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その壱 黒猫発令注意報

 酷い話が、ただのちっぽけな高飛車な仔猫に懐かれたってだけの話で

 しかもそいつは真っ黒くって

 おまけに気に入らなかったら噛み付く始末だった

 じゃぁどうしてそんな話をしようと思ったか?

 それを話すには気分が悪くなるような昔話と今俺の真上に片足を乗せてぐーすかと寝入ってる人の事を説明がてら話さなくちゃいけなくなる

 俺はひと呼吸置いてから真上に堂々乗っかっている人を揺さぶった

 もちろんかなりの手加減さで、だ

「・・・・・・・・神楽、さん?」

「―――――――――――」

 まぁ案の定そんな力では誰だって起きるはずなんて無いのだけれど

 目の前で寝息をたてている人間を例えていうならもうそれは空気が触れているような力で触ったとしても結果この人のようにぴくりとも動かないってことだけだ

 はぁ、俺の口から許可もしてないのに勝手に溜息がでてしまう

 あぁ、どうしようあと5分もしたら―――――――――――


「『会議がはじまっちゃうのに』って言うんでしょ君」


 最後の方が下がり気味なその声に俺ははっとしてひざの方を見下ろした

 見れば黒い大きいけれど切れ目な瞳が二つ、俺の事をまじまじと覗き込んでいた

 起きてくれたのか(というか多分寝たフリだ)という安堵感でまた溜息が出たけれど、気にせずに俺は続けた

「いや、そうなんですけどわかってるなら神楽さん、今すぐ起きて支度して下さい。もう間に合いませんよ」

「だから何」

 いや、そこはまぎれも無いクエスチョンマークがつくところでは?

 そんな俺の気も知らずに堂々と『自分の言う事に何か問題がありますか』と言わんばかりにじっとみてくる背の低い俺と少しも変わらない先輩のことが胃の方にずっしりのしかかってきてはまた溜息が出そうになる

「だって今日は何か大事な事を決める日だとか言ってませんでしたか?遅れたらまた生徒会長に怒られますよ」

 最後の方に笑いが滲み出てしまった俺の台詞が気に入らなかったのか、俺のひざの上にいた気まぐれな黒猫―――――――神楽かぐら 佑璃ゆうりは立ち上がって俺の事を見やる

「だから何ってさっきいわなかった」

 途端に睨まれる俺は心臓が飛び上がるほどに動けなくなった

 怖い、というよりも恐ろしい。多分この人を怖いと言うならば強いと言った方が正しいのだろうなと俺はそんな取り留めの無い今のこの状況とは全く関係ない事を思っていた

「だって会議があるからこの時間に起こせって、言ったのは神楽さんですよ?」

「そんな事言わない」

 俺の反論はそんな短い言葉で切り捨てられるのかよ、とまでこの人につっこめやしない自分が少し情けなく思えてくるのはこの際気のせいだと思いたいけれど

 いいや言われた確かに言われた

 俺は昨日この部屋の掃除をしているときに確かに言われたんだ

 そのときも多分今日と同じくらい機嫌が悪くって確か手元にあったであろう書類の厚みの部分で思いきり殴られた気がする・・・・・・・・のも気のせいだと思いたい

「でも―――――――」

 俺がそう思って口を開きかけたその瞬間目の前目前、いや言うならこの際ぎりぎりだ


 つきそうでつかない俺の顔目前に昨日と同じ書類の厚みが


「かっかっかっかぐらさんっ!!言われてないかもしれませんっ!!いいやほんとに神に誓って!!!」

 だめだな俺本当に、なんて思ってる暇は俺にはない

 この際情けなかろうがダメな奴だろうがなんだっていい

 とりあえず謝り倒しの俺に免じてか、書類の厚みは遠ざかる

「もう昨日で会長にはちゃんと公正に話し合いをしてきたから会議なんてなしだよ」 

 無論、ちゃんとルールは決めてきたから問題なんて無いよ。とか言い切る神楽さんはこの上なく上機嫌だった

 触らぬ神に祟り無しとはよく言ったものだ感心するぜ会長と心密かに俺は哀れな生徒会長にエールを送った

 とその時、ソファに腰を下ろしたかと思った神楽さんは勢い良く立ち上がって俺の方に向かってくる

 もしや今俺の思ってた事が見破られたのかと思って一瞬びくついたが、予想は外れて神楽さんは俺の前をスルー、ドアの方へ向かう

「神楽さん?」

 どこいくんですか?までは言い終わらなかった

「見回り」


 おいおい今から?なーんて言えないのは


「行って来るね」

 バタンとドアが閉じて神楽さんの背中が見えなくなる


 あの人が最凶の神楽 佑璃だからだろうなと俺は思った



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