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居酒屋

レイヴン視点です。


「しっかし腕が痛ぇ」


 白夜との試合で吹き飛んだ腕から血が滝のように流れている。それが原因でさっきから立ちくらみがする。


「セイ、優真の回復を頼む、その後俺の回復だ」

「わかりました」


 セイと呼ばれたエルフが俺の腕だった肉塊を持って近づいてきた。


「今回復します、回復(ヒール)


 セイがそう唱えると、俺の近くに置いてあった肉塊が光輝き腕の形のになったかと思ったら俺にくっついて完全に治った。

 何か環の回復(ヒール)より魔法っぽいな。光ってる所とか。


「終わりました」

「ありがとな、それとミヤに似てるが姉妹か?」

「ええ、ミヤとは双子の姉妹です」


 なるほどな、ただの姉妹じゃなくて双子なら瓜二つなのも納得だ。


「白夜様の脚も治しますね」


 セイが白夜の切断された脚を切り口に当てて呪文を唱えると、白夜の脚の切断部が光り脚が元通りにくっついた。


「ありがとなセイ、それじゃあ俺はこれから優真と同盟についての相談をすっから、みんなはそれぞれの仕事に戻ってくれ」


 白夜の号令で、周りの怪人達は皆離れていった。


「キャットガールとセレネは先に帰っててくれ、相談が終わったまた呼ぶ」


 そうして二人をワープゲートで本部に先に帰還させる。


「一応二人は先に返した、ここで待機させるのも面倒だろ」

「すまないな、それじゃあ場所を移そう」




   ◇◇◇



「ここだ」


 白夜に連れてこられたのは城下町の角にある居酒屋だ。


「大将、空いてるか?」

「ん?ああ、白夜か、どうしたんだこんな真っ昼間に、それに連れがいるのも珍しい」


 中で出迎えたのは老人で、見た目は殆ど怪人らしさがない。


「連れは相談相手だよ、それも今後を大きく左右するな」

「…わかった、個室はあっちだ」

「助かる」

 

 そうして白夜と一緒に店の奥にある個室へ移動する。


「さっきのご老人は?」

「けっこう前に出会った居酒屋の大将だ、魔法少女の戦闘で店が壊れた時にここに来てもらった、大将の料理はうめぇからな」


 なるほど…てことは。


「あの人人間?!」

「そんな驚くことか?」

「驚くに決まってるわ!」


 ここに来てから怪人しか見かけてなかったからな、人間はいないと思ってた。


「俺は気に入れば誰だって受け入れるからな、それはそうと何か注文しよう、大将、いつもの酒とつまみ一つ」

「あいよ、お前さんは?」

「あ、それじゃあ唐揚げと水で」


 確かに何も注文しないのは失礼だな。




 しばらくして料理がテーブルに運ばれてきた。


「く~、やっぱここの酒とつまみはうめぇな」

「唐揚げも美味しい」


 唐揚げ以外も食べてみたがどれも絶品だ。白夜が気に入るのも分かる気がする。


「さてと、そろそろ本題に入ろう。何か聞きたいことはあるか?」

「それじゃあ個人的な質問だが、白夜の能力って何だ?」


 戦ってる間に能力について考察したが結局わからず短期決戦でごり押したからな。


「俺の能力?俺の能力は抵抗操作だ。概要としては摩擦を操作して壁に張り付いたり床を滑ったりできる。他には戦いで使った斥力を操作しての液状化現象、空気抵抗を高めて落下速度を落として行った空中歩行、摩擦力を限りなく0にしての弾丸の無力化だな。引力を操作して物質の高質化もできる。どれも原子レベルで操作できるな。

 弱点は手足で触れている物にしか発動できないこと、他の生命体に対しては摩擦力程度しか操作できないこと、物理現象にしか作用しないこと、0にはできないことだな。あ、それと触れた対象にしばらく能力を付与できるな」

「…できること多すぎだろ」


 この能力を戦ってる間に把握するの無理ゲーだろ、あと俺よく勝てたな。

 それと物理現象にしか作用しなくて本当によかった。もし抵抗操作が文字通りの意味だったら、相手に『抵抗するな』と言えばそれだけて勝ちが確定するから、さっきの戦いでこちらの勝ち目がなかったからな。

 それに人工衛星を破壊したのも抵抗操作を付与した石を使ったんだろう。何を付与したのかはわからんが。


「こちらは話したぞ、次は優真の能力を教えろ」

「わかった、俺の能力は空間操作、テレポートしたりワープゲートを生成したりできる。他にも自分と他者の位置を入れ換えたり異空間に物をしまっておける。

 弱点は他者と一緒にテレポートする時はこちらが触れるか触れられてるかしてないといけないこと、ワープゲートを生成する時に必ず片方のゲートを手元に生成することだな。それとワープゲートは生成した後なら俺が側にいなくとも稼働し続ける。以上だ」

「おめぇも大概だろ」


 …確かに、俺も人のこと言えない位できると多いな。


「次はこちらから質問するぞ、優真は怪人のことをどう思ってる?」

「どう、とは?」


 質問の意図がわからない、怪人は怪人だろ。


「ここにいる怪人はほぼ全員、どこかの組織に改造された元人間だ。そして魔法少女と戦い、敗れ、命からがら組織に逃げ帰ったら処分され、路頭に迷って放浪の末にここへたどり着いた者もいる。早い話人間不信が多いんだ。過去に優真みたいに仲間になるよう言ってきた輩もいたが、そいつら全員怪人を奴隷としか思っていないゴミ野郎だった。

 牢屋での会話で優真がそういう奴じゃないってのはなんとなく分かったが、改めて優真の口から怪人をどう思ってるか聞かせろ」


 なる程ね…。


「始めに、俺は怪人のことを人間とは思っていない」

「てめえ!」


 白夜が俺の胸ぐらを掴む。まあそりゃ怒るよな。


「ただし」


 しかし、そんなことじゃ俺の考えは変わらない。


「怪人も人間も魔法少女も、等しく"人"だと思ってるよ。意志疎通ができ、対話ができる、そういう者を俺は人だと思う」

「!」


 これが俺の考え、怪人は人間と比べるとどうしても人間には見えない。しかし、怪人だって会話できて意思がある。

 だから自分なりの答えとして両方とも"人"だと思うことにした。


「ふふ、ワハハハ!そうか、そうか人か!今までいろんな人間を見てきたが怪人を人だと思うと答えた奴は見たことが無い!」


 白夜は俺の胸ぐらを離して席に戻っていく。


「優真!お前確か理想の世界の為にこの同盟話を持ってきたよな?!」

「あ、ああ概ねあってる」

「この同盟を受けてやる!ただし、優真の理想の世界を俺に見せてくれ!」

「!、ああ、約束する、絶対に見せてやる、俺の、いや、俺たち聖魔連合の理想の世界を!」

「その言葉忘れるなよ、鬼は嘘が嫌いだからな!」


 こうして、後の一代勢力の元となる同盟は、町外れの居酒屋で締結された。

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