閑話 元花と学校
元花視点です。
(1)質問
どうしよう完全に囲まれた。
自己紹介が終わったら机の周りに他の子が集まってきた。しかも環さんは何か頑張れって言って助けてくれないし。
それにあまり会話したこと無いからちゃんと受け答えできる自信が無い。
「ハイハイ!私から質問!環と親しそうだったけどどういう関係?」
あ、私の意見は無視ですか。
「環さんの家に居候している者と宿主の関係ですね、身内の不幸があって路頭に迷っていたところを助けてもらいました」
「あ…うん、ごめんねこんなこと聞いて」
嘘はほぼ言っていない、後はこれで周りが離れてくれれば…。
「次は私がしてもいい?」
あ、離れる気は無いと。
「ちょ、この状況でまだ質問続けるの?!」
「あ…別にかまいませんよ、気にしてませんし…それに私みたいな子も珍しくありませんし」
魔法少女と怪人が現れてから孤児は増えているらしい。だから親がいない理由としてはちょうどいい。
ま、私こと苗又元花は怪人なのでそんなことは知ったこっちゃないですが。
「ほら、本人も良いって言ってるじゃん」
いいとは言ったけどマジで質問続けるんだこの人。
「それじゃあ元花ちゃんの特技って何?」
い、いきなり名前呼びですか。
「走るのが得意ですね、これでも結構速いと思います」
「そうなんだ!それじゃあ4限の体育で走るとこ見せてよ!」
「わ、わかりました」
あ、圧が凄いな。
「次は『キーンコーンカーンコーン』あ、チャイムなっちゃった」
「そ、それじゃあ皆さんまた後で」
「また後で」
…疲っかれた~、あんなに話したの初めてだからとても疲れた。こんなノリで今後の学校生活耐えられるかな?
◇◇◇
(2) 陸上部
「おい!苗又って奴はいるか?!」
学校が終わり放課後、廊下から凄い大声で呼ばれた。
「わ、私が苗又ですが…どちら様ですか?」
私を呼んだのは知らない男子だ。勿論あったこともない。
「俺は赤川操だ!苗又!俺と勝負しろ!」
「???」
何言ってるんですかこの人?いきなり人を呼んで勝負しろは非常識が過ぎる。
「苗又は足が速いらしいな、俺も足の速さには自信がある、だから勝負しろ!」
「何で私があなたと勝負する必要があるんですか」
「…確かに」
あ、この人アホだ。今のちょっとの会話で分かるくらいアホだ。
「環さんこの人は?」
「赤川くんのこと?確か隣のクラスの陸上部だったはず。性格は…まあ見ての通りアホ、ただし根性はピカイチだよ。それと桃山先輩とは従弟だったはず」
…なんと言うか、愛すべきアホみたいな人ですね。それと桃山さんと従兄ですか。桃山さんって確か魔法少女でしたよね。
「元花行ってくれば?人と関わる練習だと思って」
「鬼ですか環さん?!」
ただでさえ口下手なのに何で関わらないといけないんですか?!
「じゃあ言い方を変える。聖魔連合の諜報員として魔法少女の身内との交流関係を作ってきて、後コミュ障も治しておいで」
「まあ、そう言うことなら。あとコミュ障じゃないです」
ちょっと口下手なだけです。
「はぁ~わかりました、一戦したら戻ります」
「お、勝負してくれるのか!それじゃあ今からグラウンドに行くぞ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
いきなり引っ張るな~!
「よし、さっそく勝負しよう!」
こいつ…無理やり引っ張りやがって。こうなったらさっさと終わらせましょう。
環さんには悪いですがこっちが持ちません。
「わかりましたよ、さっさとやりましょう。で、勝負のルールは?」
「そうだな…じゃあ体育と同じ50メートル走で、スタートのアイズは俺のスマホのタイマーが鳴る音がアイズな」
「わかりました」
私と赤川くんがスタートの準備をする。
「それじゃあ5秒後な、タイマーオン!」
タイマーがカウントを開始する。
早く終わらせたいから手加減しつつもなるべく速くする。4秒くらいでいいだろう。
『…ピピピ』
よしスタート。
(1…2…3…4…ゴール、さて赤川くんは…は?」
「いや~負けた!お前速いな!」
50メートル4秒は人間にしては速いはず。なのに赤川くんは私より0.5秒ほど遅れてゴールしていた。
「…足、速くない?」
「あ?そりゃ陸上部なんだから足速いのは当然だろ」
「あ、うん、そうだね…」
違うそうじゃない。私はこれでも怪人なんですよ、何で追い付けるんですかこの人。
「それじゃあ、一戦したので私は帰りますね」
「おう!また明日勝負しろよな!俺が勝つまで何回も勝負するからな!」
「はいはい…」
ん?明日?
「おい苗又!今日も勝負だ!」
「…何で来たんですか?」
「あ?勝負するために決まってるだろ!」
次の日、上の空で返事をしてしまったが為に赤川くんが今日も勝負をしに来てしまった。
「はぁ、何でこんなことに…」
「まあまあ、任務だと思って」
「はい…」
確かに任務でもありますし、勝負を了承してしまったのは私なので赤川くんが諦めるまでは付き合いますか。
なお、この時の環さんがほほえましくこちらを見つめているのを、この時の私は知り得なかった。




