表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/54

決断

「……家が無い、とはどういう事だ?」


突然のカミングアウトに動揺しつつも、冷静を装う。


「えっと、私、ヘミングっていう田舎の村出身で……。

先月辺りまで、両親の元で錬金術の勉強していたんです。そして、15歳の誕生日になった時、両親に何も言われず家を追い出されて……。

それでも何とか生きようとしたんですけど、私が知っている物って錬金術しかなくって。毎日森で薬草を集めて、近くの村で滋養強壮の薬としてポーションを売って路銀を稼いでいたんですけど、先週地元の元締めを名乗る怖い人達に脅されて、商売できなくなって……。

それでどうしようか困っている所に、道端に落ちてた新聞に載っていたヴェイルさんの記事を見て、この人だっ!って思って……。手元に残ったお金の殆ど使って、最後の望みを掛けてはるばる此処まで着た、という事なんです。

なので、弟子になれないと私、行くところが無いんです……。」


「……なるほど。」


……なんというか、ツいてない子だ。

俺も大概だとは思っていたが、まさかそれ以上の人が目の前に現れるとは。


……まぁ、ツいてない者同士、惹かれ合ったという事なんだろうか。


少女は、うるうるとした瞳で此方を見てくる。

見捨てないで、という声が聞こえてきそうだ。


ヴェイルは大きくため息をつき、決断する。

……仕方ない。


「……私も君の錬金術に興味が沸いた。もっとも、私が教えられる側なのかもしれないが、君を弟子に取ろうじゃないか。」


「本当ですかっ!?」


少女は嬉しそうに椅子から立ち上がる。


「……あぁ。暫く此処に住むと良い。」


「やったぁ……っ!」


そしてピョンピョン飛び回る。

元気な子だなぁ。


まぁ元々、この家は一人で住むには少し広いと感じていたんだ。

もう一人増えた所で何の問題も無いだろう。

だが、一番心配すべきは貯蓄が無くなった後の事か……。


気持ちを落ち着ける為に自分の前のティーカップを掴み、飲みやすい温度になった紅茶を飲む。

……紅茶の香りに混じってさわやかな香りがする。


……やっぱり、ツいてない日だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ