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魔法少女からの解放

 


  それにしても、芸能界やら何やらにまで魔法少女おれの噂が広まっていたとは考えてもいなかった。


  これは、紗里子の母親サリエルに言って何とかして貰わなければならなかった。電波を使って、魔法をかけて……。

  しかし電波と魔法は相入れるものなのだろうか。


  ……と、悩んでいると、サマンサが急に話しかけてきた。



  「ところで、護さんはいつ人間界の『神』になるんですの?」



  俺は食っていたラーメンを吹き出した。

  サマンサ……。まだそんな話題を気にしていたのか……。

  俺は断固として拒否をした。


  「あのね、サマンサ。俺は確かにゼウス魔女サリエルの加護を受けているけど、人間界の神になるってのは大変な事なんだ。一度神の視点に立った事があるけど……俺はアレをずっとやるのかと思うと憂鬱になるよ」


  「じゃあ、護さんは神になる気は無いのですわね」


  「そりゃあ、紗里子の事を考えるとな。こんな女の子のなりをしているけど、それでも神として紗里子を見つめるより、ずっと一緒にいた方がいい」


  しかし、サマンサは色々と勉強していたようだった。


  「サリコと合体して神になればいいんじゃなくて? 大好きなお父様と一緒になれて、サリコも喜びますわ。人間の姿になればわたくし達ともいつだって会えますし」


  俺は首を振った。


  「政治経済戦争から始まって貧困や病気、動物達の保護。そんなものに目を配るなんて俺には出来ない」


  「サリコの安全が永久に保証されても、ですの?」


  痛い所を突かれた。

  確かに俺と一緒に神になれば紗里子が悪魔どもに傷付けられる事もないだろう。


  「だからって神になったら今までの生活を放棄する事になるしなあ。俺は今の生活も多少は気に入ってるんだよ。早く男には戻りたいけどな」


  「男性になった元の護さんも素敵ではありますものねえ。私は少女の護さんも好きですけど」


  サマンサのいきなりのデレに、俺はまたラーメンを吹いてしまった。


  「あら、せっかくのラーメンがもったいないですわね」


  サマンサは変な所を気にしていた。


 

  その日はルシフェルとの会見の日だった。会見と言っても、ルシフェルの半ば趣味である魔法少女同士でのものだったが。


  ルシフェルは既に木にもたれかかって俺を待っていた。


  「久しぶりのデートだな。昂明マミ」


  「デートとか言うな。気色悪い」


  俺は機嫌悪く返してやった。

  ルシフェルの用事は分かっていたのだ。

  サマンサと同じく、『人間界の神になれ』ってやつだろう。


  「『人間界の神になれ』と言われたらどうしようかと考えているな」


  ルシフェルは例の美し過ぎる顔でクックッと笑った。その通りだ。

  俺はますます機嫌悪く返事をした。


  「ああ、そうだよ。お前ら天界のヤツらも色々と忙しいんだろうが、その忙しさを俺に押し付けるなんてのは冗談じゃないぜ」


  その場所は紗里子とコーヒー・ココア会議をした所でもあり、ルシフェルの顔面を思い切り殴ってやった所でもあった。


  しかし、ルシフェルは大真面目に言った。


  「さっきお前がサマンサとかいう魔女の小娘と話していた通りの事だ。サリコと合体して神になれば、安泰だろう。それに」


  「ーーそれに、何だ」


  なかなか返事を寄越さないルシフェルに俺は苛立った。


  「今の『生活』とやらを続けながら、神として君臨する方法がある。『存在』を2つずつ作ればいい」


  ルシフェルの放ったよく分からない提案に、俺はあんぐりと口を開けた。


  「……何だそれ? どういう事?」


  「まずは、お前を男の姿に戻してやろう」


  「……え?」


  え? と呟いたそのすぐ後でルシフェルは何やら呪文を唱え、俺は……。



  男の姿に戻っていた。



  「女子用の服は破けたから、服はサービスだ」


  ルシフェルはクックッとまた笑った。

  確かに俺は中学生女子用の服から普通の成人男性向けの服に着替えさせられていた。


  「ルシフェル……。何で……」


  そして俺はその日以後、二度と魔法少女の姿に戻る事は無かった。

  いや、魔法少女どころではなく、女の子の姿になる事は永久に無かったのであった。


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