五歌(2)
思えばネタふりは明里さんの事件解決時には終了していた。
道中、道端でボケーッと作戦を練っていた神様に、僕たちが道を尋ねたのはまったくの偶然。下界で起こる珍妙な事件に出しゃばり、そろそろ解決してやろうかなと思っていた神様と、作戦決行日時が同じだったのも偶然。
それを面白く思った神様が気まぐれを起こしたのは……おそらく、僕らが利用されただけなんだろう。
「あの社長が一目置くほどのVIP扱い……。そもそも国に天然記念物扱いだもんな、あいつ、こんなとこいていいのかよ、ほんとに」
件の神様をきちんと形容する術を僕は持っていない。
けれど、今までの情報を総括するに、彼女たち神様は天然記念物のようなもので、少人数ながら僕たちただの人間の生活を見守ってくれているらしかった。
オカルト方面の事象に首を突っ込み、『吸血鬼』や『異能力』はただの病気だと言いはる僕たちにとっては嘘のようなほんとの話。
「恋歌さーん、起きてますか?」
短く急な階段を上がり寝室へと足を運ぶ。
平屋の二階というか、屋根裏部屋のような小さなスペースに、恋歌さんの寝室と、客間が並んでいる。二週間ほど前は空き部屋だった客間には風見と書かれた可愛らしいフォントの看板がぶら下げられていた。
「起きてますか? もう朝ですよ」
軽くノックをしてから勝手に侵入。昨日も仕事で遅かったのか、恋歌さんは完全オフモードで夏にしては分厚い布団の中で丸まっていた。
「またクーラーつけっぱなしですか? まあいいですけど、電気代的には間違ってますが……」
恋歌さんの部屋には年中コタツが出しっ放しだった。いわく、真夏にクーラーで冷やした部屋の中、コタツに温まってアイスなんかを食べるのが至福の一時らしい。
夏の暑さも薄れてきたのか、冷房がガンガン効いた部屋は肌寒いほどだ。
「ん? もう、朝なのね……」
「今日なんか用事あるんですよね。風見なら先に一階で朝御飯食べてますよ」
布団越しに肩を揺らすと、もっさりした動作で恋歌さんが起き上がる。恋歌さんはまだ眠いのか、目を擦りながら僕の姿を確認するとゆっくりと口を開いた。
「有理君がこの時間にいるってことは……じゅく、じゅく?」
「半熟のいい感じのが出来ましたよ。冷めないうちに」
カーテンを開けながら、僕が答えるやいなや、恋歌さんは素早い動作で身支度を整え、一階へと下りて行った。
「相変わらず、一手間かかった朝食は恋歌さんへの一番の目覚ましなんですね」
なんて呟きながら嘆息してみたりする。
食い扶持が一人増えたことだし、料理のレパートリーを増やすというのも、悪くないかもしれない。
更新速度がぁ……。がぁ……。
忍びねぇ、忍びねぇなあ。
週一更新だけは守っていきたい今日この頃。
そんなわけで、新章突入。まだ話が動き出してないですが……今回は戦闘やら敵もいないゆったり仕様の予定です。