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有恋歌  作者: 三木こう
女子高は神様が通うような所ではない
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五歌(12)

「女子高ねぇ……、もう生徒さんも帰っちゃったからあんまりありがたみないけど」

 職員室で鍵を借りて、本日二度目となる音楽室に向かい廊下を歩く。

 日が暮れ始め生徒たちの姿がなくなった校舎内はどこか寂しくて、女子高だなんて甘い言葉が引っ付いていても、良い香りがするわけでもなくなんとなく幻想を打ち砕かれたような気分になった。

「音楽室にもう一度来るってことは、ここに何かあるんだろうなぁ」

 呟きながら状況を整理する。午前中に音楽室には一度情報収集にやってきた、その場では他愛のない話に終始していたけれど、どうやら恋歌さんには音楽室という場所を確認する狙いもあったようだ。

 音楽室での話、保健室での話……それぞれを頭の中で改めて思い出す。まず切り裂き女、というのが一番やっかいそうで生徒への実害がある怪談だ。

 音楽室でも被害があったらしく、吹奏楽の部員の人たちもやられたっていうのにきゃぴきゃぴと騒ぎながら楽しそうに話していた。察するに、この学校では怪談の出来事が『よくある事』になっているんだろう。自分一人だけなら物騒な事件も、皆であたれば怖くない。

 むしろ、そんな非日常体験の共有がちょっとした学生生活の刺激やコミュニケーションに一役かっていてますます止まらない始末。

 そしてさらに、出回り、拡散し、浸透した七つの怪談。それらは隠れ蓑でもあり、超常的な現象が力を得るための土台でもある。

 保健室の先生が、人体模型だのトレイの妖怪だの最近巷を賑わしているらしい吸血鬼事件だのを楽しそうに話していたのを思い出す。美形な吸血鬼が人を襲うだの、一番奥のトイレには何かがいるだの、夜の人体模型はすっごい速いだの、眉唾ものの話ばかりなのに、ああやって数人でワイワイと話している分には、そんな人外な奴らがいてもよさそうな気がしてくるから不思議なものだ。

「あやしいのはベートーベンの絵画の怪談とかかな」

 肩がけのショルダーバックに無理やり突っ込んでいた怪談の資料を取り出し確認する。誰もいない音楽室でふと絵画を見るとベートーベンの瞳が動いていてこちらを見ていた。とかとか。

 なんとも勘違いっぽい怪談だった。そもそも歴史上の大偉人様がわざわざ動いてくれているんだから、感謝ぐらいしてもいい気さえする。特に音楽で成功したい人とかさ、御利益あるよ多分。

「恋歌さんお待たせしました」

 どうにか頭の中がある程度まとまってきた所で音楽室に着いてしまった。もっと時間をかけて考えて推理なんてそれっぽいこともしてみたかったが、所詮僕は恋歌さんの助手、事件解決を優先してプロフェッショナルらしくフォローに回ろうと、これまたなんだかそれっぽいことを思ってみたりした。

「ご苦労様、有理君。私の方も準備万端よ、車から持ってきたからね。あんまり遅かったら、久々に頑張って不法侵入しちゃおうかと思ってたところよ」

「それ、たしか探偵七つ道具的な奴でしたっけ……」

 恋歌さんはたまに依頼で使っている探偵七つ道具的なもの(ピッキ◯グや改造スタ◯ガンなんてイリーガルな物も含まれる多分探偵とか関係ない代物たち)が入っているバックパックを背負っていた。

「さ、名探偵、恋歌お姉さんの華麗なる推理をお披露目しよう」

 とても自信ありげな表情で意気込む恋歌さんを見て、どうせ名推理なんかないんだろうなぁと嘆息しながら、僕は音楽室のカギを開けた。

現在広島地方では雨です。


最近休日は雨がデフォルトな気がしてならない。

先日はカレーをつくったので、今日はキムチ鍋を作りましょう。


なんか、最近料理の事しかあとがきで話してない気がするぜ……。

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