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第148話 最期の戦い

二度目のカルザナルド戦、油断が無い今は負ける気もしないのだが……妙な胸騒ぎと言うのだろうか、ざわざわとした感覚が離れなかった。



カルザナルドは不敵な笑みを浮かべる、一度は負けた相手に何故そこまで余裕を見せれるのか……不死だから?



いや、それならば担いでいる時にいつでも殺すチャンスはあった筈、あの時の彼女は確かに瀕死だった……多少治癒魔法は掛けたがそれでもほっとけば死ぬレベルに危険な状態、不死なんて信じられなかった。



万が一不死がハッタリだとするなら……



「カルザナルド様、今のうちにこれを……」



「気は進まないが、勝つ為なら仕方ないか……」



2人の話し声に顔を上げる、ラクサールから手渡されたのか、彼女の手には注射器が握られていた。



中には何らかの液体……嫌な予感がした。



「打たせる訳には……!」



剣を二本召喚し、片方を投げると一気に距離を詰める、だがラクサールが行く手を阻む様に立ち塞がった。



「時間は私が稼がせてもらう」



杖を片手にスケルトンを詠唱無しで召喚して行く、だがそのどれもが雑魚、何の足止めにもならなかった。



剣一振りでスケルトン達は散っていく、だが一匹だけ吹き飛ばずに耐えていた。



ラクサールが後方に居るのを確認すると吹き飛ばなかったスケルトンを始末しようとゆっくり剣を振り上げる、だが予想外のスピードでスケルトンは懐に潜り込んできた。



「油断したなアルセリス!」



ラクサールの声……見た目だけでは全く判断が出来ないもんだ。



だが接近してきてくれたのは寧ろ好都合だった。



彼の右手にはナイフ、だが魔力は感じない。



ナイフを手のひらで貫通させ受け止めるとラクサールの手を掴む、そして力任せに持ち上げると地面へ叩きつけた。



バキッと言う鈍い音と共に彼の頭蓋骨にヒビが入る、恐らく立ち上がっては来れないはずだ。



彼に阻まれ落ちた剣を拾い上げるとカルザナルドの方へ向かおうとする、だがアルセリスの足を彼の手が掴んでいた。



「行かせ……ませんよ」



振り払おうとしても手は離れない、命を賭してまで投与させたい薬品……少し危機感を抱かなければならない様だった。



一瞬ラクサールからカルザナルドに視線を移す、薬の副作用なのか地面に蹲っていた。



「あの薬は飲んでから1分、隙ができる……それをなんとしても私が稼がなければならないのですよ」



「それは命令なのか?」



「それを答える義務は無い」



彼の言葉に納得する、そして剣を振りかざすと彼の手……と言っても骨を両断した。



ラクサールの手から解放されカルザナルドへ攻撃を仕掛けようとするが再び足を引かれる。



「行かせないと言いましたよね」



ふと足元を見ると左手で足をつかんでいた。



呆れた、何故そこまでするのか、恐らく……と言うか確実にカルザナルドは俺を殺す事は出来ない、その証拠にアルラ達の魔力がすぐ近くまで来ている……恐らく彼もその事に気がついて居る筈だ。



「分かってますよ……私程度では勝てないって事くらい」



心を見透かされたかの様に思っていたまんまの事を言い出す、だが彼に構って居る暇は無かった。



「そうか、なら眠っててくれ」



彼を手を切断して壁目掛け蹴り飛ばすと剣を右手に持ち替えカルザナルドに視線を移す、どうやら手遅れの様だ。



「ラクサール、時間稼ぎ感謝するぞ」



首の骨を鳴らしながら彼女はそう言う、勿論ラクサールの返事はない。



「少しまずいか……?」



何が変わったのかさっぱり分からない、魔力もあまり変化していない様子……何の薬品を投与したのか皆目見当もつかない。



だが一つだけ……彼女の表情は自信と余裕に満ち溢れていた。



「それじゃあ……行かせて貰おうか」



カルザナルドはそう言うと満面の笑みで剣を握った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



嗚呼……貴女が無事で良かった。



これで私は安心して行ける。



霞む視界の中、ラクサールの視界には銀髪の少女だけが映っていた。



「ラクサール、時間稼ぎ感謝するぞ」



カルザナルドの声は耳に届かない、あの様子だと薬品は成功の様だった。



これであの子に傷は付かない……多少の痛みはあるかも知れないがあの子なら乗り越えられる筈だ。



あの子は……私の娘、ユリーシャは強い子だから。



だからどうか……アルセリス、貴方に一つだけ頼みたい。



私がして来た事の罪は向こうで償う、虫のいい話かも知れないが……どうか一つだけ。



と言っても声は出ず、伝える方法は無いが……私の娘を、ユリーシャを救ってくれ。



それが私の最期の願いだ。



薄れ行く意識の中、ラクサールは少女に小さく手を振った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ラクサールも死んだか……」



生き絶えたラクサールから視線を背け空を見上げる。



「お前は強いな、アルセリス」



突然の賞賛にアルセリスは少し戸惑っていた。



「私の仲間は皆死んでしまった、色々なツテを使って集めたのだが……やはり本当の六魔出ないと意味は無いな」



「本当の六魔?」



カルザナルドの言葉に疑念を抱く様子だった。



グレイアス、ラルドーシャ……彼達は純粋な六魔の生き残りだが他の4人は間に合わせ、言わば急増の六魔……この程度の世界、六魔が二人いれば充分だと思っていた。



だが……



目の前のこいつが現れた。



アルセリス……聞いたことも無い名の人間、化け物の様な強さの部下を引き連れて私の仲間を次々に殺して行った。



本人まで化け物の様な強さと来たものだから正直うんざりして居る。



「少し……時間が足りなかったかな」



「時間?何のことだ?」



独り言にアルセリスが反応する、だがカルザナルドは何も返さなかった。



本当に……うまく行かない。



だが、あの方の為にも……戦いを放棄する事は許されない。



それじゃあ……正真正銘、最期の戦いと行こう。



「行かせて貰おうか」



カルザナルドはそう言うと満面の笑みで剣を握った。

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