表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/39

その壱拾四 突然暴露世界大会抽選

 突然稜真から呼び出されたのはついさっきの事


 放課後に付き合ってほしいとかそんな内容だった気がする

 いつもならそのまま東塔に向かうはずだけれど、俺はなんだか神楽さんと顔を合わせ辛くて稜真の誘いをあっさりと受けた

 俺の脳味噌の中には、今日の授業なんてほとんど入ってなくて 神楽さんが今日一日中の俺を見ていたら、きっと思い切りどなりつけるだろう

 とか、そんなようなことを考えて、席に腰掛けたまま 俺はHRが終わるチャイムが鳴り終わってもそのまま頬杖をついていた

 すると、稜真が振り返ってきて、いつもの人の良さそうな顔で笑った

「じゃ、行こうぜ繭」

「いや、別にいいけど。何処行く気なんだよ?」

「んなこたいいじゃん、早く行こーぜ、」

「え!?ちょ・・・っ稜真!?」

「お前の気持ちがちゃんと届くような人なのか、俺が見極めてやるからさ!」

「はぃ!?え、待って りょぅっま!?」

 思い切り稜真の手が俺の腕を掴み、ずるずると引っ張っていく

 俺の身体はいとも簡単に稜真へもっていかれて、反抗する術もなくただ引きずられるままになっていた

 稜真は嬉しそうな顔しかしない

 というか、俺の問いは完全に無視されている

 

 ――――――嫌な予感がする、


 その予感が的中するのには、そう時間はかからなかった

 でも俺が本当に稜真の行動の意味を理解するまでには、大分時間を要した

 俺はこの後に起こる『何か』をまだ知らない



 ***



 ちょっと、こいつらなんなの?


 僕がそう思ったのは放課後のこと

 窓の外からは部活動に励む生徒の声が聞こえて来る

 さっき早々に卒業式の仕事を済ませて、今は生徒会から提出された書類に眼を通しているところだった

 ついさっき現れた目の前の男は、僕の部屋に勝手に入り込んできて、勝手にお茶を啜っている

 背の高い、きっと僕の庶務係と同じクラスのヤツ

 微笑みながら僕を見てるその視線がどうも気に食わない

 というかむかつくんだよ、その視線は。

 僕は短く息を吐いて、その男を意識しないように書類で顔を覆った

 むかつくことはそれだけじゃない どうして『君』までここにいるの?

 今日は別にもう帰ってもらっても構わないってさっき言わなかったっけ

 

「ねぇ、僕にもお茶」


 僕の声に少し遅れて返事が聞こえた

 慌てたような表情をみせるのが少しだけ面白くて、僕はほんのちょっとだけ気を緩ませた

 ねぇ、久城 繭

 君はどこまでそうしてくれるんだろうね? 



 ***



「どどどどどどおおおぉうしてこんな事態になってるんですか!?」

 ものすごく

 というかかぎりなく小声で俺は尋ねた

 もちろん、それは稜真に向けて

 お茶を入れる手がガタガタと震える

 心拍数は今にも悲鳴をあげそうなほどに高くなる

「あのさぁ、そんな緊張する場面じゃなくね?」

 そもそもそこまで『ど』を多く言う必要性が見当たらないんだけど?と、稜真には軽く流された

 俺達がいるのは東塔の一階


 

 ――――――神楽さんのいる中央風紀の委員会専用の部屋だ



 神楽さんの顔は書類に隠れて見えないけれど、きっとものすごく不機嫌に違いない

『ねぇ、僕にもお茶』と言った神楽さんの声が俺の心臓をきつく締め上げた

 その声は、エコーのように何度も何度も頭の中を駆け巡る

「お前がっ神楽さん見たいとか言い出すからいけないんだろ!?」

 こんな不審者みたいな息切れモードにもなるわこの野郎ッ

 俺が切れ切れの声で(※最小限の小声※)抵抗する

 さっき稜真に引きずられてここまで来た俺は、言葉を失った

 まさか稜真が神楽さんに会いたいなんて言い出すなんてこれっぽっちも頭に無かったからだ

 予想外のおねだりをされつつ引っ張ってこられた間に、出来る限りの力で抵抗を試みたものの、俺の力で稜真にかなうはずもなく、あえなくこの部屋にゴールイン

 勝者は稜真

 あいつは何を考えてるんだ!?と思っているうちに神楽さんと眼が合ってしまった

 最悪のタイミングで、声をかけられる

『仕事、早くね』

 言われたら、俺は はい と返事をするしかない

 掃除を済ませて、書類を整理して一通り仕事を済ませた後、仕方が無いので稜真にお茶を差し出した


 ・・・・少しすれば帰るだろうと思っていた俺が馬鹿だった


 稜真は挑発とも取れるような笑みで神楽さんの真ん前を占領

 ついでに言うと、きっと喧嘩を売りにきたって感じだ

 恐るべし稜真

 俺ならあんな顔で神楽さんの前に立つ事自体自殺行為だ

 

 気が済めばいいか、と無理やり自分を納得させて、俺は神楽さんにお茶を差し出した

 遅れて

「どうも」

 と、ぶっきらぼうな返事が聞こえてくる

 途端、俺は自分でもわかるくらいの勢いで顔が真っ赤になったのを感じた

 

 ん?


 おかしい、何かが変だ・・・・

 視線を感じる、と俺が振り向いた方向には 満面の稜真の笑みが

「・・・ってぇ!」

 口で何かを言い出す前に手が条件反射で出てしまった

 堅く握りしめた拳で、思い切り稜真の頭をこずく

「何すんだよ繭!」

「五月蝿いから!?もうなんかその顔やめて!つか止めろ馬鹿!」

「ははーん、お前何 その顔は」

 赤くなってんぞー?と、稜真に耳打ちされて、ますます顔が熱くなる

 もうこれ以上ちゃかさないでくれ!と、心の中で俺は叫んだ

 その時、

「ちょっと、」

 低い声で神楽さんが俺達を呼び止めた

「はっはい!?」

 五月蝿かったっていうか五月蝿くなかったっていうか絶対五月蝿かった

 返事をした途端に冷や汗が流れ出た

 やばいやばいと思っているうちに神楽さんの手がふらりと動いて竹刀にかかる

「・・・・っ!」

 反射的に身体が凍った

 稜真はこの状況を理解仕切れていないようで、良く解らないというような表情で俺をみている

 そんな眼で見られても困るから!!!察しなさいって この状況を!!!!

 その瞬間フッと神楽さんの手が動いた

 もう俺は死んだな、と瞳を閉じて覚悟を決める

 俺の中の都合の良いときだけしか存在しない神様がにんまりと笑った


 



「君、これ買ってきて」  




 期待したような(してないけど)衝撃はなく、ただいつもの声がふってくるだけだった

「へ・・・・っ?」 

 竹刀でもなく罵声でもなく拳でもなく

 言い渡されたのはただの白い紙切れ

 手に取ると、そこには何かのリストが書かれている

「それは、卒業式とは別に在校生が卒業生に向けての会を開くときにつかうやつ。今直ぐ必要だから君だけ買い出しね」

 そこにいる子は他の事やってもらうから残って。と神楽さんは短く言って俺に財布を投げた

 何とか落とさないようにキャッチできた俺は、稜真に小声で話し掛けた

「かっ神楽さんとあんま話すなよ?」

 ちなみに言い逃げ、稜真の顔もまともに見れていない

 なんて小心者なんだ俺は

 駆け出した足は止まらずに、俺は部屋を飛び出して走り出していた



 ***



「それで、君はなんなの?」

 ここの所属の子じゃないでしょ、

 すっぱりと言い当てられた俺は、はぁー と心の中で長く息を吐いた

 たしかに綺麗だし、可愛い

 繭が惚れるのもわかる

 でもつまらないのは明白だった



 なんだ、

 

 あっけなく、俺は気が付いてしまった

 


「もう既に侵食されちゃってんのかあんたは」

 と、途方もなく呟いた  

「は?君何言ってるの」

 訳がわからないとでも言うように、神楽は眼を見開いている

 もうあきれたような顔だ

 俺はゆっくりと背を向けてドアに手をかけた

 鋭い声が、背中をびりびりと突き刺す

「まだ話終わってないでしょ」

 溜息をつきたい

 俺の中ではもう終わってるのに

「あんたさ、」

 背を向けたまま、俺は言った

「何、」




「繭が好きなら、好きって言った方がいいよ」



 

「・・・・っ!」

 動揺したような空気が、かすかに香った

 俺が振り返ると、顔を赤くした神楽がそこにいた

「見ててわかるよ。あいつは鈍いから気が付いてないと思うけど、」

「・・・・、」

「ただ、あんたがちゃんと手伸ばさないといけないんじゃない?繭はあれで、ちゃんとオトコノコですから」

 確かめたかった事は、繭のことをちゃんとわかってくれて、受け入れて、大事に出来そうな女かどうかってだけだ

 あいつはあんなに単純だから、俺みたいな悪い奴にひっかからないように ってそれだけ

 

 でも心配はどうやらしなくていいらしい

 ただのおせっかいにしかならねーみてーだしな。

 繭の気持ちが届くかどうかは 神楽を見ていれば、嫌でもわかった

「なんで、わかった の」 

 顔を背けた目の前の先輩は、とてつもなく悔しそうな顔をしていた

「わかりますって、あんな顔してたら」

 稜真からしてみたら、繭を見ている時は神楽は浮ついたような顔をしていた


 時折繭が見せる、『神楽さん』の話をしている時のと重なる


 ただそれだけだ。この人も、理事長の孫とかいって煙たがられてるけど、一般の女の子と左程変わらない

 うちのクラスの女子と一緒だろ

 稜真の中の不思議ちゃんイメージは、音を立てて崩れ落ちた

「それに、俺と一緒に来た時随分気に入らない感じでしたから」

 それだけ言って、俺は部屋を出た

 少し気分がいい

 と思うのは、嫌な奴の性分なのかもしれない


 そんなことを考えていたとき、前から見なれた顔が歩いてきた


 両手には、幾つかの白いビニール袋を持っている

「あれ?稜真?どうしたんだよ、」

 繭はそのまま俺の前で止まった

 今の状況を説明するのも、神楽の気持ちをそのまま伝えるのも面倒になって、俺はそのまま笑顔を作った

「いや、もう帰らないといけないからな。適当に切り上げたんだ」

「そっか、じゃぁもう帰るの?」

「あぁ、そのつもり」

「じゃぁ気をつけてな」

「おう、また明日な」

「うん」

 親友の背中はだんだんと遠退いていく

 

 背中が見えなくなってから、小さく呟いた

「・・・・俺の遊び相手取られたな」

 恥ずかしいような嬉しいような寂しいような

 複雑な気持ちが、俺の中で渦巻いた


 盛り上げ役者はつれーなちくしょう、


 独りきりの足音が、廊下に響いて耳の中で弾けた

稜真の役って、改めて考えると可哀想だな←

ごめんな稜真

ゆーりちゃんは、繭ちゃんのこと好きなんだってさ

ってなわけで、次回をお楽しみにしてて下さいな♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月一回、もしもこの作品が気に入って頂ければ、投票よろしくお願いします!!! 特典とかはありませんが、励みになりますのでよろしくです つか、泣いて喜びます ので、← ネット小説ランキング>恋愛コミカル部門>「捻くれ者に恋をした」に投票
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ