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男に戻った(一瞬)

 


  リリィ・ロッドがルシフェルと共に天界へ回収され、俺はあっさりと元の男の姿に戻っていた。


  「キャア!! 殿方の裸!! 殿方の裸ですわ!!」


  サマンサが顔を赤くして悲鳴を上げた。

  俺は魔法少女だった時に身に纏っていたゴスロリ風の衣装がビリビリに破けて、ほぼ全裸に近い姿となっていた。


  「サ、サマンサ、これは……」


  「は、早く何か着てくださいまし!!」


  サマンサの絶叫と百合姉さんで男に興味のないキーキの澄ました顔の対比が面白い。しかしそれでもキーキは物珍しげに俺の下半身を見つめていたが。

  さすがの俺も恥ずかしくなって、高田に


  「おい、お前の着てるそのジャケットだけでも貸せ」


  と命令し、何とか凌ぐ事が出来た。高田は俺よりも随分背が高いから下半身の大事な所もギリギリの線で隠す事が出来た。


  「それにしても、マミーー本名はマモルっていうの?ーーはそんな正体だったのね。マミだった頃の可愛さの方が好きだったけど、まあまあいい男じゃない。おじさんだけど」


  キーキが客観的に俺を褒める。


  「……そりゃどうも」


  おじさんか……。俺は気の乗らない調子で生返事をした。


  「そうでしょ! パパって素敵でしょ!!」


  紗里子が急に食いついた。

  まるで本当の父親である高田の事は目に入っていないかのように。

  高田が口を開いた。


  「紗里子……。昂明には世話になり過ぎたけど、でも俺が本当のお前の父親なんだ。今までごめんな」


  高田はしおらしげに紗里子に話しかけた。

  紗里子は、高田や母親であるサリエルの方をあえて見ないふりをしていたようだった。


  「紗里子、今までごめんなさいね」


  サリエルも紗里子に謝る。

  黙って聞いていた紗里子は決意したように、『両親』に向き直った。


  「……お父さん、お母さん。私をこの世に生を授けてくれてありがとう。感謝してます。それに、こんなに素敵な『パパ』に私を託してくれて、本当にありがとうございます。紗里子は今、幸せです」


  「紗里子……」


  「でも私、魔法少女はやめないわ」


  紗里子は宣言した。


  「だってそれが私のレソンテーテルだし、私を必要としてくれる人達がまだまだ沢山いると思うの。だから、お父さんとお母さんと一緒に魔女の世界では暮らせない。紗里子は、人間界に戻ります」


  紗里子、『レソンテーテル』じゃなくて『レゾンデートル』だ。

  その辺がまだ中学生だな。


  だがそれが紗里子の決意であり、本当の両親よりも俺と暮らす事を選んでくれたとはっきり言ってくれたようで、俺は少なからず嬉しく、こそばゆい気持ちになった。


  「でも、魔女の世界にはまた遊びに来てくれるんでしょう?」


  サマンサが不安げに問いかける。紗里子は太陽のような笑みを浮かべて「もちろん!!」と元気よく答えた。

  空に浮かぶ魔女の世界に明るく浮かぶデカい月に負けないくらいの微笑みだった。


  それからは、魔女と魔法少女と、人間の男達の宴。

  晴れて酒が解禁になった俺は酒をしこたま飲んだ。

  半年ぶりに飲む酒は実に美味かった。魔女の世界の酒は人間界と同じように果実で作った物らしく、ワインのような味だがそれよりももっと美味く感じた。


  俺は気持ちよく酔う事が出来た。

 

  なんでも、そのワインも魔女の世界のリンゴと同じで『魔力』を高める物らしかった。

  俺は人間に戻ったから関係ないけどな、と今考えれば油断していた。


 

  「お父さん、お母さん、さようなら。またお会いしに来ます」



  紗里子は両親と抱き合い、しばしのお別れの挨拶をした。

  両親はやはり、やっと会えた娘にフラれた結果になり寂しげな様子だった。



  さて、これからも俺が紗里子を育てていくのだ。

  男の姿に戻った今、これまでの分を取り戻すようじゃんじゃん働ける。



  ……と思っていたのも短期間の間だけで、俺はまた変な事に巻き込まれる運命にあったのだが……。

 


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