プロローグ
始めて連載に挑みます。
短編も最近音沙汰なしだったので、不安ちゃあ不安だけど一応プロットは出来てるんで最後まで書き終える予定です。
文章力が相変わらず低いですが、ゆっくりゆったりとした目で見ていってください。
カンッ
乾いた空に乾いた音が響く。転がっていただけの空き缶は、今はただ宙に舞う。
蹴った当人は、落ちた先を気にすることなく通りすぎた。
「いたっ!!」
決して聞こえないだろう小さな声は、川の流れる音にかき消される。
あまり大きくないその川の土手の下は手入れの行き届いていない無法地帯だ。
だから、空き缶が蹴り入れられたからといって誰かの目を引くわけでもない。
まして、それが何かに当たったなどと考えられるはずもない。
「いったいなー。ったく、これで今日もまた怪我したわけだ」
見れば、草の陰で頭を抑えてうずくまる何かがいた。
「ついてない。ついてない。あーー、今日もまたついてない」
幼い声に幼い容姿。少女だと判断できる。しかし、少し普通とは違った。
半透明。
その薄く透き通った体は、本来この世にいるべきでない存在だ。
服装は今の時代とは吊り合わず少し古めかしい。
そして、背中には大きなかご。
「しかし、毎日毎日よくもまあ、こんなにゴミがでるもんだ」
さっきの空き缶を手に取り、後ろのかごに投げ入れる。
その作業はよどみなく、淡々と行われる。
また、一つゴミを拾ってかごにいれた。
「神様もいったい何をお考えなんだ? こんな私にゴミ掃除しろだなんて。そのせいで・・・毎日怪我するし。ゴミはなくならないし。拾っても拾ってもなくならない。時間ばっかりかかるだけで、もう何年やってるかわかんないし」
文句を言いながら、ガサガサと草をかき分けて前に進む。
また一つゴミを拾った。
「それに・・・、誰かが捨てたゴミを拾うなんて・・・。ここに捨てるぐらいなら、ゴミを作るなってんだ。そのせいで、ずっと迷惑してんだぞ。本当ならここにゴミを捨てたやつ全員が私にお礼なりなんなりしてくれてもいいはずだ」
もう何度も言い捨てた台詞をまた吐き捨てる。
こうして、この少女の日常は進んでいく。
誰に目を止められるわけもなく。
誰に感謝されるわけもなく。
「おおっ?」
少女は急に奇妙な声を出した。
「おおーー、捨て猫か。珍しいな。このへんに捨てるやつは滅多にいないからな。いたとしても、いつも中身は空っぽだったし」
小さなダンボール箱に猫が一匹入っていた。
「逃げないのかお前。ここにいてもなんもいいことないぞ。もっと人の多いところにいけば、食いもんも見つかるだろ。親切なやつに会えば、飼い猫になれるかもしれない」
少女は猫をゆっくりとなでる。
猫はおとなしかった。
「私は飼ってあげられないからな。見ての通り、人じゃないし。私はお前を持ち上げることさえ叶わない。できれば、別のところにいって元気に暮らしてくれ」
幽霊である少女にとって、意思あるものを動かすことはできない。
せいぜい、なでるぐらいしかできないのだ。
どうにかしてやりたいが、どうにもできない。
少女は苛立たしさを覚え、しかし、ゆっくりと丁寧に猫をなでる。
それは、他に触れ合うものがいない寂しさをごまかすためだったのかもしれない。
長い時間そうしていた。
高かった太陽は次第に明るさと高度を落とし、赤く低く河原全体を焼き尽くすように、真っ赤に染め上げた。
赤い日がダンボールの中の猫を照らす。
ぴたっと猫をなでる手が止まる。
少女はゆっくりと立ち上がった。
「悪いな。さっさといったほうがいいと思うぞ。じゃあな」
そのまま、背を向けた。どこか、怯えるように逃げるように、急ぎ足でその場を去る。
その肩は震えてるように見える。
少女は無言のまま、いつもの寝る場所まで歩く。
そこは、老朽化した橋の下だった。
今にも崩れそうな鉄骨製の橋。
すぐにも取り壊されるのではないかと思えるほど、古く、そしてボロボロだった。
橋の下から見上げると黒く煤けた部分が見える。
それがまた、一段とこの橋の雰囲気を悪くしていた。
少女は、橋の下で寝転がり、体を小さく折りたたむ。
そして、目を閉じて動かなくなった。
寝息は聞こえない。
果たして幽霊は夢をみるのだろうか?
完全に日が落ち、あたりに闇が訪れる。
ひとまずプロローグ。
週一よりは早いペースで書くつもりです。