同じだから分かること
三人称視点です。
「…おい、その話は本当か?」
「本当だ、とは言えさっきも言ったが証明する手段は今のところ無いがな」
「…いや、後で嘘がわかるメンバーに聞けば一発だからそれで証明は出来る」
ライズの爆弾発言が原因でメンバー全員の思考が一瞬停止し沈黙が辺りを支配する。
いち早く思考が復活したレイヴンが念のため確認したが、残念ながら初手でレイヴン自身が嘘をつくメリットが無いことを説明したばかりなため本当の可能性が高い。
「それじゃあ魔道王朝·グリムだったか、そこの魔法の詳細を説明しろ」
「…いや、以上は話さん」
「な?!てめぇ!」
レイブンがライズの胸ぐらを掴む。けれどもライズは毅然とした態度を崩さない。
「やはり、この情報が欲しいか」
「!?」
「ここまでの話で我が途方もない価値の情報を保持していることはわかったはずだ。これ以上の情報が欲しいのなら我と取り引きをしよう」
「最初からそれが狙いか!」
ライズが今まで語った情報だけでも世界の常識を一変させてしまうような物ばかりだった。これらの情報を入手できたとしたら聖魔連合の情報アドバンテージは計り知れないものになる
しかし、これらの情報の詳細を知っているのはライズただ一人だけであり、メンバーに記憶を抜き取るようなことのできる魔法持ちはいないため本人に話させるしかない。
しかも他に情報が渡る可能性を考慮してライズを口封じした場合、次にいつ異世界や魔法の情報を入手できるチャンスが訪れるかわからない。
ライズをこの場で無き物にするのと、取り引きに応じ情報を得ることを天秤に掛けた場合、後者の方が圧倒的に聖魔連合にとって利がある。
「…わかった、取り引きに応じよう。ただし、交渉権は俺たちにあることを忘れぬなよ」
ゆえに、取り引きに応じないという選択肢は存在しなかった。
「分かっている。こちらとしては取り引きに応じてくれるだけ有難いのだ、高望みはせん」
「ならいい。こちらはライズの持っている情報の全て、それに加えライズの魔法技術を要求する。そちらは?」
「こちらが要求することは一つ、召の望みを叶えてやってくれ」
「…本当にそんなのでいいのか?」
ライズの要求は召の望みを叶えること。想定外すぎる要求にレイブンは困惑した。
「この世界に召喚されてからいろいろ世話になったからな、その礼だ」
「本当にそれだけで?」
「…あぁ」
「…後でその間については聞かせてもらうが、今はそういうことにしておく。ただし内容によっては却下させてもらうからな」
世話の礼だけかと聞き返した時不自然な間があったが、声色から召の望みを本気で叶えてほしいことが伺えたため、レイヴンはあえてそれ以上言及しなかった。
「で、張本人である召の望みは何だ?」
「…妹に会いたい」
「妹?お前妹いんのか」
「ねえ兄さん、妹ってひょっとして…」
召の望みは妹に会うこと。そして召の妹の存在にオウルは心当たりがあった。
「私に召さんの捜索を依頼した天の声が妹?」
「…えぇ。あなた達の言う天の声が恐らく私の妹、八世通波のはずよ」
「…マジかよ」
八世召と天の声改め八世通波が姉妹、それならオウルが召を探すように依頼されたのも納得だ。
通波は、ただ姉に会いたいと言う思いでオウルへ依頼したのだ。
しかし、それなら一つ謎が残る。
「なぜいきなり攻撃した?たしかあの時天の声からの依頼って言ったはずだが」
そう、開幕早々に召が攻撃してきた理由がわからない。妹から依頼されたと聞けば攻撃するメリットなど普通はないからだ。
「…通波の名前を語って私を殺そうとしていると思ったから攻撃した。私は一応口封じの為にここへ入れられたからそういうのがあっても不思議じゃないし、もし本当だったとしても殺した後にライズさんに調べてもらへばいいだけですから」
「確かに攻撃する理由としては十分だな」
「それで兄さん、この望みどうする?」
レイヴンは思考する。正直望み自体は問題ない、むしろ通波が魔法少女連盟に居る理由を無くすためにも再会させることは決定事項であった。
「…俺にもオウルが居るから妹に会いたいって気持ちは良く分かる」
「しゃあ…」
「逆にお前も分かるだろ?生き返ったとは言え目の前で妹が殺された気持ちが」
「!」
そう言われた瞬間に召が思い出したのは、オウルの首を切断した瞬間に僅かに見えたレイヴンの絶望した表情だった。
「それに妹が居る者どうし、されて一番嫌なことも分かっているつもりだ」
「…何をする気?」
「望みは叶える。ただし、俺たちの目的が達成されるまで通波との接触を禁ずる。その上で戦場の最前線に出てもらう。目的が達成されるのが何年後になるかなんてわからないし、それまでに戦死するかも知れないがな」
レイヴンが召に与える罰は通波との接触禁止。レイヴンがされて一番きついと感じる罰則を言い渡した。
「う…そ…」
言い渡された瞬間、召の顔に絶望の表情が浮かぶ。
「嘘じゃない、これでもかなり温情ある方だぞ。本当はぶっ殺したいくらい怒ってんだからな!」
「ひぃ!」
「兄さんもうその辺で、もう私も怒ってないから」
「…わかった」
レイヴンが召に怒りをぶつけるがオウルがなだめる。
「因みに、ライズは異論あるか?」
「…罰の一部を我も背負うことはできるか?」
「無理だ、これは本人じゃなきゃ意味がない」
「…なら異論はない」
「決まりだな。じゃあ白夜たち回収して本部へ戻るぞ」
そうしてレイヴン達は地下空間を後にした。




