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有恋歌  作者: 三木こう
女子高は神様が通うような所ではない
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五歌(3)

「というわけで、本日は女子高に行きます、女子高」

 時刻は朝の9時過ぎ、通勤ラッシュが終わり空きだした大通りを車の助手席からぼーっと眺めてみたりする。

「唐突なのはいつものことなんで別に驚きませんが……車、やっと戻ってきたんですね」  

「そうなのよ、そうなのよ。私の愛しのカプチーノちゃん。パワーアップして復活よ」

 以前の依頼で銃撃戦に巻き込まれ名誉の負傷退場を決め込んでいた、恋歌さん溺愛の軽スポーツ自動車。どうやらつい最近、修理屋から戻ってきたようだ。

「ふむ、この車はわちきも好きじゃぞ。ちと後部座席が狭いがな」

「文句言うんじゃないの、後部座席なんて無茶ぶりもいいとこだったんだけど……。いやー整備屋のおじさんに感謝しないとね、さすが社長の知り合い、確かな腕だったわ」

 以前は二人乗りだったこの車も、これからはなんとかギリギリ四人乗り。助手席から後ろを見ると、無理やりこさえたような小さなスペースに、窮屈そうな座席が用意されていた。

「ケツ、ケツが痛いわ……。なんじゃわっぱ、ジロジロ見よって」

「いや、そういう格好してると、風見も立派な女子高生に見えるなってさ」

 お尻を押さえながら、狭いシートに不機嫌そうに座る風見の姿は上品なブレザーの制服姿。僕も大学に入ってから電車や街中で時々見かけていたが、なるほどこれがかの女子高のだったのか。

「山ノ宮女子高等学校。いいとこのお嬢さんらも通うような、歴史ある学校……とかいうのらしいわ。周りは山しかないけど。有理君も知ってるんでしょ?」

「はい、大学の友達なんかがよく騒いでます。秋になるとあそこの学祭の招待券が高額で取り引きされたり……」

「えらくベタなことしてんのねぇ。今時招待制の学園祭ってのもどうかと思うけど」

 大学の友達の台詞を借りるなら、山ノ宮女子高はレベルの高い可愛い子も多くて、しかも制服が可愛いときている。学園祭という名目で、普段踏み入ることのない彼の地に招かれた者たちは皆一様に、まさにあそこは桃源郷、などと供述し男どもに羨ましがられるというのが例年の決まりごとらしかった。

「ほうほう、そいつはいい事を聞いた。わっぱ、用意してやるから学園祭の招待状……言い値で買えよ。主にわちきのお小遣いのために」

「自称神様がえらく小市民的なことを言ってくれるなぁ……」

 半ば呆れつつ言葉を返す。

「だってなぁ、恋歌は思いの外厳しいし、ここじゃああのど田舎のように貢物やらお賽銭も期待できんからの」

「私だって、最初は戸惑いもしたけれど……。神様たって、中身は『コレ』なんだものね。それにあなたの父上からも、ついでに間接的にウチの社長からも、くれぐれも宜しくされてんだから半端はできないわよ」

「っち、こんな予定ではなかったんじゃがなぁ。もっとこー、こちらでも崇め奉ってもらうつもりだったんじゃが」

 僕らとしては、『こんなの』が神様でありがたかった部分も大きい。

 自分とは違う、圧倒的な力を持っている存在でも、話が出来る見た目に同期した歳相応の反応を見せてくれたおかげで、今となっては僕も恋歌さんも風見への遠慮は完璧なほどになくなっていた。

「風見もついに女子高生デビューですかぁ」

「そうねぇ、嬉しいやら恥ずかしいやら。今日は転入手続きだけだってのになんだか私までそわそわしてきたわ」

 隣でハンドルを握る恋歌さんの方を見ると、なんだか緊張したように頬を硬直させていた。どうやら、タイトな黒のスーツにストッキングという今日の格好は正装ということだったらしい。

 一方で僕は、適当に自宅から着てきたジーンズにパーカーなんてラフな格好だけど、よかったんだろうか。

「ところで、この場合僕は風見の何として学校に行けばいいんですかね……」

「私は名目上保護者になってて、暇そうにしてた有理君を拉致した張本人だけど……どうしよ。さすがに家族ってわけにもいかないし。親戚、従兄弟とか?」

「その場合、どっちが上で、どっちが下なんですかね?」

 無表情で恋歌さんに訊いてみた。

「さ、さぁ? どうなのかしらー」

 棒読み+愛想笑いで返された。僕が年齢に対して成長しないこの見てくれを気にしているのを知っている恋歌さんは、この手の話題になると焦ったような態度になる。

 曰く、そういう時の僕は怖いらしい、オーラとかが。

「もちろんわっぱが下に決まっとろうが。内面も、外見もあきらかにわちきの方が成熟しとるからの」

 人よりも遅い時の流れで生きているらしい神様であるところの風見は自信満々にそう答えを出した。

 長い年月を経て、どうやらこいつは気を使ったり、他の人間に配慮するなんてことを学んでこなかったらしい。

 けれどまあ、そんなところが人間らしくて、庶民派の神様というのも悪くないと思えてしまう。

「どの口が言うんだか……。まぁ、お前が僕より成熟してるってのは認めるけどさ。いや、冷静さでは僕のほうが上かな……なんだか負けを認めたくないし」

 ついつい口では悪態をついてしまうけど。

 そういう意味では僕もまだまだ子供っぽいのだろう。

色々設定不足が露呈してきた今日この頃。


うーん、事務所とか今書いたのと、昔書いたので、情報が違ってる場所とかが現れたりしてきます。

気づいた所はその都度修正。

プロットとか設定とかあんまり書かないんですが……。こういうのは長期連載になるとやっぱり困るのですね。


なんか矛盾があったらごめんなさい(汗



追記:

カプチーノという軽自動車かつ、スポーツカーな車は実在していて、実際は四人乗りに改造するのはものすごーく大変らしいです。っていうかほぼ無理くさい……。

トランク潰したり、ボディをちょっといじったりだとか……。あんま詳しくないんですがw


恋歌さんのは、神の腕を持った整備工が、運良く手元にあったパーツを使い、カプチーノの元の外観を損なわずに、奇跡的にトランクを潰すことで後部座席の増設に成功した。

ぐらいの設定にしておきましょう。

きっと有り得ないぐらい狭いです。後部座席は多分車検ぎりぎりの安全性に違いない。

うん。


ファンタジーですから(逃げ口上)

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