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52万5600分  作者: 間内りおん
2/4

秋の。金木犀

今回はとある秋の「僕」の記憶の話。

BLにジャンルは置いていますが、

性的描写は皆無(接吻くらい)です。

興味をもたれて読んで頂けたら幸いです。



「この匂い、好き」


久しぶりに逢う君を抱きしめると、

金木犀の香がした。

季節は秋。そう、やっと、秋。


「おいおい、匂いだけかよ」


知ってるくせに聞いてくる意地悪な君。


「知らなーい」


君は1年の季節、4回だけ、

僕の目の前にひょっこり現れる。


逢える時間は限られてるけれど、

7月7日、年に一度だけしか会えない、

織姫と彦星に比べると、

とても贅沢な事だ。


1年は365日、そう言ってしまうと

短く感じるから

僕は1年を52万5600分と言う。


そうすれば長い時間、

恋をしているように

感じられるから。


でもその中で、

逢える時間はほんの限られた時間。

君は何者でもない。季節だから、


いくら僕が52万5600分、

恋をしていようが、

君を感じていようが、

年にたった四回しか逢えないのは

やっぱり、とても寂しい。


そう、感じるのは

この甘く香る

金木犀の香りのせいだろうか。


春、夏、秋、冬。

僕は季節に恋をした。


秋の恋は、なんだか切なくて

胸が苦しくなる。


本当はずっとずっと

一緒に居たいのにそれは叶わない。


仕方がない。

恋をする相手が悪かったんだ。

でも、後悔はしていない。


織姫と彦星に比べたら…

なんて、また比べてしまう。


でもきっと彼らも僕らと同じ気持ち。

本当はずっと一緒に居たいはずなんだ。

ずっと。


「ねぇ?」


「うん?」


僕は抱きしめた体に力を入れる。

今、この時を感じたい。

今は離したくない。


「次は、いつ逢えるの?」


……本当は分かってる。

でも、確かめずにはいられないんだ。


「次は雪が降る季節かな」


「…うん、知ってた」


僕は笑った。


やっぱり…だよね。

だって彼は季節なんだもの。

周りにとっては空気のような存在。


でも、僕にとっては特別な存在なんだ。


「あのさ」


「なあに?」


今度は彼が僕に聞く。


「キス、していい?」と聞こえた時には

もう唇は重なっていた。


僕は、彼から香る甘い金木犀の香に

包まれながら目を閉じた。

とても幸せな瞬間。


「あまり、逢えないけどさ…

オレのこと絶対忘れないで…」


唇が離れて彼の不安そうな瞳と目が合う。


「嫌でも忘れないよ、この働き者め」


僕は笑ってみせた。

大丈夫。

52万5600分全ての時間、

僕はいつも君の傍にいるよ。

だから、君は安心して季節を届けて。


「働き者といえば、蟻達が最近怠けるんだ」


彼は、思いついたように

昨今の蟻事情を話し始めた。

僕の言葉に安心したのか饒舌だ。


「それは、女王蟻も大変だろうね」


「そうなんだ!俺、

女王の愚痴を聞くのも飽きたよ」


「蟻だって、

たまには怠けたい時だってあるよ

許してあげたら?」


「お前、女王の性格知らないから…」


「…君だってもっと怠けたっていいのに」


そんな僕の言葉を聞いて彼は僕の

頭をポンポンと優しく撫でた。

ありがとう。といってる様だった。


それから沢山沢山話をした。

季節ならではの話を沢山聞いた。

他愛もない話を沢山した。

君に逢えない時間を埋めるように。



次の日。金木犀の香も消え、

世界一働き者の彼の姿も消えた。

でも、不思議と淋しくはなかった。


だって、冬にはまた君と逢えるんだ。

雪の降る季節まで

僕は肌で君を感じながら

また逢えるのを楽しみに待っているから。

   

Next→Winter

次は冬の季節の「僕」の記憶。

次回もよろしければ見て頂けたのなら。

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