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第122話 全てを知る者

榊隼人……その言葉を聞きアルセリスは固まって居た。



何故彼が俺の……この世界に来る前の名を知って居るのか、この世界に来てその名は一度も出した覚えは無かった。



「あんた……何者だ」



危険な匂いがプンプンした。



「私ですか、私はシャルティン……ご存知ですよね?」



シャルティン……何度も聞いた名だった。



レクラの正体を教え、シャリールに創造のペンを渡した男……白騎士と言う名は本当のようだった。



「シャルティン……一つ聞きたい、アンタはプレイヤーなのか?」



「プレイヤー、その質問は正しく無いですね……この場合、異世界人か転移者かどうかを聞くべきなのでは?」



「転移者……?」



シャルティンの言葉はこの世界がゲームでは無いと決定づける言葉だった。



だがならばこの世界は何なのか、何故俺は転移したのか……謎は深まる、だが彼は何かを知って居る感じだった。



「訂正する、シャルティン、アンタは転移者なのか?」



訂正後の質問にシャルティンは腕を組んだ。



「転移者では無いですね、ですが私は貴方と同じ……向こう側を知る者ですよ」



「向こう側を知る者……?」



「そう、君の居た世界を私は知って居る……だけどそれ以上は言えない、知りたければ無理やり吐かせる事だね」



そう言いシャルティンは剣を構える、その瞬間背筋も凍るような威圧感を感じた。



だが……彼は恐らく何故俺がこの世界に来たのか、その理由を知って居る、勝てるかは分からない……だが真実を知る事と敗北を天秤に掛けどちらに傾くか、それは一目瞭然だった。



「やるしか……無いか」



剣を異空間から取り出すとアルセリスは剣で地面を二回叩く、すると雲一つないオーリエス帝国を黒い雷雲が多い始めた。



「暴雷の剣、良いセンスですね」



シャルティンの声色は余裕そのものだった。



暴雷の剣、国一つを雷雲で覆えるほどの雷を生み出すことの出来る武器……ワールドアイテムとまで行かなくともそこそこレアリティの高い珍しい武器なのだが……シャルティンは驚く様子すら見せなかった。



「シャリール、リカとオーフェンを結界で守ってくれ……頼むぞ」



地面にへたり込み完全に空気と化して居たシャリールにそれだけを告げると剣を天高く掲げる、集まった雷雲から一本の雷が伸びると剣に収束し、剣は雷を纏った。



やがて剣を纏った雷はアルセリスの体をも纏って行く、少し痺れるが身体能力はいつもの数倍……準備は万端だった。



「……行くか」



シャリールがオーフェン達を結界で保護したのを確認すると剣を構えた。



「何処からでも」



シャルティンは両手を広げ余裕の態度、隙だらけだった。



アルセリスは地を蹴りシャルティンの懐へ一瞬にして移動すると剣を振りかざす、だが剣は空を斬り行き場の無い雷撃が地を焦がす、すると後ろから声が聞こえた。



「無駄が多いですね、スピードは申し分無いですがまず一つ、取り敢えず突っ込むと言う戦法は賢いとは言えない」



指を一本立てながらアルセリスの膝裏を蹴り膝を付かせるとそのまま後ろに回り込み剣を喉元に当てる、ほんの一瞬の出来事だった。



「一つ教えておきましょう、力で全て解決出来る訳では無いですよ?貴方には戦闘技術が無い、と言っても数ヶ月前まで元社畜のニート……仕方ないですがね」



そう言い背中を蹴り飛ばすとアルセリスは地面に倒れこむ、根本から強さが違うと言う訳だった。



俺の強さはパワーや武器、魔法に頼ったもの、だがシャルティンはそんな物を使わずとも技術で俺を圧倒出来る……それに加えて彼は俺以上の力を持って居るはず……格が違った。



「まぁ今日の用事はアルセリス君、君じゃ無い……もう用は済んだしね」



そう言いいつの間に奪ったのか、シャルティンの手には創造のペンが握れて居た。



「改善点を挙げるとするなら……そうだね、全て基礎から学び直せばウルスになら勝てるかもね、それじゃあ……新大陸で会おう、アルセリス君」



両手を広げ光のように消えて行くシャルティン、全く歯が立たなかった。



だが……何故俺がこの世界に来たのか、その真実を知る人物に出会えた……これは大きな収穫だった。



だが勝ち筋が見えなかった。



「アルセリス様、ご無事ですか?」



倒れこみ天を仰ぐアルセリスの元へ心配そうに駆け寄るリカ、また忘れそうになって居た。



俺には仲間が居る……足りない物があれば仲間と補えば良かった。



「リカ……帰ったら特訓だ」



「特訓……ですか?」



「あぁ……オーフェン、アンタも頼むぞ、俺は剣技も体術もズブの素人だからな」



「任せとけ」



差し伸べられたオーフェンの手を掴む、強過ぎる力だと思っていたが……それは間違いのようだった。



この力は仲間無しには成り立たない、仲間が居てこその……アルセリスだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



今にも崩れ掛けそうな神殿、昔は綺麗だったのだろうが何の手入れもされて居ない神殿はツタが絡まりまくり、地面の亀裂からは雑草が生えて居た。



「如何にも怪しいわねこの神殿」



腕を組み辺りを見回す、奥の壁だけ微かだが隙間があるのが見えた。



「何かしら……」



軽く押してみるがビクともしない、だが後ろに空間があるのを感じた。



「少し……手荒になるけど」



魔紙を破り捨て手に雷を纏うと腰を落とし足を踏み込む、そして壁を破壊する、予想通り壁の向こう側には地下へと続く階段が存在した。



「このシャリエル様の目には狂い無いわね」



1人でドヤ顔をする、だが次の瞬間けたたましい警報音が辺りに鳴り響いた。



「な、なに?」



辺りを見回す、すると神殿の外へ出る全ての出口が黒い扉の様な物で閉ざされて行った。



軽率だった、100万レクスの任務で行う行動ではなかった……だがどうせは数ヶ月後に死ぬ命、引き返す道が無い方が良かった。



地下へと続く道から無数の骨音が聞こえる……恐らくスカルナイトだろう。



「ほんと……ただの骨にやられる程私は弱く無いっての」



雷の纏われた拳を合わせバチっと言う音を立てると拳を構える、そして無数に迫り来る骨達目掛け突っ込んで行った。

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