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「今日も生き延びて参ります!」
「こりゃ元気な妖怪小僧じゃ」
ここに来てだいぶ日にちが経った。臭い着物は慣れたものだし、はじめの頃はよく擦りむけて血を出していた足も、環境に慣れたのか耐性がついたのか皮が厚く丈夫になっている。
えいやー! と意気込んで駆けていく戦場の中には、奇怪な形をした生き物や、目が一つしかない生き物、つまりは妖怪という得体のしれない奴らがうようよしていた。
そして何故か私は、今日も張り切ってその戦場に繰り出して行く。
「妖怪ぬめがけだ!」
「ぬめがけが来たぞぉ!!」
走って走って、手からヌメヌメしたよくわからない液体を振りまく私を見て、敵の妖怪達や歩兵達が騒ぎ出す。
『妖怪ぬめがけ』
拝啓、遠い世にいらっしゃるお母さんとお爺ちゃん。
この二年、娘が突然いなくなり心配しているでしょうか。
けれど悲しまないでください。
何にも出来ない、でも何でもかんでも一直線にやりたいと思ったらやるよう自由きままに生きてきた神経の図太い私は、今や妖怪入り混じる戦国の世でそう呼ばれて生き延びています。
そして今日もなんとか、頑張って生き延びます。
追伸。
手からなんかヌメヌメしたものが出るようになりました。