1 婚約破棄から
「何故ですのっ!?」
私は屋敷のリビングホールでそう叫んでいた。
「仕方ないだろう?
君のスキルは地球という、訳の分からない物だ…
俺はさ、君の家が代々聖女を輩出する家柄だから、君との婚約を決めたんだよ。」
彼はアイスブルーの瞳を更に氷のように冷たくしてそう言った。
「そんな…
私の事を愛している、と言ったのは…
嘘でしたの!?」
「聖女込みで、だよ。」
「そんな…
酷いですわ!」
「恨むなら、自分のスキルを恨むんだな。
俺はこの国の第1王子で、君はエルフォード侯爵家のご令嬢。
まぁ、良い釣り合わせだと思ったが…
俺の早とちりだったようだな。
まぁ、男爵や商家が君に縁談を申し出るかもしれない。
それに期待するんだな。」
そして、ログド様は去って行った。
私は聖女の夢も、ログド様の愛も、同時に失ったのだ。
いや、しかし、それだけで話は止まらなかった。
それから、父や母、妹は、私に冷たくなった。
段々と嫌がらせは酷くなり…
そして、ついにその日私は家から追放された…
私はボロボロの馬車に押し込まれ、行き先も分からぬまま馬車は発進した。
「悪ぃな。
お嬢様。
いや、元お嬢様、か。
ここに置き去りにしろ、とのご命令だからな。」
そして、馬車の御者は深い森の中に私を捨てて、走り去っていった。
「ここ、どこ…?」
私は荷物も持ってなくて、薄いドレス一枚だった。
その時、話し声が聞こえてきた。
『魔王様の狩り、実に見事でしたね。』
『そうか?
これで、冬まで持てばいいがな。』
『あれだけのウルフ肉なら、当分は大丈夫でしょう。』
え…?
魔王…様…?
ここは…
まさか…
魔王の森・ブラックデーモン!?
私は一歩また一歩と後退りする。
その時!
私は大きな木の枝を踏んづけてしまった!
木の枝の折れる音に、魔王一団が振り向いた。
『…何故、この森に人間が居る…?』
静かな物言いは、むしろ魔王の怒りを感じさせる。
『魔王様の目汚しだ!
殺してしまえ!』
部下がそう言った。
「ま、ま、待ってください!」
私は咄嗟にそう言った。
『待て…と?
俺がお前を殺さない理由でもあるのか…
小娘…』
ど、ど、どうしよう…?
な、な、何か、何か言わなくちゃ…!
「わ、わ、私のスキルを魔王様にご覧入れたく…
それが気に入らなければ、煮るなり焼くなり…」
『…早くしろ。
つまらなければ、殺す…』
「は、はい!」
お願い、地球スキル、発動して!
何度試しても発動しなかった地球スキルに最後の希望を託した。
「ち、地球!」
私が唱えると、魔法陣が現れた。
そして、魔法陣の中央に何かの食べ物が…?




