夏は。Love song,
BLにジャンルは置いておいても
過激な描写はありません。
優しい雰囲気を目指して書き記しました。
読んで頂けたら幸いです。
ミーン、ミーン、ミーン。
緑が覆い繁、暑い季節。
蝉達は次々と目を覚ます。
蝉は愛を得るために、
目覚めてすぐ愛を語りだす。
限られた時間、精一杯に。
それは、
人間には少々うるさく聞こえるんだけど、
そんな蝉の声を聞くと、
やっと夏がきたんだなぁ、と感じる。
そして、また君に逢えるんだ。
そう思うと、
少しうるさく聞こえる蝉の声も
僕には心地のよいメロディーに聞こえた。
蝉の声を聞きながら、
庭にある木の陰で昼寝をしていたら、
夏特有の湿気を含んだ生暖かい風が
僕の頬を優しく撫でた。
一瞬、気配が変わったのを感じた。
「俺も歌うかな、ラブソング。」
そっと目を開けると、
僕の隣にはずっと逢いたかった
君の姿があった。
「あ……」
「久しぶり、元気だった?」
「う、うん!」
久しぶりのはずなのに
久しぶりと感じないのは
1年365日、毎日君の存在を
感じられているからなのかな。
僕達は簡単な言葉を交わし、
君は僕の隣に寝転がった。
あまりにも突然に君が現れたものだから、
心の準備が出来てなくて、
心臓がドキドキいって治まらない。
「人間には解らないかもしれないけどさ、
蝉のラブソングはすごいんだぜ」
僕が何も話さないものだから
隣で寝転がってる彼が
ふとそんなことを言った。
彼には何でもお見通しなんだ。
だから、
蝉の声も風の声だって解るんだよね。
彼は季節。
何者でもない。透明な存在。
改めて彼という存在が
特別なんだと感じる。
もちろん、僕の中でも特別な存在。
それはいつの日だったか、
君に出会って好きになって、
ずっと変わらない大切な感情。
「確にすごそうだね。僕には
ミーンミーンってしか
聞こえなくて残念だけど」
「それは仕方ないさ、
俺だって彼等を理解するのに
時間がかかったからさ」
「え?そうなんだ」
てっきり君は何でも
お見通しなんだと思っていたから、
僕は少し驚いた。
「最初から何でも
分かる奴なんて居ないさ。
お前が思ってるほど、
俺はすごくないんだぜ?
少しずつ少しずつ理解していくんだ。」
彼は微笑みながら答える。
「それなら、僕たち人間も、
いつかは蝉の言葉が
解るようになるかな?」
もし、そうなったら夏には、
蝉達の甘い愛の言葉を聞きながら
過ごさなくちゃいけなくなるから、
もっと暑くなりそうだ。
「んー、それはどうかな?
蝉だって恥ずかしがり屋だからな、
あれでも精一杯隠してるつもりだし」
「そうなんだ、意外。
蝉って恥ずかしがり屋なんだね」
夏がこれ以上暑くなるのは勘弁だけど、
君の事を少しでも理解したかったから、
それは、それで残念だ。
「蝉の声は分からなくてもさ……
俺がお前のために、
蝉に負けないくらいの
ラブソング、
唄ってやってやろうか?」
君がそんなことをいうもんだから、
僕の体温はみるみる上昇。
このままじゃ熱中症だ。
「ミーン、ミーンって?」
僕は、恥ずかしいやら嬉しいやらで
そんな事を言ってしまう。
精一杯の照れ隠し。
「そ、ミーンミーンってね」
時々そうやって
彼は僕をからかって楽しんでる。
悔しいけど、僕はそれが嫌じゃない。
だけど、
僕も負けっぱなしって訳にはいかないから
反撃にででみる。
「ね、それじゃあ、わからないよ」
「お前なら、分かるよ」
そう言って、君は僕の唇にキスをしてくれた。
僕の完敗。
やっぱり君には敵わない。
「……確かに、
蝉に負けないくらいのラブソングだね」
「もう、メロメロだろ?」
「メロメロって…」
二人で笑いあってる間にも、
蝉のラブソングは
止まることなく続いていた。
僕には蝉達が何を言ってるのか
分からないけれど、
君のラブソングは最強だった。
だから、
僕も君のために歌うよ、
蝉よりも君よりも負けない、
ラブソングを。
そうだなぁ…取り敢えずは、
「ミーンミーン」ってね。
Next→Autumn
次は秋の季節の「僕」の記憶。
よかったら次もよろしくお願いします。