現状確認
「「なあ/ねえ、環/兄さん…」」
二人が今日あったことを話そうとした時、たまたまタイミングが被った。
「…先いいぞ」
「あ、うん…ちょっと今日あったことで話したいことがあって」
「わかった。俺も今日あったことで話したいことあったしちょうどいい」
「取り敢えずリビングに移動しよ」
二人は話すためにリビングに移動する。
「で?話しって何だ?」
「魔法少女になりました」
「…ちょっとまて、今なんて言った?」
「魔法少女になりました」
「…すまん、ちょっと頭を整理させてくれ」
この世界の学校では、魔法少女になるきっかけなどの基礎知識は小学校の義務教育で一通り習う。
なので、少女なら誰でもきっかけが有れば魔法少女になれるのを優真は勿論知っている。
が。
「…どうしてなったのかの理由の説明を求む」
いきなり妹が「魔法少女になりました」と言っても、理解できるかは別である。
「ええっと…」
環の説明では、たまたま路地裏に入ったら怪人に襲われ、死にたくないので魔法少女になったらしい。
そして、その怪人は全身痣だらけで死にそうだったので、家に連れ帰って寝かせているいるとのこと。
「それに…死にたくなさそうだったし…」
「…まぁ、なんとなくわかった。殺されかけた相手を助けたことも、状況的に俺もそうするだろうし」
「…よかった、怒られるかと思った」
「因みに、俺の報告も似たようなことなんだが…」
「…は?」
優真は、昼間の事故でたまたまどこかの組織のボスの血液を接種してしまい、空間系統の能力を取得したことを説明した。
「…それ大丈夫?精神乗っ取られない?」
「まぁ、大丈夫だろ?そんなことより、今後をどうするかだ」
不可抗力とはいえ二人とも能力を得てしまった以上、戦いはおそらく避けられない。
「多分だけど、悪の組織や魔法少女に狙われるよな…」
「多分…」
優真は魔法少女に、環は悪の組織におそらく狙われる。双方、どういう原理か的確に場所を突き止めてくるからだ。
「…下手したら死ぬくね?」
「…死ぬね」
双方、見つけたら問答無用で攻撃してくるので話し合いはまず不可能だ。
そこへ。
「あの~起きたのですが…」
「あ、起きた起きた。体調大丈夫そう?」
「は、はい、おかげさまで…」
「そいつが環を襲ったっつう怪人か?みた感じ人畜無害そうだが?」
「ひぃ!さ、先ほどはすいませんでした!」
「ちょっと兄さん!怖がってるじゃん!」
「わりいわりい。そうえば自己紹介がまだだったな、俺は黒榊優真。こいつの兄だ」
「そして私が黒榊環。そうえばあなたの名前は?」
「は、はい!黒曜団所属の量産型怪人、キャットガールプロトタイプです」
「「プロトタイプ??」」
その怪人…キャットガールが言うには、黒曜団はキャットガールプロトタイプをモデルに量産型怪人を作っていたらしい。
早い話、クローンの素体だ。
「それで…なぜかいつも魔法少女の前にいて…殺されて…気づいたらまた部屋の中で…戦いに行ったのはクローンのはずなのに…」
「…兄さん」
「あぁ、多分だがクローンとの記憶が共有されてる」
恐らく怪人なのに死ぬのを恐れてた理由はこの記憶共有だ。
クローンの記憶とはいえ、死ぬ瞬間を何十回と見せられれば当然といえば当然だが。
「そういえばどうやって黒曜団体から脱走したんだ?」
「それは…私に唯一ご飯をくれた研究者のお兄さんが逃がしてくれました。ご飯は毎日ではなかったけど、唯一優しくしてくれた人です」
「そうなんだ…」
「お願いです!どうかお兄さんを助けてください!私を逃がす時、組織の人に捕まってしまって、どうかお願いします!」
「兄さんどうする?」
「どうって…」
キャットガールが言う研究者さんを助けるメリットは正直あまりない。
「いやちょっとまて。キャットガール、組織の建物の内部構造は分かるか?」
「い、一応…」
「環、俺は助けに行くのに賛成だ。俺たちは能力を得たばかりで魔法少女や悪の組織の伝手もない。なら、ちょうど建物内部の構造知ってるやつがいるなら、ついでに研究資料や怪人制作機械、資金などをまとめて奪うのはどうだ?」
「…それ法的に大丈夫なの?」
「最悪、魔法少女っつう免罪符使えばどうとでもなる。それに、ここでいろいろな道具入手しとかないと、次の入手機会がいつかわからねぇ」
「わかった、それに多少は戦闘慣れしとかないとね」
「襲撃までに能力確認しとけよ」
襲撃は今晩だ。