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プロローグ

「マスター、遅いですよっ。」


 しんしんと降り積もる雪の中、白いブーツを履いた少女が呼びかける。

 マスター、と呼びかけられた男ははぁ、とため息をつくと、


 両手に携えた大量の荷物と共に地面を踏みしめるように歩く。


「……俺が遅いんじゃない、お前が早いんだ。ひとつくらい荷物を持ったらどうだ、シンシア。」


 不愛想な顔をした男は白いブーツの少女、シンシアという少女に荷物を持つよう伝える。


「ダメですよマスター。女の子とデートする時は、男の人が荷物持ちしないとダメなんです。」


 男の提案にダメ出しをするシンシア。

 そしていたずらっぽく笑いながら、雪の妖精と踊るようにくるり、と一回転する。

 ついでにもう一言。


「そんなんじゃ、彼女出来ませんよ?」


「……うるさい。」


 そう言うと男は少々ぶっきらぼうになる。

 少々、という所にシンシアとの会話を止めたい訳ではない気持ちが表れているようだ。


「わぁっ!見てくださいマスター。あの飾り、キラキラして素敵じゃないですか?」

 

「……そうだな。」


 季節はもうクリスマス前。

 道行く人々にも活気が溢れている。

 街並みは綺麗に彩られ、サンタやトナカイなどの人形がとても目立つ。


「……それにしても、今日に限ってマスターが買い物に行こうなんて言うと思ってませんでした。」


「何故だ?」


「だって、マスターってパーティとかって苦手じゃないですか。」


「……まぁな。」 


「それなのに、今日の食事は豪勢にしよう!だなんて。」


「……俺だってたまにはそういう気分にもなるさ。」


「ほーんとにそれだけですか?まさか、今日うちに騎士団長のヘイトさん呼んだとかじゃあ……!」


両手で口を押え、ニヤつくシンシア。


「……違う。本当にたまたまだ。たまたま。」


面倒そうに頭を掻く男。

手に提げた荷物がぶらつく。


「もー、そうやってすぐ誤魔化そうとするんですからー。」


「……誤魔化してない。」


「じゃあ、何か隠してる!」


「……それ同じ意味だろ。」



少女の詰問に男は何を言うでもなく、ただ適当にあしらいながら歩き続ける。

だって、言える訳ないじゃないか。


……今日は、俺とお前が初めて会った日なのだから。

そう、シンシアと出会った日は確か、今日のように優しく雪が降る日で―――――

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