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第104話 捜索

兵士や騎士が街を彷徨きざわついた様子のフェリスの街をアルセリスは威圧感のある鎧姿では無く変身魔法を使い普通の旅人に化けて歩く、アルセリスの姿は聞き込みをするにはあまりにも威圧的で話しにならなかった。



ふらっと青果店によりリンゴを手にすると徐ろに辺りを見回しアルセリスは尋ねた。



「何か街が騒がしいが何かあったのか?」



「んぁ?旅人か、ここ2.3日で魔喰いが27人も人を殺してな、それで兵士達が騒ついてんだよ」



「27人もか、予想以上だな」



アルセリスの言葉に露店商の男は首を傾げる、予想以上の凶悪っぷりだった。



3日で27人も殺す人物、シャリールの生け贄として殺しても何の問題も無さそうだった。



だが不可解な点はいくつかあった。



「魔喰いはそんなに人を殺して何がしたいんだ?」



「さーな……ただ一つ、魔喰いと言う名を聞く様になって80年ほどか、街の治安が圧倒的に良くなったのは確実らしい」



「街の治安が良くなった?」



人を殺して治安が良くなる、矛盾して居た。



「魔喰いは絶対に犯罪者以外殺さないんだよ、俺たちからしたら街の英雄、だが皇帝側からすれば威厳が保てない故に邪魔な存在……だから兵士達が騒ついてんだよ」



そう言い他の来客に接客をする露店商、アルセリスはリンゴの代金を支払い店を立ち去る、犯罪者のみを殺す……これまた調子が狂う事態だった。



魔喰いを殺せば街の治安が悪化する……とは言え殺さなければシャリールの復活は先延ばしにされる、判断し難かった。



アテもなく大通りを歩く、その時背後から此方へと近づいて来る気配を感じた。



殺意は無い……だが確実に此方へと近付いて来ていた。



少し人の流れから外れ裏路地に入ってすぐの所でアルセリスは立ち止まった。



「俺に何か用でも?」



「驚いた、気配は消していたつもりなのだがな」



振り向くとそこには紅の鎧を身に纏った珍しい姿の騎士が立っていた。



気配を消していたと言うが正直バレバレ、そこらに居る中級冒険者でも気づくレベルだった。



「それで、何者で何の用だ?」



「おっと、失礼……俺は皇帝直属の騎士団副団長のルラーレだ、先程魔喰いの情報を探って居るのを聞いてな、少し話を……と思ってな」



皇帝直属騎士団……言わゆるオーリエス帝国で言うアルスセンテの立ち位置だろう、だが副団長自ら話しを聞きに来るとは少し予想外だった。



「見た所旅人の様だが魔喰いを何故探すんだ?」



「何故……単純に興味があるからだな」



「興味……ねぇ」



アルセリスの曖昧な答えに少し疑いを見せるルラーレ、恐らく魔喰いの仲間と思って居るのだろう。



話す前は感じなかったが少しずつ殺気を感じる、先程の気配ダダ漏れの件は恐らくブラフだろう。



自分を弱く見せる為の。



「一つ聞きたいのだが、あんたは何者なんだ?」



「何者……?見ての通り旅人だが?」



ルラーレの問いに首を傾げ答えるが言葉を言い終えるよりも早く彼は剣を抜き、切っ先をアルセリスに向けていた。



「これは……何のつもりだ?」



「生憎……その変身魔法、俺の目は騙せない、本来の姿は見えないがこの魔眼を通して見ればドス黒い靄がお前を覆ってるのが見える」



魔眼……また新しい項目が出て来た。



魔剣や魔刀などは存在したが魔眼なるアイテムはゲーム時代存在しなかった……変身魔法を見破られるとなれば厄介、だがもう隠していても意味は無さそうだった。



「そうか……バレたか」



身体から煙を上げて変身を解く、煙の中から出て来た姿にルラーレは明らかに圧倒されて居た。



息も詰まる様な威圧感に当てられルラーレは少し怯む、だが虚勢の強がりを見せた。



「ははっ、大層な姿だな……黒い姿の騎士……最近噂になって居る冒険者セリスと言う奴か」



「知って居るとは光栄だな」



笑い声を上げるアルセリス、気が付けばアルセリスへと向けていた剣の切っ先がルラーレの方へと向いていた。



「いつの間に奪った……」



「さぁな」



剣の切っ先を持ち柄をルラーレ側に剣を返す、彼と敵対しても利点は無かった。



「姿を隠したのはこの威圧感の所為だ、聞いての通り俺は普通の冒険者、魔喰いもセルナルド王国からの依頼で来たんだ」



「セルナルド王国の依頼……?相変わらずあそこの国王のやる事は理解出来ないな」



首を傾げつつも納得した様子のルラーレ、あの国には恩もある、後で適当に辻褄を合わせておけばバレない筈だった。



「先程は失礼を働いてすまない、そうだな……魔喰いは犯罪者に敏感だ、犯罪者のリストをやる、それをマークすれば会える筈だ」



そう言い懐からリストを取り出しアルセリスに手渡す、彼の口ぶりは会おうと思えばいつでも会える……そんな風に聞こえた。



「あんた会った事があるのか?」



「5年前にな、右目はその時にやられた……ありゃ強いぞ、桁外れにな」



「そうか、忠告どうも……」



そう言い裏路地の奥へと向かうアルセリス、顔写真付きのリストには殺されたであろう×のマークだらけだった。



だがその中で1人、まだ始末されていない犯罪者が居た。



「思ったより早く片が着きそうだな」



アルセリスは変身魔法で姿を変えると深く、路地の奥へと歩いて行った。

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