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第141話 逃亡

息を呑む、感じた事のない空気感……今まで対峙した敵の中で一番の実力かも知れなかった。



いや……それは当たり前か、相手は暗黒神、仮にも神なのだから。



「様子を伺ってるのか?まぁ戦いに置いて出方を見るのは正しいが……だけど」



そう言いカルザナルドはその場から姿を消す、動き始めのモーションすら視認出来なかった。



だがこう言う場合は背後を取るのが定石……アルラは素早く背後を振り返るがそこにカルザナルドは居ない、すると足元の地面が急に消えた。



「なっ!?」



何も掴むものがない、勿論空も飛べない……このまま飲み込まれる、そう覚悟したが闇は腹部まで飲み込むと止まった。



「動けないだろ?」



闇は消え、アルラの体は地面にめり込んでいた。



隙間がない故に壊して出ようにも力が出ない、鬼神化……それもまた一つの手だが理性を飛ばさないと勝てる見込みは無い、理性を飛ばせば……



アルラはシャリエルの方を見る。



彼女の命は保証できなかった。



鬼神化で理性が飛べば私は眼に映るものを全て壊すモンスターになる……仲間だから壊さないなんて例外はない、アルセリス様にも襲い掛かる程なのだから。



「お前は中々珍しい種族だな、オーガ族の特徴を持ちながらも人間の身体をしている、私が統べる世界には人間は要らんがお前ならまだ許容範囲、仲間になるなら助けてやるぞ?」



「私が命惜しさに命乞いをするとでも?すると思ったなら大馬鹿ですね、私の主人はアルセリス様ただ一人、あのお方を裏切るくらいなら此処で死にますよ」



「ふむ……良い忠誠心なだけに勿体ないが……殺すしかないか」



そう言い剣を振り上げる、シャリエルには悪いが私はまだ死ぬ訳には行かない、鬼神化するしか無かった。



迫る剣を他所に目を閉じる。



集中……鬼神化直後がチャンスだった。



剣が目の前まで迫った瞬間、アルラの額から小さなツノが生える、そして一瞬にして地面を砕きアルラはその場から姿を消した。



「驚いた、まだ秘策を残していたか」



カルザナルドは口ではそう言うものの、大した驚きを見せて居なかった、恐らく知っていたのだろう。



だが……



「余裕を見せられるのも今のうちよ」



「いつの間に……」



急に懐へと現れたアルラにカルザナルドは驚きの表情を見せる、さっき言った鬼神化直後がチャンス、これがそのチャンスだった。



拳を強く握りしめ勢い良くカルザナルドの顔面目掛けアッパーをかます、だが彼女は剣を持っていない左の手で攻撃を防いだ。



「少し危なかったよ」



そう言いカルザナルドは安堵の表情を浮かべる、だがアルラの攻撃で体が若干宙に浮いていた。



「まだ終わってないですよ」



地面から足が離れた瞬間アルラは鎧の隙間を持ち足を払うとカルザナルドを地面に叩きつける、そして刀を抜くと首元に当てた。



「流石に油断し過ぎたな」



先程とは立場が逆転した状況にカルザナルドは笑っていた。



笑う余裕があると言うことは何か案があると言う事……早急に決着を付ける必要があった。



「これで終わりです」



アルラは刀を引こうとする、だが次の瞬間、カルザナルドは地面に吸い込まれるように姿を消した。



「なっ!?」



辺りを見回すがカルザナルドの姿は無い、逃げられた様だった。



だが……今はその方が良かったのかも知れない、ピクリとも動かないシャリエルを見てアルラはため息を吐くと鬼神化を解いた。



「生きてます?」



「何とかね……」



指をピクピクと動かすシャリエル、どんな無茶をすれば此処までの傷を負うのか……世話の焼ける人だった。



「何処か安全な場所は……」



辺りを徘徊する屍人達、流石の私でもシャリエルを抱えたまま戦うのはきつかった。



「城が避難場所になってるからそこなら安全の筈よ」



「城……遠いですけど行くしか無さそうですね」



シャリエルの言葉に再度溜息を吐く、アルセリス様が気になるが……今は彼女を救う事が先決だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



城の大広間、右を見ても屍人、左を見ても屍人、後ろにはソファーに座ってくつろぐミリィ、そして目の前には杖を持ち如何にもネクロマンサーと言わんばかりの風貌をした男、何故ミリィが自分で戦わないのかは分からないが目の前にいるネクロマンサーが元凶なのは確かだった。



「戦う気は?」



「皆無」



「だよな」



立つそぶりも見せないミリィにオーフェンは呆れながらも笑みを浮かべる、ゆっくりと剣を構えると手招きをした。



「私とやろうと言うのですね、愚か……地獄を見せてあげますよ」



ネクロマンサーはそう言うと杖をつき辺りに幾つもの魔法陣を出現させる、魔法陣からは次々とアンデット達が現れていた。



「成る程、アンデットは骨が折れそうだ……」



大量のアンデットを前に苦笑いを浮かべる、シャリールから魔法の訓練を受けていて本当に良かった。



オーフェンは剣に光の属性を付与する、そして迫り来るアンデット達の群れに突っ込んで行った。



「いけー、ガンバー」



ミリィからやる気のない声援を受けながらアンデット達を薙ぎ払っていく、動きはトロイが数が多い……後ろの扉からは国民が避難している場所へと続く階段がある、絶対に通す訳には行かなかった。



だが幾ら殺そうとも魔法陣から出続ける故に数が減るどころか増え続ける一方、このままではまずかった。



「ミリィ、此処を引き受けるかネクロマンサーを倒すか、どちらが良い?」



「どっちも面倒なんだけど……」



この期に及んでまだその態度とは……



「つべこべ言わずネクロマンサーを倒して来い!不死身のお前なら出来る筈だ!」



そう言いミリィの首元を掴むと扉の向こう側へと投げ捨てる、恐らくネクロマンサーは上層階に居るはずだった。



「頼んだぞ、ミリィ」



その言葉を残しオーフェンは扉を閉める、取り残されたミリィはめんどくさそうに溜息を吐いた。



「この戦いが終わったらアイツが破産するまで食ってやるからな」



腹の音を鳴らしながらミリィはそう言い捨てると階段を登っていった。

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