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有恋歌  作者: 三木こう
女子高は神様が通うような所ではない
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五歌(1)

 女子高なんてあんなもん、魔窟よ魔窟。


「お邪魔しまーす」

 適当に頭を下げながら、事務所の玄関を開ける。合鍵の所持を許された、僕にとっての夏休みの習慣の一つ。朝、目が覚めると同時に『超常現象研究所』という名前だけは大層な建物へと侵入を開始する。

 昨日は大学の図書館で借りたい本があったので、事務所に泊まらず、大学の傍のアパートに一度戻りそのまま寝てしまった。大好きな人と一つ屋根の下で一夜を過ごすというのは慣れきった今でも大変魅力的だったが、残念ながら決定的な行為は一度も起きないままだ。もっとも、完璧に『大人の』身体になりきれていない僕では起こしようもないのだけど……。

「今日は朝ごはん作りますね。朝早くこれたので」

 24時間営業のスーパーでこさえた新鮮食材を冷蔵庫に詰めながら、そんなことを呟いてみる。当然恋歌さんには聞こえない。だって、まだ寝てるから。

「朝もはよから御苦労なこったの。すまんがいつも通り、わちきのは醤油で味付けしてたも」

 しかし、今日は珍しく返事が返ってきてしまった。

「いたのかよ……」

「いちゃ悪いか、わっぱ」

 意地悪な笑みを浮かべて、台所横の長机からニタニタとこちらを見るのは東雲風見。つい二週間程前から加わった、この家の新たな住人だ。

 今ではすっかり我社の一員……いや、最初っからこの場所を我が物顔で闊歩し、遠慮なんてものは微塵もなかった。そりゃ生活に馴染むのも無駄に早くなるわけだ。

「ここにくるまで洋食など数えるほどしか口にしたことがなかったが。ふむ、これこそが見聞を広めるということだな。親父が言うとった通り、神たるもの下々の生活を知っておかねばならんからの」

 などと大層な言い訳を述べながらも、椅子に座り嬉々として朝食の出来上がりを待つ風見。見た目は世間一般の女子高生ぐらいだというのに、この態度と言葉遣い。

 自称ではなく、相手は認めたくはないが本物の神様、だからこんな性格になるのも仕方がないと、小さく溜息をつく。

「へい、和風ソースで味付けしたさっぱりオムレツに付け合わせのサラダでございます。あと、パンは自分で焼けよ、いいかげん」

「わっぱの癖に生意気な……。まあ良い、有理は中々良い仕事をしよるからな。特別にわちきも働いてやろうではないか」

 小気味良く、くるくると回転して洒落た朝食への期待を表現しながら、風見は食パンを焼きに席をたつ。まったく、調子の良い奴だ。

「トースターというのも便利だの。パンを焼くための機械とはひどく限定的な気がしておったが、こいつはオールマイティー意外となんでもこなしてくれる。有理がおらぬ時の食事も、こいつがおれば乗り越えられるというものだ」

 目を輝かせ楽しそうにトースターのつまみを回す風見の姿を見ていると、少なくとも僕にとってはただの女学生にしか映らない。

 そりゃあ最初は、相手は神様だと怯えたり、敬ったりもしてみたが……、今となっては遠い過去の出来事のようだった。


というわけでいわゆる新章突入。

この言葉を使うとそこはかとなく打ち切り臭が漂います……。


例のごとく見切り発進。

うん……なんとかなるよね。

できれば週末連休中にもう一回更新する予定です。

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