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『完成された呪文』

 


  ゼウスの足元に立っていたイリンとクアちゃんがちょこちょこと俺の元に駆け寄り、言った。


  「昂明マミさん、貴女は数々の人間や魔女に関わって、その数だけ魔力を増大してきたのでつよ。貴女はもう、サリコさんや殺された魔女達を生き返らせる『呪文』を完成させているはずでつ」


  見事な双子同士の一字一句揃ったセリフだった。2人は顔を見合わせ、エッヘンと可愛らしいドヤ顔をした。


  「それに」


  イリンは言った。


  「この場所には、ゼウスやルシフェルさんもお2人同時にいらっしゃってます。何か『きっかけ』を与えてくださる事でしょう」


  上空を見ると、ゼウスとルシフェルが俺の頭に手をかざし続けていた。俺は相変わらず月より明るい光に包まれていた。


  ゼウスは言った。


  「人間の『科学』というのは馬鹿にできたもんじゃない。天界を押し潰す程のチカラがあるからな」


  『科学』。

  いつかサマンサと高層ビルの最上階にのぼり、


  「人間は魔法が使えないから科学を発展させてきたんだ」


  そんなセリフを言った事が思いだされる。「科学が天界を押し潰す」なんて、まさか物理的な意味ではあるまいが。


 

  ーーそして俺はーー。異変に気付いた。


  気付くとずんずんと巨大化していた。

  丁度、神やルシフェルと同じくらいに。

  紗里子の無残な遺体は俺の右手の手のひらにすっぽりと覆われていた。



  俺は何事かを思い出そうとしていた。

  『虫』。ルシフェルとの邂逅。神の視点。

  それら様々な出来事たちが俺の脳内を駆け巡っていた。


  そして分かった。

  俺は、『虫』に支配されていた人間達のチカラを少しずつ分けて貰っていた事を。


  俺の脳からはそれまでリリィ・ロッドで助けてきた人間達、関わってきた人や魔女達の名前が知る限り雪崩出てきた。


  俺は助けていたつもりが助けられ、吸い込まれ、多数化されていたのである。


  口から滑り出してきた。

  人間にも悪魔にも魔女にも通じる、最強の生き返りの呪文が。

  それはこういった呪文モノだった。




  「人類の友たるルシフェル、神もまた友であり、悪魔もまた友である。


  始めでも終わりでもない。

  我々は、どんな場合でも科学という肩書きを主張しはしない。


  神の審判、悪魔の援助。人間の『偉大なる知恵』。

  XとYとZの交わり点と線となる所と、カズオ、ルナ、アツコ、メグ、リクノモモ、ナナコ、ルシフェル、キーキ、レイ、トット、アケミ、ハニイ、ドレミ、エリ、ベール・ゼバブ、サマンサ、ダイアナ、キクミ、アイラ、ナノハ、ミサ、ハヅキ、ウミノモモ、トクノシン、『フルチンダンシャク』、『ブーメランカメン』、イリン、キタロウ、ゼウス、イロハ、ヒフミ、ミナコ、クウコ、クァディシン、アラディア、ミキ、アミ、シズカ、サリエル……」



  ……そして……。




  「ーーサリコーー……」




  俺は紗里子の名を呟くように、しかし一際大きく口にした。


  刹那、天からまばゆい光が降り注ぎ、俺は神と悪魔、人間のチカラを同時に手に入れた事を悟った。


  俺は一瞬、ゼウスよりも神に近い存在となっていた。


  ルシフェルが冗談交じりに言った。


  「私の代わりに人間界の『神』になるか?」


  クックッと笑っていた。冗談に付き合っている場合ではない。


  そんな事よりーー紗里子。

  紗里子は、紗里子の身体は生き返るのか?


  いつの間にか普通サイズに戻っていた俺は、腕の中の紗里子を見つめた。


  引き裂かれた腱の一本一本が繋がっていくのが分かった。

  破裂した内臓は見る間に修復していき、肉は元に戻ろうとうごめき、折れた骨は形作られ、血液は全て回収されていった。


  そして、最後に皮膚がきれいにくっついていった。


  「もう、大丈夫みたいでつね。さっきの呪文はお見事でしたよ!!」


  イリンとクアちゃんが嬉しげに言う。

  でも、まだ紗里子の肝心の意識がない。紗里子の身体は完全に修復し、穏やかな表情を取り戻していたが、意識が無いんじゃどうしようもない。

 

  「紗里子! 紗里子!!」


  俺は紗里子の頰を緩く叩いた。

  父親の高田もサリエルも紗里子に抱きついた。


  ……そして……。


  「パパ……?」


  紗里子が大きな目を開き、俺の目を見据え呟いた。



  「サリコ! マミ!!」



  向こうの方から、サマンサやキーキ、アラディアやレイ達が飛んで来るのが見えた。


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