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第174話 赤髪の少女

中々更新スピードがあげられない……

「なに暗い顔してんだよ」



船の甲板でただひたすら遠くを見つめる隼人にオーフェンが尋ねる。



暗い顔……指摘されるまでそんな顔をしている事すら分からなかった。



表情に出る……考えない様に遠い場所を見ていたのだがやはり恐怖は拭えない様だった。



「怖い……のか?」



隼人の表情に何かを察したのか、手すりに腰掛け尋ねる、そこまで悟られるとは情け無かった。



「あぁ……死ぬかも知れない、その事に対しての恐怖がずっと消えないんだ」



「死への恐怖……ねぇ」



そう言いオーフェンは空を見上げる、今にも雨が降り出しそうな曇天、お世辞にも良い天気とは言えなかった。



「アルラやユーリは人間じゃねーから知らないが普通の人間なら皆んな死ぬのは怖いぜ、勿論俺もな」



「オーフェンも死が怖い?」



耳を疑った。



死が怖い、そんな感情があるなら戦闘なんて好まない筈……オーフェンの性格からは考えられなかった。



「当たり前だ、酒を浴びる程まだ飲みたいし女遊びもしたい……死ぬのは怖い……だがそれ以上に怖い物があるんだよ」



「それ以上に怖い物?」



見当も付かなかった。



「仲間を失う事だ」



「仲間を失う事……」



おうむ返しをする、するとオーフェンは頷いた。



「あぁ、俺は孤高の一匹狼って思われてる見たいだが20年前くらいはちゃんと仲間が居た、だがそれを失った……だから俺はずっと一人だったんだよ」



そう言い胸に掛けられた三つの銀色に光るタグを隼人に見せる。



「付き合いは浅いが俺はお前らの事を仲間と思っている……だから今は自身の死よりもお前らが死ぬ事の方が怖い、だから戦える、仲間の為にな……まぁ、アルラの方がお前の為に戦えると思うけどな」



そう言い笑うオーフェン、仲間の死が怖い……その言葉にランスロットの事を思い返していた。



あの頃はまだゲームと思っていた……ランスロットの死もそれ程悲しさは無かった、だが今……アルラやユーリ、オーフェン達を失うのは怖かった。



幼い頃から他人に信頼されると言う事を経験して来なかった……それ故に他人への興味も無く、平気で蹴落とす事も出来た。



だがアルラやオーフェン達と共に過ごし、互いに信頼し合える関係になった今……彼らを失うのは確かに怖かった。



「隼人さんは私が護ります、だから死の事なんて考えないで下さい」



ふとアルラの声が横で聞こえる、いつの間に甲板へ出ていたのか、隣には音もなくアルラが立っていた。



「そうっすよ、隼人さんは私達が護るっすから!」



いつから話を聞いていたのか、船室からユーリも現れる、仲間……その存在の大きさを再度強く認識した。



「わ、私も助けて頂いた恩がありますから……」



ユリーシャの声……甲板に皆んな集まっている様だった。



「仲間……か」



不思議と恐怖が小さくなっていた。



この仲間達を失いたく無い……その思いの方が圧倒的に強くなっていた。



今思えばリカを止める時、恐怖よりも助けたいと言う気持ちが自然と勝っていた……完全に恐怖に支配され、忘れて居た。



「本当に良い仲間を持ったよ……んじゃ、リカを絶対に助けるぞ!」



気合を入れ直す様に中心で大きな声を出す隼人、すると一人の返事が誰よりも先に聞こえた。



「がんばろ〜」



聞き覚えのない声、その声に辺りは静まり返った。



「誰だ!」



アルラは咄嗟に刀を抜こうとする、だが刀の肢を一人の少女が抑えて居た。



「まぁまぁ落ち着きましょうよー」



赤髪の眠そうな表情をした気怠げな少女、太ももにつけられた無数のナイフ、腰に二本の剣、そして背中に長刀……明らかに敵だった。



「シャルティンの差し金か?」



「シャルティン?誰ですかそれー」



そう言い首を傾げる少女、とぼけている様にも見えるが判断し難かった。



視界から外れているユリーシャが魔法を発動させようとゆっくり腕を上げる、だがその行動に少女は目線をアルラから動かさずに刀を向けた。



「攻撃はしない方が身の為ですよー」



そう言い牽制する、目的が分からなかった。



「どうやって船に?そもそも何者なんだ?」



「ひー、質問が多いですねー……取り敢えず名前だけでも、私はアルテナ・ユーセンシュタイン、アルちゃんって呼んでねー」



そう言い刀を仕舞うアルテナ、敵意は見られない……がこの世界ではこう言うタイプが1番危険、油断は出来なかったを



「それでアルテナ、お前の目的は何だ?」



「アルちゃんって呼んでって言ったのに、まぁいいや、私はリカちーからはやっち達の協力をしてって頼まれたんだー」



リカちー……恐らくリカの事だった。



だがその言葉は容易に信じ難かった。



「リカからって、あいつが出発してまだ5時間弱……あまりにも早すぎないか?」



「んー?そうでもないよ、リカちーの氷魔法使えば2時間も海渡るのに掛からないし、それに何となくリカちーが来る気がして私海岸で待ってたんだー」



そう言い笑顔を見せるアルテナ、正直怪しい所だらけだった。



何故リカが来ると分かったのか、それに彼女とどんな関係なのか……リカは他者との関係は無いと言って居た筈なのだが。



「取り敢えず……リカとはどんな関係なんだ?」



「リカちーとは2年前に出会ったんだー、呪いを受けて荒れてたリカちーを殺してって依頼があって、でも殺すのは嫌だなーって思ったからお友達になったんだ」



小学生以下の語彙力……だが話を聞く限り彼女は殺しの依頼を受ける様な職業の様だった。



どう言う経緯で友達になったのかは分からないがその言葉が本当なのであれば大きな戦力だった。



だが……敵だった場合、アルラ達に危険が及ぶ……それだけは避けたかった。



「アルテナ、敵じゃ無いと言う証拠を示してくれ……悪いが今の俺には簡単に人を信じれる自信がない」



「んー、困ったなー」



そう言い顎に手を当てる、アルラにアイコンタクトで敵意を見せた瞬間攻撃する様伝える、そして剣に手を当てた。



「そうだ!これでどう?」



そう言いいきなり服を脱ぎ捨て下着姿になるアルテナ、その行為に思わず目を背けて仕舞った。



「何やってんだよ!」



「何って、背中見てよー」



そう言い背を見せるアルテナ、そこには痛々しい大きな切り傷が付いていた。



「この傷は……?」



「リカちーに殺され掛けた時のやつ、こんな事されてるのにリカちーの仲間を攻撃しようなんて思わないよ、だから私はリカちーのペットみたいな物かなー」



そう言い恥ずかしそうに頬を掻くアルテナ、何故下まで脱いだのかは不明だが今のところ敵では無さそうだった。



だが……念には念を。



「アルラ、悪いがアルテナの身体に付けられた武器を回収してもらって良いか?」



「えー、武器取っちゃうのー?」



「大人しくして」



隼人の言葉に頷いたアルラがアルテナから武器を回収して行く、下着の中も確認しようとするのを見て隼人は目線を逸らした。



「オーフェン、貴方も見ないで」



「ちっ、少しくらい良いじゃねーかよ」



アルラに注意されたオーフェンが視線を逸らす、そして回収が終わるとアルテナは服を着た。



「これで信じてくれたー?」



「まぁ……一先ずはな」



その言葉にアルテナは良かったとだけ言った。



「それじゃあ悪いがユリーシャとアルラが付いてくれるか?」



「わ、私ですか?」



「ユリーシャなら拘束魔法とか使えるだろ?」



その言葉に頷く、何故か嬉しそうな表情をして居た。



「分かりました、任された以上頑張ります」



そう言い張り切って船室へと戻っていくユリーシャ達、突然の出現に一時期は焦ったが敵では無く安心した。



だがまだ油断は出来ない……彼女が侵入出来たと言うことは他に敵が入って来る可能性もあると言う事だった。



より一層警戒を強める……ふとユーリの方に視線を向けた。



「晴れたっすねー」



甲板で日向ぼっこをして居た。



「……オーフェン、俺たちでやるか」



「だな」



呑気なユーリをよそにオーフェンと隼人は甲板の警戒を強めた。

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