うごくこと。
頑張りすぎている人へ。
あるところに花が植えてあった。
花は日陰で、道のわきにあった。
ゆえに、なかなか育たず、茎も葉も貧相であった。もちろん、花でありながら花は咲いたことがない。
花には友達がいた。
夕方になると、一人の子供がいつもやってくる。
子供はいつもこう言う、「ここにいたら、おっきくなれないよ?」
花はいつもこう返す、「ここにいれば、君と話せるから。」
その子供は雨の日、風の日には来ない。
ある日、花に異変が起きた。根が動くようになったのだ。頑張れば、日の当たる所へ移動ができる。
夕方、花は子供に問うた。「動けるようになったのはどうしてかな?」
子供は答えた。「君がうごきたいって思ったからじゃない?」
花は驚いた。なぜなら、そう思ったことが少なからずあったからだ。
花はさらに問うた。「ここから移動しても良いのか?」
子供は沈黙し、しばらくの後に返す。「うごいてもうごかなくてもどっちでもいいけど、うごいたほうが元気になりそう!」
花は決意した。「動こう。」
その日の夜、移動が始まり、一晩かけて、日の当たる所へと至った。
翌日、花は後悔した。あまりに日が強いのだ。
次の日、さらに次の日と、まだ晴れが続く。花は萎れてきた。
花は思った。「戻りたい。」
しかしそれと同時に、「うごいたほうが元気になりそう」という言葉が浮かんできた。気力が宿ってくる。
花は耐えた。何日も耐えた。
いよいよ枯れそうになったある日の夕方。
ぽつり、ぽつりとしずくが落ちてきた。
そして、花が咲いた。