未発見
三人称視点です。
「驚いた、僅かにミスリルが混合しておる。向こうではかなり貴重だった金属だ。灰崎、この世界にもミスリルはあるのか?」
「そんなもの無いぞ、こっちじゃファンタジー上の金属だ。レイヴン、本当にこんなのが洞窟にあったのか?」
洞窟から戻ってきたレイヴンたちが最初に向かったのは灰崎とライズのいる海上研究試験場だ。ここで持ち帰った剣やその他ドラゴンなどの不思議生物の死体の調査を現在二人に行ってもらっている。
「正確には最下層にいたドラゴンを倒した後に出現した宝箱からだがな」
「…そうなるとアレか?」
「ライズ、アレってなに?」
ライズには心当たりがあったのか、アルが説明を要求する。
「そういえばあの場にいたのはレイヴンとオウル、灰崎だけだったな」
「いや、あの後こちらからある程度説明したから一部端折って説明しても問題ないぞ」
「そうか。まあ改めて言うが我が元居た世界にはダンジョンコアというものが存在する。そしてダンジョンコアを核としてダンジョンが生成されるのだが、生成されたダンジョンのボスモンスターを倒した際に宝箱が出現する、まあ道中にも出現することはあるがな。その宝箱からは様々なアイテムが入手できるのだ。恐らくその洞窟もダンジョンだったのだろう」
「いや宝箱関連は前回説明してないだろ」
「そうだったか、それはすまなかった。それで、ダンジョンコアはどの程度のサイズだったか?」
異世界ではダンジョンコアのサイズによって、生成されたダンジョンの危険度を決めている。最大級のダンジョンともなると個人で大国に対抗できるほどの実力を所持する冒険者のパーティーが本気の装備と物資を揃えた上で、年単位の冒険を覚悟しなければならない程に広大で危険を伴う。
そのためダンジョンを見つけたら、ダンジョンコアのサイズを確認しその土地を管理している組織へ報告を行うべきなのだが─
「…あの、そんなものありましたか?」
「なかったはずだが、誰か見た人いるか?」
「私は見てない」
「俺も」
「アルも見てないよ~」
誰もドラゴンのいた空間にダンジョンコアらしき物体を見ていなかった。
「は?そんな訳なかろう。だって最下層のドラゴンがリスポーンしたんだろ。そのドラゴンがボスモンスターじゃないとしたら何だと言うのだ」
「いや知らないよそんなこと。異世界に似た事象なかったの?」
「…あるにはあるが、それは近くにより巨大なダンジョンがありそこの一部だった場合だ。近くにより巨大な洞窟はあったか?」
「いや、無かったなそんなもの」
レイヴンたちが探索したのは山岳地帯で一番巨大な洞窟だ。近くにあった洞窟も坑道程度のサイズしかない。
「だとしたらいったい何なのだ?」
「そんな疑問に思うならこの後行ってくればいいだろ。レイヴンなら最下層まで一瞬でいけるだろ」
「たしかにそうだな。レイヴン頼めるか?」
「わかった。けど人数は絞るぞ、あくまで調査だからあんま人数いらないからな」
◇◇◇
山岳地帯の洞窟、最下層にて─
『GRrrrra』
ドラゴンは先ほど自身を殺した敵を探していた。
すると、頭上に突如ワープゲートが展開される。
「ボーンバンカー!」
ワープゲートから飛び出した巨大な二本の骨がドラゴンの翼に直撃し、地面に固定する。
『GRAaaaaa!』
ドラゴンは必死に飛び立とうとするが、骨がしっかりと地面に食い込んでいるため移動すらままならない。
「追加だ」
そしてワープゲートから出てきたライズがさらに骨を追加し、首の動きも固定する。
「ワープゲート」
次いで出てきたレイヴンがドラゴンの正面にワープゲートを展開し、頭部を通過させていく。
一回目の戦闘では暴れまわっていたため難しかったが、今回は固定されているためたやすい。
「解除!」
そして閉じたワープゲートによりドラゴンの頭部が切断される。二回目のドラゴン討伐は一回目の苦労が嘘に思えるほどあっさり終了した。
「今回は宝箱出ないんだな、確率なのか?まあ今はいい。それじゃあライズ、ドラゴンがリスポーンする前に頼む」
「うむ、サーチアプレーザル」
ライズが魔法を発動させ地下空間を見渡す。
「どうだ、何かわかったか?」
「ちょっと待ってくれ、範囲を広げる。…嘘だろ」
「おいどうした?」
「…一端戻るとしよう。もうドラゴンがリスポーンしそうだ」
見ると地下空間の中央には既に光が集まり出している。
「たしかにそうだな。ワープゲート」
◇◇◇
「兄さんどうだった?」
「いや俺よりライズに聞けよ」
「確かに」
海上研究試験場へ戻って真っ先にオウルが質問する。
「で、結局どうだったんだ?」
「レイヴンが言っていた通りあの洞窟にダンジョンコアは無かった。しかも更なる謎も増えてしまった」
「どういうこと?」
「近くにもダンジョンコアらしき物が無かったのだ」
ライズは見えてないだけで近くにダンジョンコアが存在していると予想していた。
しかし、いくら魔法の範囲を広げても発見できなかったのだ。
「つまり、本体のダンジョンが発見できなかったってことか?」
「そうだ。ドラゴンがリスポーンした様子からダンジョンであることは間違いなさそうだが、如何せん向こうの世界でもこのようなことは無かったからな」
とどのつまり、完全に手詰まり状態なのだ。
「お~い、灰崎かライズいるか?」
「白夜か。何のようだ、普段あんま来ないのに」
するとそこへ、小走りに白夜が入室してくる。
あまり実験や研究に興味のない白夜が海上研究試験場へ来るのは珍しいことだ。
「ちょっと調べてほしい物があってな。ていうかこの死体なんだ、ドラゴンか?」
「そうだ」
レイヴンは山岳地帯の洞窟での出来事を説明する。
「ほ~ん。じゃあこれもダンジョン云々に関係あるかもしれないな」
「どういうことだ?」
「それを見せるにはここじゃ無理だ。海岸へ移動するぞ」
そうして白夜の案内で海岸へと向かう。
しかし近づくにつれ強烈な磯の香が辺りを充満しだした。
「あの白夜さん、何ですかのこ匂い」
「くさ~い」
「我慢してくれ。お、見えてきたぞ」
白夜の見せたかった物の一部が浜辺に上がっている。
「あ、頭、引き上げておきやした」
「ありがとなオロチ。さて、これが灰崎とライズに調べてほしい物─」
それは数多くの船を沈めた伝説の有る超巨大軟体生物。
「クラーケンだ!」




