襲撃
午後11時、都内某所にあるとあるビル。
二人は万全の準備をして黒曜団本部に来ていた。
「それで、お前の魔法…『生命魔法』だったか?だいぶ使えるようになったか?」
「大丈夫!けっこう練習時間あったし」
『生命魔法』
指定した範囲の環境を生物が生きられる環境に変え、ある程度操作する。
傷を癒す。
外敵から身を守る。
「兄さんの方は能力どうなの?」
「【テレポート】と【ワープゲート】、【異空間倉庫】だな。ただ、熟練度もコピーしたのか結構な数の【ワープゲート】を一斉に操作できるし、【異空間倉庫】もだいぶ物をしまえる」
その他にも、襲撃に備えてさっきワープゲートで外国のホームセンターで買ってきたスタンガンに催涙スプレー、縄、家にあった包丁などを持って来ている。
さらに顔を隠すためにペストマスクを装備し、指紋がつかないようにゴム手袋をつけている。
環の方は【環境操作】の一貫で植物も操作できたため、拘束用にアサガオの種を持って来ている。
「さて、目標は…」
「キャットガールを逃がした研究者のお兄さんと研究資料と怪人関係の機械の確保。できれば資金もでしょ」
「あぁ、そして…」
「「命大事に!」」
◇◇◇
「それじゃあ環、まずは警備室を制圧するから拘束よろしく」
「了解」
監視カメラなどで見つかったら面倒なのでまずは警備の要を潰す。
「ここだ、【テレポート】」
「アサガオ、GO」
警備室に着いたら環を中にテレポートで飛ばし、中でアサガオを急成長させ警備員を拘束する。
「な!どこか『バチッ』…」
「お、おい『バチッ』…」
「…ふ~終わったよ。てかこれ兄さんでよかったよね」
そして拘束したらスタンガンを当てて気絶させる。
「仕方ないだろ、身体能力は環の方が魔法少女になった影響で上がってんだから」
証拠を残さないためにアサガオから縄に縛り直す。
そして監視カメラから研究室と研究者のお兄さんが捕まっている場所を調べる。
「お、この部屋か?」
その部屋は拷問室のようで、見張りが二人部屋の前にいる。
「拷問室の方は私が行くよ」
「わかった、それと…」
警備室の監視カメラの録画機器を全て破壊する。
そして、互いの耳元に小さなワープゲートを作る。
「終わったらそのワープゲートで連絡な」
「了解」
◇◇◇
「ここか…」
兄さんと別れた後、拷問室から少し離れた所にワープゲートで送ってもらった。
拷問室前に見張りが二人。
「兄さん、少し離れた所に何か落とせる?物音がするくらいの」
『ちょっとまって…そこら辺にあった缶でいいか?』
「それでいおよ。私の位置の反対側に落として」
『了解』
カランッ
「ん?何の音だ?」
「俺がみてくる」
よし!これで反対側に意識が向いた。
その間に一気に距離を詰める。
「少し眠っててね」
ドサッ
「おい!どうし「これでラスト!」なっ!」
そしてスタンガンで気絶させる。
「これでよし!一応縄で縛っとこう」
縄で縛って…終了!
後は中にいる研究者のお兄さんの救出だ。
「中はどうなって…ウッ」
中は血と肉の匂いが充満していた。
しかし。
「今のうちに慣れないと…」
今後あるかもしれない戦いのためにも。
「う、やっぱきついな…」
長年掃除されてないのか腐敗した匂いがこもってる。
早く見つけないと鼻が曲がる。
「ん?あの人かな?」
「…そこに誰かいるのか?」
少し探すと、奥の壁にお兄さんが腕に手錠を付けられて壁に固定されていた。
「はい、私は…取り敢えず魔法少女Aと名乗っときます」
「…それで、魔法少女Aは何でこんなところに?」
「あなた、キャットガールを逃がしましたよね?それでキャットガールからあなたの救出を頼まれたんです」
「!、あいつなにして…」
「話し合いは後です」
手錠は壊せそうにないので、壁に固定されている手錠の付け根を破壊する。
手錠は後で兄さんに外してもらう。
「ヒール!」
拷問の跡なのか傷がひどいので回復させる。
暗くて良く見えなかったが、指か数本なくなっていたのもみるみる回復していく。
不謹慎だが、体の失った部分も回復する事がわかったのは幸いだ。
指を切断して回復魔法の練習するわけにもいかなかったし。
「兄さんに連絡しないと」
◇◇◇
「さて、こちらもさっさと終わらせっか」
環に頼まれて通路に缶を落としたあと、俺も自分の作業に戻る。
研究室にあった怪人を制作する機械、研究資料、拳銃などの武器を片っ端から【異空間倉庫】に入れていく。
その資料の中にはキャットガールの資料もあった。
《No、175 キャットガール》
材料 猫の死体、プラナリア、ゾウムシ、少女の血液
概要
見た目は猫怪人だが、どんな環境でも生きていける生命力、
高い再生力、分裂能力を有している。
人格があり、戦闘には向かない性格をしているのでクローンの素体としてしようする。
首輪で記憶を共有させることで次のクローンの為に戦の記憶を残す。
エネルギーが切れると再生しなくなる。
資料に"量産型"の記載がないのは、恐らく本来は量産型で使う予定はなかったのだろう。
しかし、キャットガールが戦闘向きの性格をしておらず、急遽量産型に変更したと思われる。
「あ、そうえば…」
俺は研究室から総務部の部屋へワープゲートで移動した。
そして、机の鍵をテレポートで無理やり消し飛ばして中を物色し目的の物を探す。
「お、あったあった」
探していたのは、この組織が裏で取り引きしている密輸した武器や薬物、資金などが記録されている書類だ。
これを持って行けば、最悪バレても脅しの手札に使える。
「さて、環を連れて帰るか」
「ところで何でペストマスクなの?」
「外したとき、ペストマスクが印象に残っていればバレにくいだろ」