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第135話 立ちはだかるダイヤモンド

数時間掛け森を抜けるとすっかりと日は落ち、月が辺りをぼんやりとした光で照らす、草原の向こう側には街の灯り……だが一人の冒険者が街へ行くのを拒むように目の前に立っていた。



「また来たか……アーネスト」



「死なない限りは何度でもね」



剣を握りしめるアーネスト、その言葉に男は呆れた表情を浮かべた。



「そうか……残念だ」



その言葉と共に男は剣を抜く、首元にはダイヤモンド級を示すタグがぶら下がる……彼がグラードに雇われた傭兵のようだった。



互いに剣を構え緊迫した空気が辺りを漂う、対峙せずともダイヤモンド級の風格は見て分かった。



「アーネスト」



シャリエルは呼びかけて見るが彼女は何の反応も見せない、既に戦闘は始まっている様だった。



「ったく……」



作戦もなにも決めていないと言うのに……ダイヤモンドを倒すにはまず相手を知らなければならない、魔法主体なのか剣術や体術、もしくは筋力に任せたスタイルなのか、それを知っているのはアーネストのみ……だが彼女は憎しみで冷静では無い、戦いの中で知るしか方法は無さそうだった。



「成る程……お友達が出来たと言う訳か」



シャリエルの存在に今更気がつく男、依然として余裕の表情……問題視はされていないようだった。



手の甲に鉄が付いた手袋をはめると拳を構える、難しい戦いになりそうだった。



「さてと……どちらから先に死にたい?」



「死ぬのは……お前だ!!」



見え見えの挑発に乗るアーネスト、だが無策に突っ込む訳でも無かった。



剣から手の平サイズの暗黒魔法を男に向けて飛ばしながら距離を詰めて行く、だが男はそれを最低限の動きでかわし続けていた。



一定の距離まで近づくとアーネストは少し飛び、勢い良く地面目掛け剣を振り下ろす、剣に纏われた闇は地面を伝い津波のように男へ近づくにつれて大きくなって行った。



「だから……やり方が同じだって」



男は軽く暗黒魔法を真っ二つに両断する。



だが次の瞬間、男の視界にはアーネストの姿は無かった。



「何処に……消えた」



辺りを見回すがアーネストの姿は無い、気配も感じなかった。



その時男は地面に散らばる何故か消えていない闇魔法を見つけた。



何故魔法が消えず残っているのか……恐らく最初にアーネストが放っていた暗黒魔法の残りカス……だがそれらがくっ付き人一人は飲み込める程度の大きさになっていた。



人一人が飲み込める……その時男は何かに気が付いた。



だが少し気がつくのが遅かった。



「お前は私を舐めすぎだ……フィル」



闇の中から姿を現したアーネスト、その手には剣……避けるのは不可能だった。



次の瞬間、闇が纏われた剣がフィルと呼ばれた男の体を斜めに切り裂く、闇はまるで炎の様に熱を帯びていた。



「成る程……確かに舐め過ぎていたな」



アーネストに付けられた傷を手でなぞり確認するフィル、次の瞬間には傷が綺麗さっぱり消えていた。



「それじゃあお遊びは終わりだ、本気で行くぞ」



フィルの雰囲気が変わった。



「……何度でも攻撃するだけ!」



一瞬で傷が癒えた事にアーネストは少し動揺するもすぐ様剣を構える、だが1秒としないうちにフィルはアーネストの背後に立っていた。



「工夫と運で登り詰められるのもプラチナまでだ……ダイヤモンドの力量ってやつを見せてるよ」



首裏を剣の柄で殴りアーネストを気絶させるとフィルはシャリエルの方に視線を向ける、だが直ぐに逸らすとその場に座り込んだ。



「君はアーネストの友達か?」



「どうかしら、まだ友達と呼ぶには付き合いが浅すぎるし」



雰囲気が変わるフィル、戦意は全く無かった。



「そうか……やっぱり君も魔剣が気掛かりか?」



「まぁ……そうね」



彼の言葉に頷くシャリエル、するとフィルは少し難しい表情を浮かべた。



その表情の意味は分からない、だが魔剣について何か知っているのは確かだった。



「少しだけ……話そうか」



そう言い手招きをする、だがおびき寄せる作戦とも取れた。



警戒心を解かないシャリエルに敵意が無い事を証明するかの様に剣を手の届かない範囲へと投げる。



「これで良いか?」



そう言い両手を広げるフィル、何が目的なのか分からない……だがシャリエルは頷くと少しだけ近づいた。



「まぁ……そこで良いか、それじゃあ少し、話をしようか……」



警戒心を解かないシャリエルに呆れながらもフィルは口を開いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「痛っつ……」



フィルに殴られた首裏を押さえながらアーネストが目を覚ます、記憶が飛び飛びだがフィルに気絶させられたという事だけは覚えていた。



「そう言えば剣は……」



まだグラつく頭の中魔剣の事を真っ先に思い出す、剣はしっかりと腰元に掛かっていた。



奪われていない事に安堵の溜息を吐く、その時不意にシャリエルが視界に入った。



「目が覚めたのね」



「シャリエル……良かった無事で」



片腕を押さえてはいるものの大した怪我は負っていないシャリエルに安心する、だが彼女はどこか不機嫌だった。



「グラード邸で何か起こったみたいだから攻めるなら今よ」



それだけを言い街に身体を向けるシャリエル、やはり様子がおかしかった。



だがアーネストはその事を口に出すことも無く剣を握り締める。



「行こう、シャリエル」



アーネストの言葉に返事はせずとも頷く、それを確認するとアーネストは先に街へと向かった。



「彼の話しは……本当見たいね」



聞こえない程度に呟くシャリエル、その顔は何処か寂しそうだった。

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