表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

あるゴブリン爆誕

作者: アマラ
掲載日:2013/07/17

 さまざまな生物が闊歩するこの世界において、ゴブリンという存在はとても弱いものの一つである。

 たとえば、一対一で素手だと犬にも負ける。

 不意をつかれればでっかいねずみにすら食い殺される。

 もっともそれは、ねずみ異常なのかもしれないが。

 とにかく、ゴブリンは弱い。

 人間の冒険者に追い回され、初心者の魔法使いに的にされ、木刀で殴り殺されるぐらい弱い。

 だが、それは一対一の場合である。

 私たちゴブリンは、集落を出ると常に集団で動くようにと教育を受けている。

 そして、必ず武器を持つようにと訓練されている。

 もし剣などの武器を持っていなくても、その場にあるもので武器を作れるように教え込まれるのだ。

 冒険者がはぐれゴブリンを見つけたとき、粗末な手作りの武器を持っていることが多いのはこのためである。

 そういったゴブリンはちょっと外に行くつもりで迷ってしまい、たまたま冒険者に遭遇してしまった不幸なゴブリンなのだ。


 私たちゴブリンは、確かに人間に比べれば頭が悪い。

 腕力もない。

 魔力だって少ない。

 だが、それは人間だって同じはずだ。

 オーガに比べれば人間の腕力なんぞあってないようなものであるはずだ。

 魔力だってエルフとは比べるべくもない。

 そんな人間だが、彼らは国を作り大きな権力を振るっている。

 それは、彼らは数が多く、武器を作ることに長けているからである。

 私たちゴブリンだって、一部の分野では負けてはいない。

 それは、繁殖能力である。

 私たちゴブリンは、成人するのは恐ろしく早い。

 二年もたてば成人することができるのだ。

 そして、あまり知られていない事実だが、実は寿命はきわめて長い。

 大体100年ぐらいだろうか。

 だが、そこまで生きる個体はまずいない。

 私たちか弱いゴブリンに対して、森はそんなに甘くないのだ。

 大体15年ぐらいで怪我や病気、闘いが原因で死んでしまう。

 だが、それでもかまわないぐらいの速度で私たちは増えることができるのだ。

 ちなみに、私には子供が50人ぐらいいた。

 いたというのは、何人かはすでに死んでしまったからだ。

 何人ぐらい死んだのかはよくわからない。

 ゴブリンには「自分の子供」という感覚があまりないからだ。

 子供は集落全体の子供なのである。

 ぶっちゃけたはなし、自分で腹を痛めて生んだ子供以外血のつながりを保証するものはない。

 であるから、実は私の子供とはいっても、本当に私の子供なのかどうかはなぞなのである。

 だが、どんなことはどうでもよいのだ。

 集落の子供は、みんな同じくかわいいのだから。


 さて、私はゴブリンの集落において、どうも変わった存在であるようであった。

 多少みんなよりお頭のつくりがよい様なのである。

 私たちゴブリンは、狩のときによく落とし穴を使う。

 これは、人間のわなを真似たものだ。

 下にとがらせた杭を仕掛ければ、うまい事いけば簡単に食料が手に入るという優れものである。

 私はこれを見て、自分たちの集落をこれで囲うことを思いついたのだ。

 みんなで一生懸命穴を掘り、大きな穴で集落を取り囲んだ。

 これが、思わぬ効果を生んだのだ。

 私たちゴブリンは、自分で言うのもなんだがすこぶる弱い。

 ほかの森に住むものから見れば、よい獲物である。

 そのため、よく集落を襲われるのだ。

 そのたびに私たちは集落を捨てて逃げ出し、新しい集落を作っていた。

 ところがである。

 なんと、この落とし穴に私たちを狙う動物が落ち、簡単に倒してしまえるようになったのだ。

 こんなことになるとは、誰も予想はしていなかった。

 初めてこの罠にかかったのは、恐ろしい燃える体を持つ熊であった。

 みんな最初はビビッて近づかなかったが、提案したものの責任ということで私が生死を確かめることになったのである。

 あのときほど「こんなこと提案するんじゃなかった」と思ったときはなかった。

 死んでいるとはわかっていても、絶対強者に近づくというのは怖いものである。

 私が震えながら熊に近づいたが、熊は完全に絶命しており、火も完全に消えていた。

 私はほっとして、早速仲間たちを呼び、熊を集落に引き上げたのである。

 さて、みんなで熊を解体すると、その体内からひとつの輝く石のようなものが出てきた。

 これは、魔石と呼ばれるものであった。

 魔法の力が体内で凝り固まったものであり、不思議な力を持っているものだ。

 人間たちはこれを武器に使うそうだが、私たちゴブリンに言わせればそんな使い方は下策であるといわざるを得ない。

 私はほかのゴブリンの了解をとり、それをゴクリと飲み込んだ。

 その瞬間、私の体の中で何かが変化した。

 何がどうといわれても、説明することはできない。

 こればかりは魔石を飲んでみるしかないのではないだろうか。

 そして、私は熊のもつ魔法の力を、体に取り込んだのである。

 魔物と呼ばれるものの中でも強い固体は、それぞれ特殊な魔法の力を持つことが多い。

 それらは体内に魔石と呼ばれるものを持っているのだが、それは食べるとその力を取り込むことができるとてもすばらしいものなのだ。

 普通食べてもそんなことは起こらず、せいぜい魔力が少し増す程度らしい。

 だが、ゴブリンの魔力は弱すぎて、食べたものに引っ張られてその力に染まってしまうそうなのだ。

 なんと便利なのだろう。

 これにより私は、炎を操るファイヤーゴブリンとなったのである。


 さて、私たちゴブリンは弱く、よく餌として狙われる。

 私たちの集落の周りに作った罠は、まさに入れ食い状態であった。

 考えれてみれば、餌をおいておびき寄せているのだからある意味当然であるかもしれない。

 あるときはオーガ、あるときは小型のアースドラゴン、あるときはオークと、すさまじい勢いで獲物が取れた。

 よくもまぁこんな中でゴブリンが生きてこれたものだと関心仕切りである。

 どのゴブリンも皆「何で俺たちこの森で生きてこれたんだ」と不思議そうであった。

 とにかく、取れたものは食べなくてはならない。

 私たちは獲物を罠から引き上げ、食って食って食いまくった。

 基本的には罠を作った私が魔石を食ったが、時にはほかのゴブリンに分けることもあった。

 石があるのを忘れて食べ過ぎたときなどである。

 今考えれば別に腐るものではなし、とっておけばよかったと思うのだが、まぁ結果オーライだろう。

 こう聞くと私たちゴブリンはすぐに強くなってずるいな、と思うものがいるかもしれない。

 それは大きな間違いだ。

 たとえば熊。

 武器があるとはいえ、自分よりも三周りもでかい熊を倒せるだろうか。

 そのぐらいの相手じゃないと魔石なんてないのである。

 ねずみやいのしし、鹿程度じゃ魔石なんてないのだ。

 普通魔石を手に入れるのは、たまたま寿命で死んでいる動物を見つけるか、たまたま偶然倒せてしまったときぐらいしかない。

 しかもそれで魔石を食べられたとしても、せいぜい力がちょっとだけ強くなるぐらいなのだ。

 死ぬほど弱いゴブリンが、死に掛けるぐらい弱いゴブリンにランクアップするだけである。

 であるから、私がいくらファイヤーゴブリンになっても弱いものは弱い。

 おそらく腕っ節の強いゴブリンなら問題なく私を殴り殺せるだろう。

 そのぐらいしか強くならないのである。

 だがそれは、ひとつしか魔石を食べていないときの話だ。

 私は毎日のように魔石を食べ、知らぬうちに強くなっていたのである。

 そう、その力は、ゴブリン三人を同時に相手にできるほどに、

 恐ろしく微妙である。

 ゴブリンは五匹でかかってようやくオークと五分で戦えるモンスターだ。

 その弱さは底なしで、天井を知らない。

 それが三人力になったところで、「で?」と鼻で笑われるレベルである。

 まあ、それでも強いことは強いし、特殊な力も使えるには使える。

 そのころには私は、炎の力と、ゴブリンにしては怪力を持つ、ファイヤーパワーゴブリンになっていた。


 あるときである。

 私と何人かのゴブリンが外で狩をしていると、大きな狼に出会った。

 殺される。

 全員がそう思った。

 相手は私たちよりもはるかにでかい狼だったのだ。

 一匹しかいなかったが、そんなもの関係ない。

 でかいやつは強くてでかいのだ。

 絶対に殺されると思った。

 どうせ逃げても殺されるのだ。

 私たちはやけになって、戦うことにした。

 しゃにむに雄たけびを上げ、しゃにむに飛び掛った。

 ほとんどのゴブリンが前足でぶん殴られたり噛み付かれたりして吹っ飛ばされるなか、どこをどうしたのか、私は狼の背中にしがみつくことに成功したのだ。

 だが、だからどうなるものでもない。

 何せしがみつくのに夢中で武器を投げ出していたのだ。

 まさにゴブリンである。

 だが、このとき私は何をどうしたのか、必死ついでに炎を体に宿したのである。

 そう、あの熊の力だ。

 体に炎をともし、敵を威嚇、それで攻撃する力である。 

 ゴブリンである私がその力を使ったとしても、せいぜい体の表面に少しの火をともすだけで、相手を威嚇することなどできないはずであった。

 だが幸運にも、そのとき私は狼にしがみついていたのだ。

 狼は七転八倒し、燃え上がったのである。

 ちょうど首に近いあたりにしがみついていたのが、さらに幸運であった。

 狼は首を焼かれ、なんと絶命したのである。

 絶命した狼を囲み、私たちは思った。


「体から出る力って、しがみつけばすげぇつよいんじゃね?」


 そう、私たちは今までそのことに気がつかなかったのである。

 この日から、私たちの狩は変わった。

 体から炎や電気、激臭などを発するゴブリンが相手にしがみつき、弱らせることで狩を行うようになったのである。

 そうすることで、私たちは劇的に狩の効率を上げたのだ。

 幸いなことに、魔石は比較的簡単に手に入った。

 私たちが生きた餌になることで、集落の罠にいくらでも魔石を持ったモンスターがかかったのである。

 今にしても思えば、当時は村の人口もふえ、その分においが濃くなったことで、おびき寄せ効果も上がっていたのであろう。

 狩は成功することもあったが、失敗することもあった。

 しがみついたゴブリンが殺されてしまえば、その時点で狩パーティーは半壊の危機に陥るからである。

 しかし、私たちはゴブリンだ。

 増えることにかけては定評がある。

 たくさんの犠牲を出し、たくさんの犠牲の上に、私たちは狩の形を確立していった。

 今では安定して狩を行えるようになり、食料もみんなにいきわたっている。

 集落も手狭になり、二つ目の集落ができた。

 私はすでに数百を超える魔石を食べ、その力もだいぶ強くなっている。

 私はみんなから「スーパーファイヤーゴブリンレベル4」と呼ばれている。

 実にかっこいい名前ではないか。

 雷と炎をまとい勇猛果敢に敵にしがみつく私は、この集落の最高の戦士の名にふさわしいものであろう。

 私は、この集落の長になっている。

 いつかこの集落をもっと広げ、たくさんの獲物をとるのが私の夢だ。

 だが、大きくなりすぎた集落は、人間に破壊されてしまうと聞いたことがある。

 どうにか集落を守らなければならない。

 そのためには、やはりしがみ付き戦法を使えるゴブリンを増やすしかないだろう。

 しがみ付いた状態で力を使う戦術は、この集落必殺の狩の技なのだ。

 そんなことを考えていると、集落のものが私を呼びにやってきた。

 なんでも、外で行き倒れになったエルフがいるというのだ。

 もう死んでいるが、どうしようかと聞いてきた。

 私は急いで向かうことにする。

 エルフは凶暴な森の亜人種だ。

 木を切っているとすぐに襲い掛かってきて、「きをきるなんてどんでもない」とか言いながら私たちを虐殺するのだ。

 どうも私たちのビジュアルに嫉妬しているらしい。

 「醜い小鬼め!」とかいいながら魔法をけしかけてくるから、間違いない。

 私は早速みんなに指示を出し、そのエルフを食べることにした。

 エルフといえど、死ねば肉である。

 等しく食べることこそ、その死に報いることになるのだ。

 私はエルフに礼をとり、その持ち物を分捕ると、村の宝物庫にぶち込んでおいた。

 本などがあったが、私たちゴブリンは文字など読めないので、とりあえず溜めるだけ溜めてあるのだ。

 ふと見ると、エルフの体内に魔石があるのが見えた。

 これは族長である私が食べることになった。

 私は大きく口を開け、エルフの魔石を飲み込んだ。




 この瞬間、エルフ並みとはいかないまでも、人間レベルの知能と、さまざまな魔獣の力を取り込んだ「ウルトラハイパーファイヤーサンダーゴブリン」が生まれたのである。

 世界はまだ、このゴブリンの誕生を知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ウルトラハイパーファイヤーサンダーゴブリン……………
[一言] (((;´Д`)))がくぶる
[良い点] 最初の落とし穴も結構凶悪な作りだったんだろうなー。 どこまで名前が長くなるのか気になります。 [一言] 激臭のゴブリンは敵からしたらカメムシみたいな扱いなんでしょうか。 首に取り付くゴブリ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ