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有恋歌  作者: 三木こう
女子高は神様が通うような所ではない
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五歌(4)

 車を止めて、でかい敷地内をキョロキョロしながら進む。下駄箱へと向かい歩く最中、部活動か何かで夏休み中だというのに朝から登校する女の子たちの姿が見えた。

 女子高っていいものだなぁ、なんて無表情で喜びながら下駄箱をくぐり来客用のスリッパを拝借していると、こちらの到着を知っていたのか、すぐさま若い女の人がやって来た。

「あなたが、東雲風見さんね。9月からよろしく、あなたの編入する2年百合組担任の高梨です」

 綺麗にセットされたボブカットに小振りな顔。清楚な服装に、肌寒いのかお嬢様みたいな手袋をしたお姉さんが僕らを出迎えた。

 いかにも女子高、女子大学を経て純粋培養された箱入り娘っていうのを連想してしまい、こういう人がお嬢様私立女子高の先生をやっているんだなぁと、まじまじと見てしまった。

「保護者の方もわざわざご足労くださりありがとうございますね。たいした話は出来ませんが、校内の雰囲気だけでも体験して行ってください」

 応接室まで案内するとのことなので、担任の高梨先生の後を着いて行く。女子高初体験の僕としては、ついつい校内をキョロキョロしてしまう。

「皆さんはご親戚かなにかですか?」

「ええそんなところです。田舎の親戚がこの子に都会の生活を教えたいということで、今は私の家で面倒を見ているというわけですわ」

「僕はこいつの兄貴分みたいなもんで、一応大学生です」

 訊ねられる前に、先手を打って釘を差しておいた。

「そうですか。ご両親とは離れているということで、少し心配していたのですが、皆さんのような方たちが周りにいれば安心ですね」

「ふむ、わちきも感謝はしておるぞ……一応」

 社交辞令なのか、けれど嫌味のない笑顔で話す高梨さんに、風見がドヤ顔で言葉を返した。

「風見さんも面白い子みたいですね。今から新学期が楽しみです」

 面白い子というよりは、ちょっと頭の残念な子に分類されそうなのが気がかりだ。特に学校という空間では……、まあいじめられるなんてことは万が一にもありえないだろうけど。

「さて、ここが応接室です。あっ、風見さん、すいませんがここに座ってちょっと待っていてもらえませんか。保護者の方に少し話があるので」

「うお、ソファーがふかふかじゃ。こいつは気持ちいい」

 高級そうなソファーやら、芸術品が置かれた応接間に早くも興味津々なのか、風見は楽しそうに室内に入っていく。

「すいません、お二人には……廊下で申し訳ありませんが、少しお話がありまして」

「なんでしょうか?」

 突然の事態に戸惑う僕の横で恋歌さんが爽やかに笑顔を浮かべ、会話を続ける。

「お二人はそのオカルト専門の何でも屋、みたいなことをされてたりしませんか?」

「ええ、そう思っていただいて問題ありませんが、なんでまたご存知で?」

「実は私のクラスに宮城霞美さんという生徒がいまして……顧問をしている華道部の部員でもあるんですが。彼女の話を聴いて、もしや、と思っていたんですが、やっぱりそうでしたか!」

 高梨さんが、少し表情を崩し、先生の顔というよりは一人の人間として嬉しそうに笑う。

「本当にありがとうございます。彼女、学校を休みがちだったのですが、一学期の終わり頃からきちんと来てくれて……お二人にはなんて感謝していいものか」

「いえいえ、そんな先生にまで感謝されるなんて……」

 霞美さん、といえば春の終わり頃に依頼で関わったポルターガイスト現象を起こしていた女の子だったと記憶している。

「あなたが噂の有理君ですよね。恋歌さんのことは、風見さんの保護者資料で拝見して、もしやと思った程度ですが、あなたのことはすぐにわかりましたよ。霞美さんが話す特徴通り、ほんとに可愛らしい容姿で」

「それはそれは、光栄ですね。噂してくれてるなんて」

 感謝してもらえるのは嬉しいけれど、霞美さんからは別の感情まで向けられている気がして、半ば返答が投げやりになってしまった。そもそも可愛いと言われても、嬉しくともなんともない。

 隣では恋歌さんが、あらあらうふふ、みたいな顔をして楽しそうに微笑んでいた。

「お二人に会えてよかったです。さ、まずは風見さんの編入案内などを……」

 そして、少し小声になりながら、高梨さんが言葉を続ける。

「その後でいいので、少し時間をいただけないでしょうか? 山ノ宮からの正式な依頼ということになるかと思いますが、少し困ったことがありまして」

 意外な言葉に驚きつつ、恋歌さんへとアイコンタクトを送る。

 そしてお互い、ニカリと笑い頷いた。

「わかりました。是非、ご相談ください」

 風見の付き添いだけでは退屈しそうだと思っていた所に、これ幸いとやってきた興味深い話。なんだか面白そうなことになってきたと、ついワクワクとしている自分がいた。

なにかを言うつもりだったのに、なんだっけかなー。

とか思いながらのあとがき。


とくに明記してませんが、

有理君は本名で、苗字があります。

恋歌さんの恋歌というのは、称号というか、芸名とかそんなものに近いです。でも、正式な書類でもそっちで通るので、今はそれが本名みたいなもんなんでしょう。

なので苗字もあるのでしょう。


考えてませんが。



……いえ、当初からそういう予定ダタンデスヨ。

まあ、

社長とか

クロネコさん、

とかそういうニックネームで通していきたいなーと思っていたのです。

なのでメインの二人も、苗字で呼ぶことはおそらくないなと、予想中です。

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