第一袋目:貧弱な勇者①
こんにちは、初めまして
金木火水と申します
自分の妄想を形にしようかと思って投稿させて頂きました
初投稿なので拙い所が多々あるでしょうが、よければご意見ご感想があれば幸いです
また、ご質問等がございましたら、把握次第にご返答させて頂きます
それでは、今後ともよろしくお願いします
朝焼けの森、そこには数えられない程の生物が暮らしている
夜行性の動物は静かに床に就き、昼行性の動物はこれからの営みの為に動き出す
そんな動き出したもの達の音がこだまし始める頃、本来は存在しない異質な音が混じっていた
人がたてる、無作法な足音である
「‘イアソン’、ほんまにこっちであっとんのかぁ?」
「うーん、地図通りならこっちの方角のはずなんだけどなぁ〜」
「ほんまに頼むでほんまー、はよせんと時間に間に合わなくなるで」
痩躯な少年イアンが、体の隠れる程の大きな革のリュックサックを背負い、朝焼けの森を彷徨う
彼の若草色の髪がボサボサなのは、彼の無頓着さと図太さを物語っているのだろう
「わかってるって〜、だから早起きしたんだからさー」
「時間だけの問題ちゃうで!そろそろ危ない魔獣とかも起きる頃や。出くわしたら大変なことに…」
イアソンの目の前には、優に体長3mを超える熊がそこいた
グゥゥゥゥゥゥオオォォォォ
「ヒャァ!?出たああああぁ!!」
「イビリアンベアーだ!いやぁこの地方にしかいないんだよね!綺麗な赤褐色の体毛、見れて感激だな〜」
イアソンは目を輝かせ、赤褐色のクマを隈なく観察する
「そんなことしてる場合ちゃうで!ほんま食われ前にはよ逃げなはれや!」
「うるさいなぁー向こうを刺激しちゃうだろ。それに君が‘食われるはずない’じゃないか」
「あんさんが食われると言っとんのや!」
「わかった、わかったから」
イアソンはやれやれという風に耳を押さえながら首を振る
そして、リュックのサイドポケットから鈴を取り出した
「いいかい、クマに背を向けて逃げるのはダメなんだ。エモノと勘違いするからね。あと、死体漁りもするから死んだふりもダメ。一番いいのは、クマと対面しながら後退りして去ることさ。尚且つ鈴があればもっといい、クマは基本臆病なんだから」
と言って、したり顔で鈴を鳴らしそのまま後ろへと下がっていく
「ほら見たことか〜」
グゥオオオオオォォォォォォ!!!
「ヒャァアンンフホ!!?」
飛び掛かってきたイビリアンベアーのひっかき攻撃を転けて避ける
もちろん、偶然である
「普通に襲ってきたやんけ!ほんまにあんさんの言うことは信用できまへんわ!」
「ふへぇー、魔獣化した生物には適用されないのかも…しかし大丈夫だよ!」
「まだ策があるんか!」
「ない!逃げるよ!!」
「は!?」
イアソンはそのまま後方へ全力で駆け出した
イビリアンベアーはまた雄叫びをあげながらイアソンを追いかける
「ほら見たことか!ほんまにあんさんをマスターにして失敗やで!」
「そういうなって!それに大丈夫っていったろ!」
「これの何が大丈夫やねん!」
「いくら魔獣化しても姿はクマ、じゃあ前足が短いのも一緒さ!でここはセルキス山で今は下り道!知ってる?クマは下り道が苦手なんだよ〜」
「ドヤ顔はいいからはよ走らんかい!」
「ハァ…ハァ…………もう無理かも」
「は!?このノロマほんまにええ加減にせえよ!!」
急激に減速するイアソンに、イビリアンベアーはいとも簡単にその真後ろにつく
そして、振り上げた魔手は
……また、イアソンには触れなかった
しかも、またもや同じ偶然
「イアソンほんまにコケすぎぃ!!」
「イタイイタイイタイイタタタタイタイ!」
イアソンはその類稀ない運動神経の悪さをもって足を滑らせ、そして傾斜を転がり落ちっていったのだ
そして数十秒後、小さな窪みに嵌まりやっと止まることができた
「……なんとか助かったね」
「……果たしてこれを助かったというんか?」
「イビリアンベアーから助かったじゃないか」
「おもくっそイタイ目にあったで」
「いやー、この大きくて柔らかくて優秀なリュックのおかげで助かったよ〜」
「ほんまにええ加減にせえよ!!!」
「まあまあ、許してよ‘パックン’。それよりかなり道を間違えたけどなんとか辿り着いたみたいだよ」
小さな窪みの先は丘になっており、そこからの風景には大きな外壁に囲まれた街があった
巨大で厚い門、広大な街並み、そして中央にそびえ立つ城
全てが、この街の価値と偉大さを示している
「あそこが僕らの目的地、セルキス王国の首都バルだ」
後書きに関しては、完結後に書くつもりです
気持ち的には、ラノベ数冊分に物語を纏めるつもりなので、ゆるくお付き合い下さいませ