その弐拾参 最終日本日限定第三次
短め。前回に引き続き。繭目線
稜真の言葉に、俺は驚いてしまって声すら出なかった
『お前どうすんの?』
その言葉がどんな意味を持っているのか
何を意味しているのか
そんな簡単なことがすごく難しく思えて、俺の頭の中を真っ白に染め上げたから
俺が、それどういう意味?って聞かなくても、脳味噌の中では勝手に神楽さんの顔が浮かび上がっていた
今の時刻はもうお昼の一時を回ってる
卒業生なら、もうとっくに家路にでもついて、家族と談笑したり友達と語り合ったりでもしてるのかもしれない
もう遅いのは解ってるんだ
俺が神楽さんに会えるような資格どこにもない
隣でいつものように笑うことさえ、もう無いんだから
諦めようって、ついさっき退場して行く神楽さんの横顔を見ながら堅く心に決めていたのに
さよならしたのに、心から
「稜真、それはどういう意味?」
俺は、擦れそうになる声を抑えながら、精一杯の笑顔を稜真に向けた
本当は稜真にその言葉の先を言って欲しくなくて、自分に言い聞かせるためだけに出た言葉だってこともわかってた
だけど、これしかもう俺にはないから
神楽さんはもう居ない
もう居ない
もう居ないから、だから、もういいんだ
終わりでいいんだ。もう全部
「……、別にどういう意味でもないけどな」
稜真はそれだけ言うと、いつもの顔で笑いながら、俺を見た
本当は泣いてしまいそうだった俺を慰めてくれてるってことも解ったのに、俺はその時上手く稜真の顔を見れなかった
見てしまったら最後、俺は泣き崩れてしまう気がしたから
「俺この後呼ばれてるから、繭は先に教室でも戻ってろよ」
帰りにどっか寄って帰ろーぜ、と言いながら、稜真の姿は見えなくなった
俺も教室に戻って、そのまま帰る支度をしてしまおうと立ち上がった
溢れ落ちそうになった涙が、何処かで弾けた
何かが音を立てて、俺の中で弾け飛んだ
不意に、無性に 駆け出したくなったのはどうしてだろう?
俺の足は自然と駆け足になっていた
行き先は、自分でもわからない
人混みをかき分けて進んでいく自分の意味を俺は全く知らなかった
ただがむしゃらに走ってた
息も上がって、それから随分と経った頃
ようやく俺の心臓はゆっくりと動きだした
「な、んで………?」
溢れる涙は拭えない
ただ立ち尽くしていた足に、力は無かった
俺は気が付くと、自分がドアの前で突っ立っていた
――――――東塔の一番隅にある部屋まで来ていた