受付嬢と説明の食い違い
環視点です。
『環体調はどお?』
(…ある程度回復したけどまだきつい)
列車から降りて私達は受付に向かおうとしたところ、なぜかいきなりふらついたため今はベンチで休んでいる。
原因はわからないが動ける程度には回復できた。
「しかし…ここは本当にどこだ?」
いや場所はマジックターミナルとわかっているが、地理的な意味での場所が本当にわからない。
マジックターミナルはロンドンの駅と言った雰囲気だ。写真でしか見たことないが。
列車に乗っている間ずっと地下を走っていたのでおそらくここも地下だとは思う。天井はガラス張りで光が射しているが、アル曰く光合成が出来ないとのことなので太陽光では無いだろうし。
「そろそろ受付行くか」
駅ならば改札口がある場所に改札口はなく、その脇に異世界小説の冒険者ギルドの受付みたいなものがある。
何というかちぐはぐな空間だな。
「すいません!受付したいのですが!」
「はい!ようこそお越しくださいました!」
奥から見るからに受付嬢という格好の赤髪の女性が出て来た。
「本日はどのようなご予定で?」
「実はこんなものが届きまして…」
私は家に届いた手紙を受付に出す。
「確認いたします。オウルさんですね。お越しいただきありがとうございます。私は受付嬢の小鳥遊小鳥と申します」
「私も改めて自己紹介しますね、私はオウルと言います、本名は言いたくないのでご勘弁を。それで、どうして私は呼ばれたんですか?」
まあ、魔法少女絡みだとは思うが。
「本日お越しいただいた理由は全日本魔法少女連盟への登録をお願いするためです」
やっぱり魔法少女絡みか。
「登録するメリットは?」
「登録していただくメリットは、怪人を倒す度に連盟から発行されている魔法少女カードにポイントが溜まり商品と交換できることが上げられますね。その他にも、マジックターミナルにある大図書館、列車、飲食店などの利用などのサービスを受けられます」
「そうなんですね。ちなみにデメリットは?」
「デメリットかどうかは判断しかねますが、時折悪の組織の討伐のための召集がありますね。それと怪人と戦う義務が生じます。そして全日本魔法少女連盟の存在を公にしないことを契約する必要があります」
つまりは景品やるから怪人を倒せってことか。良くできたシステムだなこれ。これだと魔法少女達は悪いことをした人を倒せて、なおかつ景品ももらえるため双方に利がある。それに怪人は見た目が人外な上、子供の頃から魔法少女によって殺される怪人をみているから、殺すことに対する罪悪感もへったくれもないだろう。
景品のため魔法少女達は怪人を倒す、そしてその際に余波で町や関係無い人達の被害がでる。目に見える悪循環ねこれ。
組織を公にしないことは、敵に組織の存在を悟らせないためだろうから納得できる。
「わかりました、取り敢えず登録します。ただ、本名じゃなくてもいいですか?」
何はともあれまずは登録はしないと。
「ありがとうございます。登録に関しては本名で登録している人が多いってだけで別に本名じゃなくても問題ありません。では、この書類に必要事項を記載してください」
よかった本名の登録は必要じゃないみたい。
書類の内容は、活動ネーム、主な活動範囲、そして魔法か。活動ネームはオウルで主な活動範囲は…全国にしておこう。聖魔連合副連合長としていろいろな所へ行くことになった時に、不審に思われないようにするためだ。
しかし魔法については誤魔化す必要がある。回復できる魔法は少なく、絶対にバレたら召集が掛かりまくる。幸いネットに上がった動画は植物を操ってるところしか写っていなかったので、書類には【生命魔法】ではなく【植物魔法】と記入する。
「記入終わりました」
「確認しますね。活動ネームはオウル、活動範囲は全国ですか、珍しいですね」
「はい、せっかく列車を無料で使えるのならいろんな所行きたいですから。そのついでに怪人倒してくれば一石二鳥ですし」
嘘は言っていない。お父さんとお母さんが死んでから旅行とかもしてないから、今度はいろんな所へみんなで行きたいからその下調べも兼ねてね。
「そうですね、魔法は…固有魔法持ちですか!」
「固有魔法?」
まーた知らない用語が出てきたよ。
「そもそも魔法少女は火、水、土、風の四属性のうちどれか一つを持っています。それぞれ全体の二割ほどですね。それで残りの二割、四属性のどれにも属さない魔法を固有魔法と呼んでいます」
そうなるとあの天の声さん(仮称)も固有魔法持ちか。おそらく探知系統の魔法だろう。まあ何かの応用で探知しているだけかも知れないが。
「わかりました。説明ありがとうございます」
「それでは登録しますね。こちらがオウルさんの魔法少女カードです」
渡されたカードは何というか写真の無い免許証みたいだ。
「何かご質問はございますか?」
「そうですね…では、どうやってこの自宅を調べてこの手紙を届けたんですか?」
自宅を調べたのは天の声さんだろうが、確認の為に届けた方法と一緒に聞いてみる。
「それは私の魔法で調べて届けました」
「小鳥遊さんの?」
というか小鳥遊さんも魔法使えたのか。
「はい、私の魔法は【使役魔法】というものでして。この魔法は動物をいわゆる使い魔にする事ができる魔法です。そしてこの魔法の効果で動物と会話できるので動物達に聞いて自宅を調べ、鳥に手紙を届けてもらいました」
「…わかりました、質問は以上です」
「それではオウルさん、あなたの今後の活躍を期待しています」
◇◇◇
『環、あのお姉さん』
(わかってる、あの説明は嘘だ)
小鳥遊さんの説明は嘘が混じっていた。自宅を調べたのは天の声さんであって小鳥遊さんでは無い。
いや届けたってのは本当だと思う。
おそらく天の声さんが小鳥遊さんに自宅の場所を伝えて、小鳥遊さんが小鳥かなんかを使って手紙を届けたのだろう。
小鳥遊さんが調べたのなら、元花を自宅に連れ込んだ時か、兄さんと一緒に黒曜団に乗り込んだ時か、アルを自宅に連れ帰った時のいずれかを動物に見られたことになるが、そうなったら手紙を届けないで魔法少女を送り込んできただろう。
どの行動も魔法少女あるまじき行動だからだ。
その点、天の声さんならば私の行動も隠蔽できるから小鳥遊さんが知らないのも納得がいく。
問題は、小鳥遊さんが天の声さんの存在を隠したことだ。
何か隠さなければいけない理由でもあるのか?
(何にせよ面倒なことになりそうだ)




