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第53話 暗黒神の復活

目の前に広がる光景、奇妙な長方形の魔剣が置かれた台座近くに立つ魔法陣が身体に描かれた男と椅子に座って居る大きめな帽子に黒のローブを羽織った魔女と言わんばかりの服装をした女性を前にシャリエルはただ立ち尽くして居た。



「あら、みーんな倒しちゃったの?」



魔女はアルセリスとシャリエルの二人を見てアルセリスの方を向くと椅子から立ち上がり杖を向ける、その瞬間アルセリスは元いた位置から2メートルほど横に一瞬で移動した、そしてその直後、アルセリスのいた場所の地面がまるで何かが落ちて来たかの様にドンっと言う音を立てて抉れた。



「へー、避けれるのね……」



アルセリスの反応速度に平然とした態度を取って居るものの驚きを隠せずに居る魔女、二人を見てアルセリスは剣を鞘に収めた。



「どうしたのよセリス?」



突然剣を鞘に収めたアルセリス、その身体は震え、拳を握り締めていた。



「すまない……怒りを、抑え切れそうに無い」



「貴方何を言って……」



魔女がアルセリスの言動に疑問符を浮かべ尋ねようとしたその時、彼女の頬に何か……液体が付着する感覚があった。



その感覚に魔女は頬にそっと手を当てなぞる、そして液体をなぞり取り視線を向けるとそれは血液だった。



「な、なにが!?」



突然の出来事に彼女はパニックに陥る、魔女はシャリエルの方を見るが口を手で覆い彼女は驚愕して居た。



その視線の先を目で追うと其処には先程まで隣に居た魔法陣が刻まれた男、フェデリーの頭部だけが転がって居た。



「うっ……」



思わず魔女はその場で嘔吐する、そして顔を上げると其処にはアルセリスが立って居た。



「な、何者なのよ!あんな一瞬でフェデリーがやられるなんてあり得ない……彼は成功作品の一人なのに!」



腰を抜かしながらも必死に後ろへと下がる魔女、彼女は完全に恐怖に支配されて居た。



突然現れフェデリーを一瞬にして殺した謎の黒い騎士……噂は本当だった。



アラサルを一瞬にして倒し、クリミナティに置いてトップレベルの強さを誇る二人組のデラスとミリアのコンビを倒した謎の黒い騎士がいると報告を聞いて居た……まさかとは思って居たが本当だったとは……とんだ誤算だった。



「お前も今すぐに殺したい所だが……ランスロットの仇は討った、お前からは色々と聞かせて貰おうか」



そう言いアルセリスは魔女の胸ぐらを掴むと軽々と持ち上げる、必死に足をジタバタさせるが慎重160センチ足らずの魔女の足は宙に浮き意味を成さなかった。



「な、何をする気……?」



「一先ず名前を尋ねよう」



「しゃ、シャリール……」



アルセリスの問いにシャリールはすぐ様答える、彼の意図が分からなかった。



一先ず打開策をシャリールは考える、幸いにも掴まれているのは服……どうにか逃げ出す事は出来そうだった。



「クリミナティ、お前達の目的はなんだ」



その言葉にシャリールは視線を逸らす、何か嘘を考えなければ……だが頭は働かない、圧倒的な恐怖を目の前にすると人はこうも動揺してしまうものなのだろうか。



昔から身体が弱い代わりに魔術の才能と頭の良さが群を抜いて秀でて居た……戦場での判断能力、どんな状況下でも冷静に対処して来た、だがこんな経験は初めてだった。



「どうした、言えないのか?」



アルセリスの服を握る力が強まる、早く言わないと殺されかねなかった。



だが何を言えばいいのか……アラサルの件で国が目当てでは無いことはバレている筈……それに加えてアーネストの魔剣を回収した事から魔剣関連だとも勘付かれている筈……八方塞がりだった。



(考えないと……私はこんな所では死ねない)



必死に思考を張り巡らせる、その時、とある事を思い付いた。



「ま、魔剣を改造して……魔の属性が付与された混血種を造り出す事が……目的よ」



フェデリーが殺された時自分は成功作品と言った、その事で彼に研究者である事は伝わった筈……この嘘なら通せる筈だった。



その言葉にアルセリスは少し黙り込む、その様子をシャリールはただ息を呑み待っていた。



「シャリール……何処かで聞いた名だと思ったらセルナルド王国で人体実験を仕切ってた魔導師じゃない?」



先程まで黙って居たシャリエルが突然口を開く、思わぬ援護……これで信憑性は高まった筈だった。



「人体実験……アルラ、この名に覚えはあるか」



「アルラ……」



昔の事ではっきりと記憶には残って居ないが確かオーガ族との混血種で数少ない実験成功者の一人だった筈……だがミリィの記憶の方が強くあまり思い出せなかった。



「あまり詳しい事までは思い出せないけど」



「そうか、ならミリィ……彼女の居場所は分かるか?」



その言葉に首を振る、何故彼がミリィの名を知っているのかは分からないが彼女は私がセルナルド王国を留守にしている間に逃げ出してしまいその後消息不明だった。



実験室も派手に壊れ混血種の村も壊滅……あの時の事は謎のままだったが今はどうでも良かった。



シャリールはアルセリスにバレないよう魔剣が置かれた台座を横目で確認する、距離的には5メートル……微妙な距離だった。



「分からないか……仕方ない」



ミリィの事で少し落胆するアルセリス、その時……若干だが服を掴む手が緩むのを感じた。



その瞬間シャリールは服を無理矢理破り手から抜け出す、そして詠唱無しで移動魔法を使い台座へと向かいそして魔剣の前に立ち儀式を行おうとしたその瞬間、胸が熱い感覚に襲われた。



その瞬間何が起きたか理解した……肌を滴る液体の感触……恐らく剣で貫かれたのだろう。



「だけど……せめてこの儀式だけは!!」



シャリールは滴る血をなぞり取ると魔剣の刀身をなぞる、そして台座に手をかざすとシャリールはその場に倒れた。



「やり……遂げた」



意識は朦朧とする、屋根が独りでに崩れ落ちると空には5重に重ねられた大小様々な魔法陣が浮かんで居た。



「暗黒神か……」



生き絶えているシャリールを横目にアルセリスは呟く、彼女の目的は最初から分かっていた、正直あの会話は最終的に不意を突かれ儀式を成功させてしまったと言う言い訳をシャリエルにする為の前段階、元々暗黒神を復活させるつもりだった。



理由なんてものは無い、強いて言うなら『神』と名のつく者と戦いたかったからだった。



ゲーム時代でも中々強かった暗黒神……この世界では驚かされる事ばかりだった故、楽しみだった。



大規模な魔法陣が重なり合い一つとなる、そして魔法陣から足が見えた。



「な、何が起きてるの?」



上空に浮かぶ魔法陣、そして巨大な足にシャリエルは戸惑う、初めて見る光景なのだから無理は無かった。



「暗黒神の復活だ、かつてこの世界を闇に染めたと言われる忌々しい神のな」



「暗黒神……」



シャリエルは震えていた、空に感じる禍々しい気配、目が離せなかった。



大きな足が徐々に姿を現して行く、その様をアルセリスは眺めていると不意に近くから声がした。



『やっと復活出来たな……クリミナティの者達には感謝せねばな』



台座の方から聞こえてくる声にアルセリスは視線を移す、すると其処にはアルセリスに似ては居るが少しスマートな黒い鎧を見に纏った者が立っていた。



「暗黒神……」



そう呟くアルセリス、暗黒神カルザナルド……禍々しいオーラが彼を包んで居た。



『ほう、我を知って居るか、念のため聞くがお前はクリミナティか?』



その言葉に首を振る、その瞬間地面から無数の鋭利な闇がアルセリスに襲い掛かる、だがその全てをアルセリスは拳で殴り、消し飛ばした。



その光景にカルザナルドは笑った。



『はっはっ!復活して早々これ程の強敵と相見えるとは!だが……我はまだ完全では無いからな、今はお預けだ』



そう言いカルザナルドは飛び上がると魔法陣から出てきた巨大な顔の無い魔人の肩に乗り魔法陣を消すとその場から立ち去る、それをただアルセリスは眺めて居た。



追い掛ける気は無い、暗黒神が再びこの世界に降り立った……これは好都合だった。



「な、なによあれ……」



シャリエルの震える声にアルセリスは彼女を見ると身を震わせ怯えて居た、彼女の足元には水溜りが出来ている……余程の恐怖を感じたのだろう。



アルセリスは視線をシャリエルから外すと台座のある部屋から出て耳に手を当てる、そして王国メンバーに一斉通信を行った。



『暗黒神が復活した、状況報告も兼ねて帰還せよ』



そう伝えると通信を切り城を出る、暗黒神カルザナルド……彼の復活によりアルセリスはかつて無いほどに興奮して居た。



守護者に匹敵する程の強さ……戦うのが楽しみだった。



アルセリスは怯えるシャリエルの肩を掴むと転移の杖を使い、誰も居なくなり静かになったオーエン城から転移した。

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