灼熱の洞窟
三人称視点です。
夏休みが終わりしばらくの時が経過した。
その間、レイヴンとオウルは普通の高校生に紛れ高校に通い、夜は悪の組織を襲撃し資金や武器を強奪する生活を送っていた。
「ねえ兄さん、いつまで悪の組織の襲撃続けるの?いい加減何かしらのアクション起こした方が良くない?」
「そうは言っても何をするんだよ。やることなんて現状無いぞ」
現在、聖魔連合はすることが無く暇を持て余していた。
というのも、魔法少女連盟の所在はセレネと通波による調査のおかげである程度は絞れてきているがまだ正確には判明していないため攻め入ることができない。
七曜の円卓の魔法少女と戦うにしても、第二席である神田神子都と第四席積一二三の実力を鑑みるに、再起不能になるまで戦うとなると聖魔連合の方も相当なダメージを覚悟しなければならないため今すぐ戦うメリットが無いのだ。
「けどオウルの言う通りいい加減飽きてきたぞこの作業。必要なのは分かるが」
「それにそろそろ魔法少女に怪しまれる可能性があります。私の魔法は目立ってしまいますし」
一緒に悪の組織を襲っていたブラッドと菫が呟く。
菫は毒魔法を以前より精密に扱えるようになったがそれでも毒の被害が大きく、なるべく消してはいるが痕跡が残りやすいのだ。
じゃあなぜ同行しているかというと実践経験を積ませるためである。要はパワーレベリングだ。
「たしかにそうだが、じゃあ他にやることあるか?
「それなら少しやってみたいことあるんだがいいか?」
「やってみたいこと?」
「冒険だよ冒険。たしか新たなる素晴らしき世界の種の内部ってまだ不明な箇所多いだろ?」
ブラッドの言う通り、今新たなる素晴らしき世界の種について分かっていることは面積と地形、それと水晶で体が構成された蟻などの不思議生物が存在しているということぐらいだ。
「たしかに、神社周辺は詳しく調査したがそれ以外の箇所は大まかな地形しか調べてなかったな」
「それにこの前新たなる素晴らしき世界の種の地図見せてもらったんだが、けっこう大きめの洞窟が各地にあったぞ」
「え、そんなにあったの?」
「いや把握しとけよ。副連合長だろ」
「オウル様は忙しかったんですよ。いろいろなことが立て続けに起きましたし」
たしかに夏休みはいろいろあったが、それ以外にも地図なんてわざわざ見ないという理由もある。
「それなら今度の休みにその洞窟へ行ってみるか」
◇◇◇
そして迎えた土曜日─
「ここがその洞窟か?」
「地図によるとここであってるが…でかすぎるだろ」
ワープゲートによって移動してきた一行の前に広がるのは高速バスが五台並んで通れるほどに大きな洞窟の入口だ。
この洞窟は逢魔ヶ時神社から離れたまだ名称の無い山脈に存在しており、全力のキャットガールでも半日はかかる距離に位置する。
「まあなんにせよ洞窟調査始めるか。それとこういう時はあれだよな、番号!」
「一番、オウル!」
「二番、アル!」
「三番、酒井菫」
「四番、ブラッド!」
以上四名にレイヴンを加えた五名で洞窟調査を行う。
「それじゃあ行くぞ!」
「ねえオウル、あれってトカゲ?」
「トカゲ…だね、あれは。けどなんか大きくない?」
洞窟に入ってすぐに表れたのは巨大な数匹のトカゲだ。巨大と言ってもコモドドラゴン程度の大きさだがそれでも十分に大きい。
しかし、普通のトカゲとは明らかに異なる箇所がある。
「なあ、何かあのトカゲ燃えてないか?」
「…燃えてるな、あのトカゲも水晶蟻と同じ不思議生物か」
そのトカゲは背から炎を噴き出し燃えていた。
目の前にいるトカゲは全く熱がっている様子は見られないため、元々体から炎を出すことができる生物だと予想できる。
「ねえ兄さん、一体ぐらい生け捕りにして灰崎さんの土産にするのはどう?たしかあの人炎や熱に耐性あったはずだから問題ないよね?」
「たしかに灰崎さんは喜びそうだな、それとライズも」
「なら私がやります。皆さんガスマスクをつけてください」
「?、わかった」
「スリーピングスモック」
異空間倉庫から出したガスマスクを菫以外の全員がつけたことを確認したと同時に、菫の体から赤い煙が噴き出す。
するとその煙を吸い込んだトカゲの背から炎が消え倒れこんだ。
「お、睡眠ガス出せるようになったんだな」
「はい、催涙ガスが出せるなら睡眠ガスもいけるんじゃってオウル様から言われたので頑張りました。今まで使う機会が無かったですが」
気体である関係上、放出する方向は指定できても空中で拡散してしまうため周囲を巻き込む可能性がある。そのため周辺に住宅街やオフィス街がある悪の組織を襲撃することが多かったパワーレベリングでは使用できなかった。
じゃあ人里離れた場所にある悪の組織を襲撃しろという話だが、そもそもそういう組織は見つけるのが大変なので探す時間が無駄である。
「とりあえず捕獲していくか」
レイヴンは異空間倉庫へ眠ったトカゲを格納していく。
「これで灰崎さんへの土産確保できたね」
「あぁ、ただこの洞窟に生息する生物が炎系統だったとしたらアルきつくないか?」
アルはアルラウネという植物系モンスターをモチーフとした怪人である。そのため炎は弱点であり、地下でライズと戦闘した際も火魔法により大ダメージを受けている。
「その弱点はもう克服したよ」
「え、そうなの?」
「灰崎に燃えにくい木や海水でも枯れない植物を取り寄せてもらって取り込んだの」
炎系列の相手に何もできないとアルは灰崎に相談していた。そこで灰崎が目を付けたのが耐火樹である。
耐火樹とは名称通り耐火性の高い樹木である。それらを取り込むことでアルの耐火性は上昇したのだ。
さらに、耐火樹を取り込むことによる耐火性の上昇が確認できたため、マングローブを取り込めば海水も克服できるのではと灰崎が予測したのでマングローブも取り込んだ。結果は当たり、アルは炎と海水という二つの弱点を克服することに成功したのだ。
「なら問題ないか。それなら洞窟の地形把握してくれないか?」
「りょ~かい、ルートマッピング!」
アルは地面へ根を伸ばし地形を調べていく。
「ん~、だいぶ入り組んでるねこの洞窟。とりあえず最深部の空間までのルートは把握できたけどどうする?」
「私が盾を構えて先導するよ。私なら何があっても即死しないし」
「たしかにな、それでいこう」
そうして一行はオウルを先頭に洞窟を進んでいく。
道中また炎を噴き出したトカゲに遭遇したが、メンバーの魔法により瞬殺していった。
なお死骸は何かに使えないかと考え全て回収している。
「しっかしこの洞窟暑くないか?」
「たしかに暑いな。ちょっと温度計見てみるわ。…うわぁ」
「何度だったんだ?」
「40度超えそうになってるな。あ、今超えたわ」
異空間倉庫から取り出した手元の温度計の表示は40度を超え42,43と今も上昇を続けている。
「オウル~、バフ掛けてよ~、暑すぎるよ~」
「頼まなくても私も暑いから掛けるよ、熱耐性」
「ありがとうございますオウル様」
「ありがとうオウル、それともうすぐ最深部だよ」
一行がたどり着いた最深部には野球ドームほどの広さの空間が広がっていた。
「ここが最深部か?何かダンジョンのボス部屋みたいだな」
「たしかにそうだな。それに雰囲気も禍々しい」
壁のいたるところから蒸気が噴き出し、あちこちに溶岩が広がっている。
その様子からRPGの終盤ダンジョンを連想させた。
「何もいなさそうですが…」
「さすがにそんなはずは…!、みんな私の後ろへ、植物盾!」
皆がオウルの後ろへ移動し盾を展開した瞬間、盾に炎が勢い良く命中した。
「い、いきなりなに!?」
「というか炎の威力がヤバすぎますよオウル様!」
盾によって左右に逸れた炎は地面を焼き、焼かれた地面の一部は融解しかけている。
「炎の熱はさっき掛けた熱耐性である程度は大丈夫だけど無効化したわけじゃないかなね!それでも直撃しなければ問題無い!」
「というか今の炎はどいつからの攻撃だ?!」
「レイヴン、空中に何かいるぞ!」
ブラッドの言葉に全員空中へ視線を向ける。
視線の先には巨大な生物が悠々と飛行していた。
それはあらゆるファンタジー作品において脅威として描かれている空想上の最強生物─
「ドラゴン…だと…!」
現実には存在しないはずの脅威が今、レイヴンたちの前に立ちふさがった。




