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第99話 全ての真実

動かない足、足元で光る魔法陣、冷や汗がシェルドの頬を伝った。



「なぁ……嘘だよな、クレイ」



声が震える、トラップに引っかかったシェルドをクレイは嘲笑う様な表情で眺めていた。



「嘘?何がだ?」



「俺を……騙したのかクレイ!!」



「騙したも何も、俺は元からお前の事など仲間と思っていないさ」



その言葉を残し走り去って行くクレイ、仲間と冒険したのは初めてだった。



いや……仲間という事を否定された今は仲間では無いのだが、人と冒険したのは兎に角今回が初めてだった。



だが……裏切られた、あまりにもあっさりと……不思議と怒りは無かった。



背後から迫る死に怒りの感情など消え去っていた。



逃れられない死……オーガグランの圧力は背を向けて居ても感じた。



「仲間に裏切られたか、愚かな人間」



「裏切られた……とは違うんじゃ無いか、あいつは最初から一人だった、仲間なんて作る気もなく、逃げる時の罠もサイズを考えれば俺たちを時間稼ぎに使うためだったんだろ」



今思い返せばオーガに対して罠の魔法陣は小さ過ぎる……だが今更気付いた所で後の祭り、どうでも良かった。



「どうした、命乞いしないのか?」



流暢に喋るオーガ、オーガから命乞いを即されたのは恐らく俺ぐらいだろう。



だがしても無意味な事は知って居た、それならば……最後くらいそれなりにカッコ良く死にたかった。



「死後の世界は楽しみだな」



残す言葉はそれだけだった、少し臭いかも知れないが……それくらいが最後には丁度いいのかも知れない。



「面白い人間も居たものだ……」



そう言い腰に携えて居た大きな鉈を振り上げる、振り上げられた鉈の影は森を照らす太陽を遮りまるで夜の様に暗くなった。



あと数秒もすれば死ぬ……シェルドは余計な事を何も考えて居なかった。



理由は単純、考えると生に未練が残るからだった。



家族の事、この世界に眠る様々な秘密、言い出したらキリが無い……そしてシェルドは考えるのをやめた。



死が訪れる時間をただ目を閉じ無心で待つ、だが聞こえて来たのはオーガグランの声だった。



「久しく己の意志を持った人間を見た……どうだ、一つ提案をしよう」



「提……案?」



言葉の意味が分からない……いや、言葉の意味は分かるのだがオーガの王がしがない人間、しかも然程強くも無い銅タグ冒険者に提案するなど意味が分からなかった。



背を向けてオーガグランの表情は分からない……だが冗談のトーンでは無さそうだった。



「人間、名前は?」



「シェルドだ」



「シェルドか、所でシェルド、お前は我の存在をどう思う」



「オーガグランの……存在」



向こう側から聞いてくるのは予想外だった、だが黒い皮膚、人の言葉を理解し話す知能、規格外の大きさ……その全てが異質だった。



「一言で言うなら……異質だな」



「まぁそうなるだろう、だが我も元々は只のオーガだったんだぞ?」



その言葉に戦慄した、驚きでは無く……普通のオーガがオーガグランになった、それはつまり他のオーガも変わる可能性が微量ながらあると言う訳だった。



その時、ある事が脳裏をよぎった。



セルナルド王国の黒い噂……



セルナルド王国は生物、人体実験を行っていると言う噂を聞いた事がある……もしそれが本当ならこの辺鄙な地に冒険者を派遣した意味も分かる気がした。



脅威になるかの判断なんて言って居たが恐らく本音は自分達が作り出したオーガグランの経過観察……そこで使い捨ての冒険者を集めて適当に選別、そして任務に出したのだろう。



「セルナルド王国が裏にいるのか?」



「やはり我の見込んだ通り、それが分かれば話が早い……提案と言うのはセルナルド王国の実験台になる事だ」



「それを乗り越えれば生きる事が出来るのか?」



その言葉に頷くオーガグラン、生き残る選択肢はそれしか無さそうだった。



一度は捨てた命……生き残る確率があるのならばそれに賭ける以外無かった。



そしてシェルドは実験台になる事を受け入れた。



20代を全て捨て、10年もの間シャリールと言う女に実験をされ続けた。



結果的に実験は成功、シャリールはシェルドに莫大な魔力、それに加えて傀儡子と言う特殊な魔力を持った糸で人を操る事の出来る魔力を移すことに成功した。



そして実験は第2段階へ……そんな時に国王が変わり実験は廃止された。



そしてシャリールは姿を眩まし、シェルドは晴れて自由の身……だが失った10年間は大きかった。



クレイこと、クレイ・ブラッシエルは国内有数の貴族に、だがあの時の恨みはもう無かった。



人間ならそう、自分が一番大切……そう思えばクレイの行動も当然の事だった。



もう冒険者をする気にはならなかった、疎ましい人間関係から解放され、故郷でひっそり家族と暮らす、その為にシェルドは故郷へ戻った。



だが故郷に居場所は無かった。



いや……故郷が無かった、謎の盗賊団が金品を盗むついでに皆殺しにしたと現場に偶然居合わせ、生き残った商人は言う。



そして不可解な事を言った。



『金品を探す前に村人を一人残らず殺して居た』



その言葉にシェルドは依頼者の影を見た。



盗賊団が金品を盗む前に人を殺す、あり得ない話では無いが家族を殺された以上、調べる必要があった。



そして探っていくうちに全ての元凶はクレイ……彼である事が分かった。



万が一、シェルドが生きて居た時の為に絶望を与える為……そんな理由で家族を殺された。



そしてシェルドはブラッシエル家を、クレイを恨み付近の家で様子を伺った。



どうすれば彼に最高の絶望を与えられるか、どうすれば彼の悲痛な表情が見れるか……考えた結果、彼の妻を殺した。



病気に伏せた様に見せかけ身体に糸状の魔力を流し込み、魔力のキャパオーバーで殺した。



そして後は父を狂わせた様に見せ、娘達に暴行……そして最後は娘に恨まれる演出をしてエンドだった。



「どうだ……此れが全てだ」



喋るのに体力を使い果たしたのか膝をつき血を吐くシェルド、彼の言葉にシャリエルは何とも言えない表情をして居た。



話を聞けば父が悪いのは一目瞭然……だが、それでもシェルドを許せなかった。



正義なんてどうでも良い、どっちが正しいかなんて……愛する父を、こんな自分を愛してくれて居た父の人生を狂わした彼に怒りが止まらなかった。



「お前の……お前の所為で父様と妹は!!」



父が妹を手に掛けた時の、普通に遊びたかったであろう平凡な日常を奪われ娘に暴行して居た時の気持ちを……考えるだけでも涙が溢れて止まらなかった。



魔紙も使わず拳に纏われた魔力はシェルドの腹部を貫く、もう私の知るシェルドさんは何処にも居なかった。



「ははっ……これじゃあまるでクレイのパンチみたいだな……」



死に際に残したその言葉を聞き届けるとシャリエルは拳を抜く、シェルドの脈を確かめるがもう息は無かった。



そして全ての事実を知ったシャリエルはただ、膝から崩れ落ち泣く事しか出来なかった。

小説書くの下手くそあるあるみたいなのに登場キャラが多過ぎて把握出来ないみたいなのがありました。

当てはまり過ぎて……

只でさえ稚拙な文章なのにすみません

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