婚約破棄から始まる……。
貴族の集まるパーティ会場。
そこで私は婚約破棄を言い渡されました。
「ジャンヌ・ドゥ・アーク!貴女との婚約を破棄します!」
そんなことを言われて。
たった今まで普通だったモノが壊れる音がして。
その瞬間、私の世界は壊れました。
私の婚約相手は公爵家の時期当主、ルカ・ドゥ・エスパルス様でございました。
ルカ様は公爵家の当主となるべく、幼い頃から学問を学ばれて来ました。
私はルカ様の苦労を誰よりも知っていたはずなのです。
何故なら、小さな頃からルカ様を見ていましたから。
一人で庭の噴水を眺めていたルカ様。
一人で乗馬をしていたルカ様。
貴方はいつも一人でしたね。
私だけはいつも側に居たのに。
貴方の隣にいるのは私だけだろうと思っていたから。
だから、婚約の話を聞いて私は歓喜したんですよ?
ずっと貴方と居られると思って。
貴方も喜んでくれたではありませんか。
私の家を訪ねてくれて。
ずっと好きだった貴方は近くで見るととても大きくて、私の胸は高鳴りました。
そして、婚約発表は恙無く進みました。
後は結婚するだけ、と言う時に婚約破棄を言い渡されたのです。
ルカ様の隣には、太陽のような笑顔のご令嬢がおりました。
彼女がルカ様を唆したのでしょう。
私だけのルカ様だったのに。
気づけば私は彼女に襲いかかっていました。
彼女に手をあげることはできませんでした。
そして、私は牢に幽閉されました。
薄暗い牢で私は思いました。
ルカ様を好きになったせいで私はこんな目にあっているのだから、もう誰のことも好きにならないと。
壊れた世界で生きていく意味など見出せないから。
そして私は釈放されました。
監視付きで。
監視は私と同程度の年齢で、冷ややかな目で私を見ていました。
監視は少し離れた場所から、私を見ていました。
声もかけず、ただただ私を見ていました。
それはまるで過去の自分を見ているようで。
私にはそれが、とても不気味に感じられました。
私は理解しました。
ルカ様も、こんな感情を抱いて私と接していたのだと。
監視の男はそれを私に気づかせてくれました。
私は彼に感謝しました。
ですから、彼を見る度に私はお礼を述べました。
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。
そのうち、私の彼への感謝は感謝ではなくなりました。
彼の目も少しずつ柔らかくなっていきました。
婚約破棄をされなければ、私は彼にお礼を言うことは無かったでしょう。
それどころか彼に会う事も無かったでしょう。
今となってはルカ様に感謝しております!
私を彼と会わせていただいたのですから!
どうぞ、ルカ様!
あの素晴らしい令嬢とどうぞお幸せに!
私ももうじき幸せになれるでしょう!
私をいつも見てくれている彼と!
婚約破棄から出逢った彼と!




