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有恋歌  作者: 三木こう
吸血鬼が人を殺すわけではない
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六歌(8)

「ほーほー、それで、それで」

「なんでそんな楽しそうなんだよ、お前……」

 河川敷でジンと名乗る殺人鬼と出会った次の日。アパートで惰眠を貪った後、夕方頃事務所に訪れると学校帰りの風見がいたので、早速昨日のことを相談してみた。

 すっきりと寝たおかげで意識ははっきりしていたが、ジンという男のことを考えると、悠長に構えている暇はないように思えた。今日も体調不良で寝込んでいる恋歌さんを除いて、社長やクロネコさんにも一報入れておいたが、なにせ相手からの指定は風見の通う『山ノ宮女子高』。神様であるところの制服少女に協力を頼まない手はない。

「ふむふむ、それでわっぱ、ヌシ自身はどうしたいんじゃ? それが肝心だろうに」

 やたらめったら楽しそうに口をひん曲げた風見は、リビングのイスで制服のスカートから伸びる生足を、振り子のようにぶらぶらさせながら台所で夕食の準備をする僕の方を向いた。

「どうするってそりゃあ、捕まえないとさ。殺人犯だし」

「そんな世間一般の人間みたいな返答など、意味がないわ。そういうことではなくてな。わっぱ、お前は『あいつ』と再び出会った時、どうしたのか? と訊いておる。できるできないじゃない、何を真っ先に殺るのかということじゃ」

 語尾から伝わるニュアンスは、僕がアイツと戦うことを予見しているような発音だった。

「できれば、自分の手で殺りたいっていうのはある。なんていうか……」

「男の意地? という奴かの。わちきが出しゃばれば、殺人鬼の一つや二つどうってことないが、ふむふむ恋歌が不安定になる原因を作った奴を許せぬというのは、中々どうして見上げた心意気じゃと思うぞ」

 つまるところ、アイツを止めるために誰がどう対処するのか。

 事が大事になりそうなら、きっと今までのように社長や風見のような反則級が助けてくれる。そういう意味では、安心感もあるけれど、だからといって彼女達にマル投げできるほど、僕は冷静ではなかったらしい。

「殺るよ。なんていうか、殺らないといけない気がするんだ」

 昨日すくんで動けなかったのはどこの誰なのか。

 ろくに人を殺してきていない初心者が、経験豊富な連続殺人犯に挑む。それが、そこそこ危険なことだっていうのはわかっている。

 けれど、

「恋歌さんのことは、僕が、守りたいし……ね……」

 小声で決意を呟きながら、ヒーターの電源を止め、炒め終えたソーセージとベーコンのペペロンチーノを皿に盛り付ける。

 まあジンと名乗る奴の行為がトリガーとなって、間接的に恋歌さんのトラウマを刺激しているだけなんだけど。そういう意味では僕のこの思いはジンにとっては身も蓋もない勝手な言い分なのかもしれない。

「ん? なんか言ったか?」

「いや、別に」

 微かに聞こえたのか、風見が首をかしげこちらを覗き込んできた。

「まあよい、わちきは腹が減った。ぱすたは女子高生と中々相性が良いらしい、楽しみにしとったんじゃ」

 食器洗い機からマイ箸を取り出し、風見は早速目の前のペペロンチーノをすすり始めた。郷に入っては郷に従えという感じで、僕としてはフォークの使用を前々から進めてはいるが、日本の神様としては今目の前で、箸を使ってそばやうどんのようにすする光景のほうが正しいのかもしれない。

「ま、わちきにまかしておけ。こういう時は何をするか、相場は決まっておる」

 ウマイと一言感想を告げ、コップに注いだ水を一口。風見は再びニタリと僕に笑いかける。

「恋歌にはわちきも世話になっておる。有理が守るというのなら、それに越したことはないの」

「聞こえてんじゃねぇか、おい」

 つい荒れた言葉で突っ込んでしまう。

「となれば、話は簡単じゃ。修行じゃ、修行。こういう時はそうするものだと、相場は決まっておる」

「それはもしかすると、最近読んだ漫画に影響されたんじゃないよな」

 一抹の不安を覚えつつ、フォークを使ってペペロンチーノを口に運ぶ。

 なにはともあれ、神様が協力してくれるというのだから、期待してみよう。

「かいほー! だの、カクセー! だの、期待しとるからの。頑張ってわちきに着いて来るのじゃ」

 キラキラと目を輝かせる女子高生を見ていると、どこまでも不安になってはくるけれど……。

一ヶ月も空いてしまった……だと……。

すいません、皆様お久しぶりです。


大学の修士論文という、卒業のための作業に没頭しておりました。思いのほかなんの余裕もない状態で……ひぃひぃ言うとりましたが、なんとか終了。


4月始めまで自堕落タイムに突入です。

ええ、今度こそ安定更新を目指しますよ。よろしければ、今後ともお付き合いのほど、よろしくお願い致します。

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