表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

向日葵



23の歳。



アタシは夜の、


ススキノにいた。



それなりに、


大きなハコを持つ店の、


ナンバークラス。



情報誌の表紙も、


何度か飾った。



それなりの人気に、


それなりの知名度。



そして、


それなりの収入。



毎日が、


店中心。



というより、


酒中心の生活。


苦笑



同伴して出勤。


アフターして帰宅。



同じように繰り返される、


さしたる変わりも、


感動もない毎日。





札幌の冬は、


とても厳しい。



その年は特に、


毎日のように雪が降り、


街はすっかり白一色。



そんな2月のある日、



いつものように、


20時前に店に入ったアタシを、



呼び止めた三十路のメタボ。




アタシの勤める店の、


マネージャーだ。


(以後、「マネ」で表記。)



「海、ちょっといいか?」





言われるがままに、


彼の側へ近づくと、



彼はアタシの肩に、


手を回して言った。



「凄えなオマエ!」



???



意味がわからん。



「は?


何が?」



「あ、いや…


ゴメン、やっぱ何でもない!」



ニヤニヤしながら、


そう言う彼を、



訝しい目で見るアタシ。



その視線から逃げるように、



「イヤイヤ、気にすんな!


ま!!


今日も頑張って行こう!」



そう言って、


アタシの肩をポンと叩いた後、


足早に彼はホールへと出て行った。



「何だアイツ?


マジ意味わかんねーし?」



気にすんなってオマエ、


気になるじゃん!




そんなモヤモヤを抱えたまま、


アタシもホールへ出る。



どう考えても怪し過ぎる。


勤務中もしばらくずっと、


マネの態度が気にかかっていたが、



夜が更けるにつれ、


酒の量も増えて行き、



当然酔いもそれに、


比例してゆく。



仕事を終えて帰る頃、


そんなコトはもう、



頭の片隅にも無かった。



いつものように、


酔っ払い、



いつものように、


帰路につき、



いつものように、


夕方起きて、



いつものように、


出勤する。



何ら変わりのない、


平凡な1日。


に、





なるはずだった、


あの日…





そう。





店に、


着くまでは。





その日は同伴もなく、



美容室を出て、


真っ直ぐ店へと向かった。





今日もまた、


昼過ぎからずっと、


雪が降り続いている、



真冬のススキノ。



ベルサーチの雪を払い、


エレベーターへと乗り込む。



今日は、


誰が来るんだっけ・・・



確かそんなコトを考えながら、


店のドアを開けたアタシ。





え…?





アタシの店は、


確かモノトーン。



店内には、


白と黒の、


2色しかない。



だから名前も、



『クラブ・ゼブラ』



のハズ。



しかし今、


アタシの目には、



眩しい程の、


黄色が映る。





???





え?


店、


間違えたかぁ???





反射的に慌ててドアを閉め、


店名を確認する。



が、



やはり、


此処に間違いはない。





知らない間、


といっても、



日曜の僅か1日の店休で、


まさかの改装リニューアル?


そんなコト、


一言も聞いてナイけどな~?



ま、いいや。



とにかくドアを開け、


もう一度店内へ。



モノトーンの配色が、


最大のウリだったハズの店内には、





壁、床、天井…





とにかく、


溢れんばかりの向日葵が、





見事に咲き誇っていた…





「うわ~…


何コレ…


マジスゲ~…!」





独り言には大きな声で呟いた後、



周りをキョロキョロ、


見渡しながら歩いていると、



カナが向こうから、


ダッシュで駆けて来る。





ドン!!





勢い良く体当たりをかまし、


よろめ驚くアタシにこう言った。



「ヤルね~海!!」



は?



「ちょっちょっ!!


何?何が?


何の話だよ!?」



既にアタマの中は、


?でいっぱい。



「え?聞いてナイの?


この向日葵、


アンタにらしいよ?


マネが言ってた」



ふ~ん、


アタシにか~。



って、





は?


え??


ええ???


エエエエエ!!!!????






「はあ?


アタシに?


マジで?


誰から?」



マシンガンのように、


カナを質問責めするが、



カナは冷たく言い放つ。



「私に聞かれても、


知らねーし!!


つーかマネに聞けば?」



なるほどそうだ。


あの男か…





あ…!!…





アタシの脳裏に、


一昨日のマネが浮かぶ。



あの日、


何か含みのあったマネの態度が、


コレだったに違いない。





絶対そうだ。





事情聴取せねば!!






直ちにアタシは、


マネを全国指名手配し、



確保に向けて、


動き出した。





「被疑者確保!」






指名手配のその男は、


開店準備に勤しんでいた。



挨拶もナシに、


直球をぶつけるアタシ。



「ねぇ!!誰から?」



マネはとても、


頭がいい。



こういう時わざわざ、


「何が?」


などとは聞かない人。



スーツの内ポケットから、


取り出した一枚のカードを、



「ホレ」



そう言ってアタシに渡す。



薄いブルーがかった、


そのカードを開くとそこには、




【海サンへ。


ありがとう。


藤城 暁海】





とだけある。





???





一生懸命頑張って、


出来の悪いアタマを、


フル回転させても、



記憶の中に、


この名前の該当者は無い。





誰だ???





そんなアタシを見て、


マネが言った。



「実は先週、


社長から電話があってさ」



「え?社長から?」



「うん。


ビックリしたよ~。


『日曜に花屋が行くから』


なんていきなり言われてさ。


おかげで昨日は休日出勤!!


まあでも社長の言うコト、


聞かないワケにいかないし…」



「社長に電話してみる!!」



まだブツブツと、


独り喋っているマネを放置して、




アタシは裏へと急ぎ、


社長の番号にダイヤルする。





「はい、大村で~す」



「もしもし海です。


おはようございます」



「おお、海チャ~ン!


もう見た?」



「はい!!


最初店間違えたかと思って、


ビックリしました。



マネージャーに聞いたら、


私にだと言うので…」



「ハハハハ!!そうだよね~、


ビックリするよね普通~!


で、一体誰からだってコトかな?」



「あ、はい…


つまんないコトで電話して、


スイマセン。


ですがどうしても、


気になってしまって…」



「いいよいいよ。


気になるよね~、


いきなりあんなコトされたらさ~、ハハハハ!


藤城ってのは、


俺の幼なじみなんだ。


海チャンに今言えるのは~、


それだけ!!


じゃ、今日も頑張ってね!」



ツーッ…

ツーッ…

ツーッ…





信じられない…





とにかく、


信じられない。





社長の幼なじみ?





そんなヒトがアタシに、


ありがとう?





何でありがとう?


何がありがとう?





誕生日でもなんでもない、


ましてや逢ったコトもない、





アタシの為に。





何故、


コレだけの向日葵を?





一体、


どんな人?





てかコレ、


いくらかかってんの?





アタシの少ない脳みそは、


様々な???で、



もう、


パンク寸前。






藤城 暁海





アナタは一体…


誰???






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ