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告白

 


  「紗里子! 無事か!?」


  レイの屋敷に戻った俺は、まず紗里子の身の安全を確認した。


  「パパ……どうしたの、そんなに慌てて……。美砂ちゃんは? 帰っちゃったの?」


  どうやら紗里子はまだ無事のようだった。

  ルシフェルはすぐには紗里子の命を奪おうという気はないようだったと思った。

  サリエルだけでなく紗里子の事も気に入っているようなのはまあ、安心だった。


  「あの、美砂ちゃんという子は何者なんですの? サリコともマミとも違うでしょう?」


  サマンサが身を震わせて言った。まるで魔女の世界ですら見た事もないような化け物を見た、といったように様子で震えていた。


  「……アイツの事はもう忘れろ」


  俺は、ルシフェルの孫であるレイの手前、そう答えた。

  自分の爺さんが少女の姿でニャンニャンやってるなんて知ったらショックだろう。


  もっとも、レイはルシフェルの魔法少女姿である『白井美砂』とは直接会っていなかったが。しかしメンツというものがあるだろうと俺は思った。


  「……そんな事より」


  赤い目をした百合のキーキが話の口火を切った。



  「マミ、貴女はもしかして、元は男の人だったんじゃないの?」



  キーキは勘の鋭い魔女だった。

  紗里子は慌てて言った。


  「な、何を言ってるのキーキ!? マミは私の従姉妹だって……」


  「急に男言葉になったからね。それに噂で聞いた事があるわ。『とある人間の男が魔法少女になってしまった。元が男だから、普通の魔法少女よりも強いチカラを持つようになってしまった』……ってね」


  口の軽いレイの仕業だな。俺はレイの方を見やると、彼女は申し訳なさそうに両手を合わせてごめんなさいのポーズをしていた。まあ、可愛くない事もない。



  そして俺は事もなげに言った。


  「そうだよ。俺は男だ。ついでに言うと、紗里子の義理の父親だ」


  その場はシンと静まりかえった。

  俺のあまりの何でもないような口調に皆、呆気に取られたようだった。


  しかしキーキはやっぱりね、という顔をした。

  さすが百合姉さん、男と女を嗅ぎ分ける能力も抜群だった。


  「紗里子に恥をかかせないように完璧に女のふりをしていたがな。でも、もういいだろ? 紗里子。お前も無意識にパパ、パパ言ってるし」


  「それは、別に大丈夫だけど……」


  紗里子はオロオロしていたが、どこかホッとしているようにも見えた。

  『秘密の芝居』がなくなって楽になったのだろうか。

  しかしサマンサは信じられないといったように目を丸くしていた。



  「それより……」


  俺はその場にいる魔女全員に向かって懇願した。


  「皆のチカラで、紗里子を守ってやってほしいんだ。紗里子は命を狙われている」


  「……え?」


  当然の事ながら一番驚いたのは当の紗里子だった。


  「詳しくは言えない。だけど、人間の世界にいるよりも強いチカラを持つ魔女達が沢山いるこの世界にいた方が紗里子の身を守れると思うんだ。頼む。皆で紗里子の身辺警護に当たってほしい」


  アラディアは黙ってうなづいた。

  キーキもうなづいた。

  レイもうなづいた。

  サマンサだけがよく分からないといったように動揺していた。


  「ちょっと待ってくださる? いきなりそんな事を言われた所で……。一体サリコが命を狙われなければいけないどんな理由があるって言うんですの?」


  俺はもう一度言った。


  「それは言えない。でも喫緊の事なんだ。サマンサ、君も強い魔力を持っている。頼むよ」

 

  『強い魔力を持っている』と褒められて満更でもなさそうなサマンサはすぐに態度を変えて、「ま、まあ、そういう事なら仕方ないですわね」と引き受けてくれた。


  納得がいってないのは紗里子の方だったが、思い当たる事があるようで、


  「私の身体の中にいる『本当の両親』に関係する事……?」


  とつぶやいた。

  俺は仕方なくその言葉を肯定した。本当は詳しくは言いたくなかったのだが。


  「……まあそういう事だ」


  とだけ教えるだけに留めた。


  サマンサが、急に張り切って言った。


  「何だか事情はよく分かりませんけど、お友達の命が狙われていると知ったら黙っている訳にはいきませんわ!! 皆、全力でサリコを守りましょう!!」


  オー!! と拳を突き上げ、皆が賛同してくれた。


  ルシフェル以外にも、紗里子の心臓を狙っている悪魔は沢山いる事だろう。

  自分の命に代えても紗里子を守らねばならないのは勿論俺だ。

  だが俺は魔女の仲間達を頼もしいと思った。

 ーーあんな事になるとも分からず。


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