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第118話 魔力のコア

お金の単位

1レクス 10円

日本円から10倍

「しかし衛兵の仕事って怠いなー」



少し肌寒い夜風に当てられながら1人の衛兵が欠伸をする、セルナルド王国から西に100キロ、辺境の地にある故にルナール城の警備は手薄だった。



誰もこんな城に来ない、そもそもルナール様が居る時点で来ても殺されるだけ……そう考えると衛兵も楽な仕事だった。



今日もいつも通りに終わる……そう思って居た。



だが不意に顔を上げると闇の中に微かだが、黒いローブを羽織った何者かが居た。



背筋が凍る、ポケットから取り出した懐中時計は24時丁度を示す……来客の予定は無かった。



「何者だ」



剣を構え問いかける、だが謎の人物は何も言わなかった。



ただ2人の間に静寂の時が過ぎる、やがて月に掛かった雲が晴れると不敵な笑みを浮かべる少女の姿が浮かび上がった。



その笑みに男は後退りする、すると背中に何か……人の様な物が当たる感触があった。



「な、何者だ!?」



咄嗟に後ろを振り向こうとする、だが男は最後に一言。



『貴方に恨みは無い』



その言葉だけを耳にし、生き絶えた。



「なぁ、こんな回りくどい事しなくても良いんじゃねーのか?」



男の頭から刀を抜くアルラに疑問をぶつける、見た所男は大した強さで無かった、寧ろ応援を呼ばれる可能性もあった、アルラの考えがイマイチ分からなかった。



「貴女がちゃんと協力するかどうか試したんですよ、分かったら早く済ませましょう」



「お、おう……」



気が付けば話し方が敬語に戻って居る、多少は信じてもらえた……と言う事なのだろうか。



先を歩くアルラに付いて行く、今思えば随分と丸い性格になったものだった。



彼女と会ったのは任務の時だけだったが造られた時に彼女の性格を記憶に刷り込まれて居る、それ故に以前の人間を毛嫌いし、尖って居た時のアルラが私にとっては普通だった。



だが今のアルラは人間を憎んで居るようには見えない、相変わらず私の事は嫌いのようだが人間に対しての態度は明らかに変わって居た。



やはりそれもアルセリス、あの男の影響なのだろうか。



鎧のお陰で強そうに見えるが中身は大した事の無い男、鍛錬の後も見えない……何故あんな男にあれ程の強さがあるのか、謎だった。



「んまぁ、不思議な世の中だしな」



ぼそっと呟きふと顔を上げるとアルラが壁に向かい拳を振り上げて居た。



「お、おい!お前まさか……」



静寂に包まれた森の中に佇む古城の壁を今にもぶち破り兼ねないアルラを止めようとする、隠密行動で行くと言っておきながら流石に矛盾し過ぎの行動だった。



だが当然ミリィの制止を聞くはずも無く、辺りには壁を吹き飛ばす轟音が響き渡った。



「ば、ばかっ!隠密行動はどうしたんだよ!?」



もう彼女の事が理解出来なかった。



だがアルラは焦る事も無く冷静に中を指差した。



「よく見て、城内に見張りなんて居ない」



その言葉にミリィは顔を上げる、たしかに彼女の言う通り、城内には人の影が無かった。



だが城内は清潔に保たれている……不自然だった。



不気味な絵画や骨董品が飾られた城内をアルラと2人、無警戒に眺めながら歩く、すると突然アルラが歩みを止めた。



「だれか……来る」



その言葉の直後、カツ、カツ、と足音の様な物が聞こえて来た。



「あらら、派手にやってくれましたね……全く、直すのもタダじゃ無いんですよ?」



階段から口に付いた何かを拭き取り降りて来る赤いスーツを着た男、長く伸びた金髪が歩く度にゆらゆらと綺麗に揺れて居た。



「貴方がルナール……の様ですね」



「ええ如何にも、私がこの城の主人、ルナール・マルレトロイ四世です」



アルラの言葉に頷くルナール、盗賊団と言う程だからてっきり屈強でガサツな男と思って居たが出て来た彼は全く正反対の男だった。



「ルナールでも何でも良いけどさ、ちゃっちゃと魔力のコア奪っちまおうぜ」



「ほう、君達の目的は私が所有する魔力のコア……と言う訳ですか」



「まぁ……そうですね」



勝手に目的を話したミリィを睨みつつもルナールの言葉に頷く、こう言う場合、目的は話さない方が良かったみたいだった。



「まぁ……交渉次第ですね」



「交渉次第?どう言う事だよ」



ルナールの発言に首を傾げるミリィ、すると彼は指を二本立てた。



「交渉は交渉ですよ、私は魔力のコアを所持している、そして貴女達はそれが欲しい……そうなれば残された道は二つ、略奪か、交渉か……ですが後者はおススメしませんよ」



「オススメしないってどう言う事だよ」



「こういう事です」



そう言いルナールはスーツのボタンを外しシャツをめくり上げる、すると胸部に赤々とした光を放つ玉が埋め込まれて居た。



だが察しの悪いミリィは再び首を傾げる、ふとアルラの方を見ると少し苦い表情をして居た。



「そちらのお嬢さんは気付いた様ですね、そうです……魔力のコアですよ」



「魔力の……コア?」



「そうです、魔力のコアは船やその他の乗り物の動力源と思われている方が多いですが少し工夫をすればこうやって体にくっ付け、魔力として宿す事が出来るんですよ」



そう言い炎を手から出して見せる、だが魔力のコアをルナールがくっ付けて居たからと言ってアルラが苦い表情をする理由が分からなかった。



「その表情は何故、私を彼女が脅威に感じるのかって表情ですね」



「なんで分かんだよ気持ち悪いな」



心を見透かされたかの様な発言に思わず暴言を吐く、だがその言葉通りだった。



「基本、この世界の大気中には魔力が溢れています、それ故に魔法を使える人は時間が経てば魔力が回復する……呼吸と言う吸収手段を得て」



「魔力が溢れてんなら誰でも魔法が使えるんじゃねーのか?」



ミリィの問い掛けにルナールは呆れた表情をした。



「貴女はその程度の教養も受けてないのですか……人ならず、生きとして生きる者全てにキャパシティと言うのがあります、要するに器、魔力を水と想像して下さい、そして人間は器、器が大きければ大きい程入る魔力の量が多くなります、逆に小さければ小さい程入る魔力は少ない……そもそも器が存在しない人も居ます、まぁある程度訓練で魔力量を増やせるようですがこの魔力のコアはそれを強制的に、莫大に引き上げるアイテムなんですよ」



長々とした説明を終えるルナール、するとミリィは欠伸をした後、何か納得したかの様にポンっと手を叩いた。



「成る程、つまり今のアンタは強いって事か」



「なっ、貴女……とことん馬鹿ですよね」



ミリィの言動にアルラが呆れる、だがミリィはその意味が分からず首を傾げた。



「なんでだよ、そう言う事だろ」



「ふふっ、面白い人だ……まぁ平たく言えばそう言う事ですよ……ただ一つ、交渉と言う道を選べば私と戦わず、無傷で魔力のコアを手に入れられますよ」



「誰が……んグッ!」



何かを口走る前にアルラはミリィの口を塞いだ。



「取り敢えず……内容を聞かせてもらえる?」



「賢明な判断です、そうですね……コアを一つ、5億レクスでどうかな?」



指を5本広げ不敵な笑みを浮かべ伝えるルナール、馬鹿馬鹿しかった。



「ふふっ……貴方は国でも買うつもりですか?ミリィ、やりますよ」



アルラが珍しく笑った。



「お、おう」



少し戸惑いつつもミリィは頷く、するとルナールは手を頭に当てた。



「はぁ……嘆かわしい、貴女は賢明な判断が出来る人だと思いましたが、とんだ見当違いの様ですね、それでは交渉……決裂という事で」



ルナールはそう言い捨てると両の手を広げ、再び不敵な笑みを浮かべた。

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