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第166話 一年半前

書いてたら殆どデータが消えたので萎えぽよです

時は巻き戻り一年半前、隼人はまだアルセリスとして冥王の前に立っていた。



息をするのも忘れるくらいに張り詰めた空気と威圧感の中、毅然とした態度を崩さずに冥王を睨み付ける、アルラもシャリエルも死なせはしない。



「俺の力で勘弁してくれないか」



アルセリスは剣を下ろす、この力は……特別な力、寿命を取り返すには十分な代償の筈だった。



『成程面白い力だ……だが足りないな』



「足り……ない?」



冥王の言葉にアルセリスは困惑した、これ程の力を持ってしても及ばないとなれば後は自分の寿命を差し出すしか手は無かった。



「それなら……」



自身の寿命を、そう言おうとした時、冥王は予想外の言葉を発した。



『力が代償だとお釣りが来る、それも莫大な……私も冥府の神、対等な交換がしたい、何か望みは無いのか?』



望み……パッと出て来たのはアーネスト、ランスロットの蘇生だった。



「アーネストとランスロットを生き返らせる事は出来ないのか?」



『それは無理だ、蘇生自体は私にとって余裕だが交換の代償となる力だけでは少し足りない、ランスロットは実力は勿論、彼を信仰する人が居る、アーネストも同様に、魂のレベルが高い故に対価が足りない』



丁寧に説明をする冥王、蘇生が無理となれば他に望みなんて無かった。



『望みは無いか?』



冥王の言葉に頷こうとする、だがその時、不意にシャリエルの姿が視界に入った。



俺は力を失う……それ自体は別にどうでも良い……いや、どうでも良くは無いのだが彼女、シャリエルの命を救えるのなら安いものだ。



だが……これから先、ウルスと戦い、やがてはシャルティンとも……オーフェンやアルラ達は強い、だがシャリエルはまだ未熟だ。



20歳弱とまだまだ若い……まだ成長途中で実力も未発達、頭脳こそずば抜けているがこの先、頭脳だけではどうにもならない地獄が待っている……彼女はそうと知ってもウルスを倒す旅に着いてくると言うはずだ……だが、俺はもう守れない。



「望みが決まったよ」



『何だ?』



「シャリエルや……俺と関わった人の記憶を消してくれ」



『お前の仲間は消さなくて良いんだな』



「あぁ、グレーウルフとその他だけで良い」



その言葉に冥王は骸の姿で頷くと姿を消そうとする、だがまだ話しは終わっていなかった。



「待て、あと一つ……俺と契約してくれ」



その言葉に骸姿で表情こそ分からないものの、確かに驚いている様子だった。



そして面白そうに冥王は笑った。



『本当に……構わないのだな?』



「あぁ、頼む……」



少し驚く冥王に隼人は頷くとゆっくりと目を閉じた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



首元に残る鈍い痛み、まだハッキリとしない意識の中で目を覚ます、霞む視界の中、アルセリス様の姿を探すが何処にも見当たらなかった。



悪いなアルラ……耳に残っているアルセリス様の声、全てを思い出した。



冥王との取引で私は命を差し出そうとした、だがそれをアルセリス様に止められた……ならば止めたアルセリス様は何処に居るのか、少なくとも瓦礫だらけの古城にはもう居なかった。



「アルセリス様は!?」



古城から見える海を眺めていたオーフェンに詰め寄る、すると魔紙を1枚手渡した。



「また起こしに来てくれだとさ」



その言葉にアルラは直ぐに理解した。



起こしに来てくれ……恐らくその言葉から察するにアルセリス様は大樹の幹の下に居る。



「ありがとうございます」



オーフェンに礼を言うとすぐに魔紙を破り捨てる、そして大樹の見える丘に転移するとアルラは大樹の元へと全速力で駆けて行った。



あのお方はシャリエルを見捨てる様な方ではない……とは言え対価を払わずに寿命を取り返せる訳も無い……何を失ったのか、様々な事が頭の中を巡っていた。



そして幹の下に着くとそれは一目で分かった。



「アルセリス……様」



鎧を脱ぎ捨て、大樹の幹を手で触れるアルセリスの姿がそこにはあった。



以前の様な圧倒的な威圧感は無い……何処からどう見てもただの青年だった。



「アルラか、お前なら一番に来てくれると思ったよ」



そう言い笑みを浮かべる、だがその笑みは凄く苦しそうだった。



「アルセリス様……お力が」



その言葉に俯く。



「あぁ、シャリエルの寿命と代償にな……今の俺はお前の主でもなんでもない、ただの隼人、1人の青年だ」



アルラの顔を見れない、彼女は一番アルセリスを慕い、忠実で居てくれた……力を捨てると言うことは彼女を裏切る事になる。



「そうですか……アルセリス様では無くなってしまわれたのですね」



落胆の声、だが次の瞬間、刀を抜く音が聞こえた。



「ですが……力は無くとも、魂は同じの筈です、私が知るアルセリス様が居なくなったのであれば貴方が、隼人が私の新しい主と言うことを力で証明して下さい!」



アルセリスでは無いと分かっても尚……俺と言う人物を信じてくれている、本当に良い仲間に恵まれた。



「あぁ……隼人として、本気で行く」



そう言い隼人は剣を抜いた。

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