させた。



「な、なんでですかシャリエルさん!?」



転移魔法の光に包まれる中怒り混じりの声色で叫ぶサレシュ、どう見ても勝てる数では無かった。



それに加えて転移魔法は少し発動に時間が掛かる、一人残って時間を稼がないと行けない、そうなれば雷装魔法を使える自分が残った方が得策だった。



「大丈夫、向こうに着いたら増援期待してるから」



そう言い雷が纏われた拳を構えるシャリエル、何処を見てもアンデットオーガだった。



全てが未知数故弱点も不明……だがアンデット種だとすらなら、光が弱点の筈だった。



シャリエルはグッと足に力を入れ空高く飛び上がると上空で光の魔紙を破り捨て一時的に擬似的な太陽を作り出す、だが動きは鈍っていなかった。



効果が無いと分かった途端直ぐ様ポケットから小瓶を取り出しオーガに投げ掛ける、小瓶はオーガの身体に当たり割れると音を立てて溶けるが直ぐ様修復された。



「聖水自体の効果はあるけど再生能力の所為で実質無意味……か」



本格的に攻めてが無くなっていた。



ジリジリと近づいて来るオーガと距離を保ちながら後ろに退がる、その時背後から殺気を感じた。



咄嗟に後ろを振り返るシャリエル、其処には何故かアンデットオーガが拳を振り下ろそうとしている状態で立っていた。



いつどのタイミングで後ろに回ったのか全く分からなかった。



「これは……やばい!?」



足に力を入れ横に飛ぼうとするも拳の迫り来るスピードの方が速い、シャリエルは咄嗟に両腕で拳を受け止めると地面が衝撃で吹き飛んだ。



雷の鎧を具現化した状態で纏っている腕が折られる……だがシャリエルは集中を切らさず距離を取ると辺りを見回した。



「囲まれてる……」



無意識のうちにオーガ達に囲まられる様誘導されていた様だった。



痛む腕で懐から魔紙を取り出すと残量を確認する、多様な魔法があるが……この状況を打開出来る魔法は無さそうだった。



魔法の名家に生まれながらも魔法の才能が無い自分が魔紙と頭の回転、判断力の良さだけで上り詰めたダイヤモンド級冒険者という立ち位置……だがそれも今日までの様だった。



魔紙は魔力を予め込め、魔力消費ゼロで撃てる道具……だがその代わり破った魔紙の魔法は再度込めるまでは使えない、こう言った不測の状況下に置いては明らかに不利だった。



どの魔法が効くのかを試しに使わないと行けない、例え効いたとしても使える魔紙には限りがあった。



雷装魔法のストックも少ない……絶望的だった。



だがシャリエルは諦めずに折れた腕を上げて拳を構えると手招きをする、絶望的な状況でも逃げない……そう誓ったからには常に生きる為の手段を考えた。



オーガの攻撃を交わし足元に入ると背中を使って頭へ登ろうとする、だがオーガは凄い力でシャリエルを振り払った。



落下したシャリエルを踏み潰そうと足を上げるが直ぐ様立ち上がると攻撃を交わす、決定的な一撃をオーガに与えられない代わり、オーガ達も群れと言う事でスペースがなく小さいシャリエルを倒す事が出来なかった。



「どう攻めるべきなのかしら……」



絶えず足を動かしながらこの場を生き抜く方法を考える、此処で彼らをどうにかしない事には王国軍の勝ちは無かった。



「やるしか無さそうね」



シャリエルはオーガ達から数メートル距離を取ると一枚の折り畳まれた大きな魔紙を取り出し地面に広げる、そして指を切り薄っすらと描かれていた魔法陣の上に血で上書きすると最後に指を中心に押し付けた。



そして両の手を合わせ詠唱を始める、その隙を見逃さまいとオーガ達はシャリエルの元へ近付こうとするが一枚の魔紙から発生した謎の結界により行く手を阻まれていた。



『召喚憑依魔法 神取り憑き』



詠唱の最後の部分を唱えると魔法陣から眩い光が放たれる、そして天から光が差し込みシャリエルを照らすと次の瞬間、戦場全てを光が包み込んだ。



そして光が晴れると其処にはシャリエルの姿をした何者かが居た。



『久々の召喚……器はそこそこ耐えられそうな身体だな』



そう言いシャリエルの姿をした何者かは手を開いては閉じてを繰り返し力を確かめる、ふとオーガ達を見るとちょうど結界を破り去って居た。



『コイツらをやれと言う事か……我の名は雷神アクトール、いざ行くぞ』



そうシャリエルの姿でアクトールは言い放つと身体に雷を纏い、ふらっと余裕ある足取りで一歩踏み出した。

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