最優先討伐対象
あけましておめでとうございます。今年も『死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました』をよろしくお願いします。
三人称視点です。
「次の話題か…、何か他にあったか?」
「あのねぇ、肝心の対策を何も話してないでしょ。レイヴンや鬼頭白夜、ライズ以外の連中もヤバいのよ」
神子都は現在確認されている聖魔連合の構成員の内、警戒度の高いメンバーをリストアップしていく。
「先の三名を除いて特に警戒しないといけない構成員で名前が判明している者はキャットガールと裂、オロチ、八世通波。判明していない者は毒を操る少女と回復能力持ちの人物、そしてレイヴンの側にいた側近と思われる人物よ。こいつらについては情報共有しとかないとマズいわ」
「キャットガール?伊吹山に猫の怪人はいなかったはずですよ、その後に製造された怪人ですか?」
「恐らくね。だって初めて存在を確認したのが先日の京都なんだから。戦闘したのは私とサイファーの知り合いの鍛冶屋智加古って魔法少女と私。その時はブラッドって怪人とセレネってロボットと一緒だったらしいわ。その二人も強くて厄介だったみたいだけど、それ以上に警戒しなきゃいけなかったのがキャットガールみたいよ」
「キャットガールはどんな能力を持っているのですか?」
「高い再生能力と分裂よ。この能力で神界と外に大群で押し押せてきたわ」
京都にて、キャットガールは大量に分裂することで意図的に群衆雪崩を起こそうとした。
群衆雪崩は早々起こることではないが、一度起これば死者が出ることもある危険な事象である。
幸い高火力広範囲攻撃を行える武器を大量に操作できる智加古がいたため何とかなったが、このような攻撃手段のない魔法少女だと何もできずに巻き込まれ圧死する可能性がある。
「あ?分裂する聖魔連合の構成員なら阪神国際空港跡地で見たで」
「そうなの?なら初めて存在を確認したのはそっちね。対策は本体を倒すことだけど分裂体が一体でも残ってたら復活する可能性があるからこの対策はあんま信用しないほうがいいわ」
「となると現状見つけ次第倒していくしかないんですか?」
「多分ね。ともかくキャットガールについては以上よ。次は口裂け女の裂と大蛇のオロチについてよ。この二体は一二三と栞が伊吹山で戦闘したわ」
「せや。あたいと戦った時は白夜の野郎とペアで行動してた。幸いあたいの魔法とその二人の攻撃手段の相性が最悪だったから有利に運べたんやが、筋力を参照する純粋な攻撃力は伊吹山の大将である白夜と同等かそれ以上やったで。何でこんだけの実力のある怪人が今の今まで無名だったんか不思議やわ」
蛇の筋肉量はとても多く、そのため蛇の怪人であるオロチの筋肉量もそれ相応に多い。
そこに大蛇化も加わるためパワーは相当なものになっている。
「私が戦った口裂け女の裂の方は関係していると思われる情報がありました。数十年前に岐阜県で起こり、その後全国に被害が拡大した連続殺人事件。遺体のほとんどが頭部を口から真っ二つにされていたらしいこの事件、当時は迷宮入りしたらしいですが戦闘中本人にきいたら”私がやった”と自白しましたよ」
「…母が時折話していたあの事件か!」
「そういえば、メンデルさんの活動地区ってこの辺りでしたね」
「あぁ、さらに言うと母はこの殺人事件が起きた町出身だ」
メンデルキャップの活動地区は中部地方だが、より細かく明記すると中部地方の岐阜県が主要活動地区だ。
裂が引き起こした連続殺人事件はメンデルキャップの母親が高校生の時に起きた。
この事件によって全国で生徒の登校を禁止しオンライン授業へ移行した学校が増加したという。
「メンデル、それならお母さんからもっと事件について詳しく聞いてない?」
「いや。母は悪の組織以外の脅威を教える学校教育の一環としてこの事件の講演を行うこともあるが、学校教育の場ということもあって詳しい事はあまり話さない。私が聞いたのもこの講演の範囲だけだ。強いて言えばこの事件で母の親友が一人死亡したってこと、栞も戦闘したから知ってるだろうが能力が皮膚から刃物を生成するというものだったってことくらいだ。すまない神子都、あまり力になれなくて」
「別にいいわよ。で、こいつらの警戒ポイントは純粋に強い事。だから見つけ次第私たち円卓メンバーで対処しないとマズい。特に裂よ、大規模戦闘でもないのに何十人と殺してる殺人鬼なんて即刻対処しないとまた被害が出るわ」
「私からも頼む、故郷のみんなの中には今でもこの事件のトラウマに悩まされる人もいるんだ」
当時この事件で親しい人物を殺された人の中には、凶器となった刃物に今でも恐怖を感じる人がいる。
実際、今でこそ治ったがメンデルキャップの母親も刃物恐怖症だった。
「当たり前じゃん!困っている人をほっとけるわけないよ」
「そうですよ。皆さんと力を合わせればきっと倒せます」
グレートフューチャーとサイファー・Kの言葉に他メンバーも同意する。
「みんな…、ありがとう」
「そうそう、戦闘する時だけど二体とも能力の殺傷力が高すぎるから死なないように。それとオロチの方は場所によっては市民を巻き込みかねないから気を付けてね」
単純な殺傷力なら裂の方が上だ。しかし、オロチはその巨体によって生じる建物の倒壊等の二次被害が懸念される。
「次行くわよ。次は八世通波、ぶっちゃけ通波には相手を殺すほどの戦闘力は無いわ。それでも失明させたりと最低限はあるけど」
「じゃあ何が厄介何ですか?」
「通波の厄介な所は自頭の良さとその頭脳によるハッキングを駆使した情報収集能力よ」
通波はいわゆるギフテッドというものであり同年代と比べて頭が良い。さらに電子機器を扱う能力が突出して高く、ハッキングの腕前はその道のプロの世界に通用するレベルである。
「え、こちらの本部大丈夫なんですか?」
「一応過去にハッキングされる事件が起きて以降だいぶセキュルティー強化はされたけど、正直不安しかないのよ。あいつの腕前知ってると余計に」
ちなみに過去に起きたハッキング事件というのは、八世召が起こした事件である。
「けど、それならあまり全線へ来ないんじゃないのか?」
「そうよ。だから見つけ次第倒すしかないの」
「ねぇ、保護するんじゃダメなの?敵になったとはいえ先に巻き込んだのはこちらでしょ」
グレートフューチャーの言う通り、そもそも魔法少女連盟が誘拐しなければ八世通波は魔法の世界と関わらなかったかもしれない。
「いやまあ保護できるならそれに越したことはないけど出来るの?」
「出来る出来ないじゃない、するんだよ!じゃないと流石にその子が不憫すぎる!」
「確かにそうだけどさぁ。じゃあ出来たら保護よろしくね」
「だから意地でも保護するんだって!」
「はいはい。ともかくこれで八世通波については以上よ。次はこれまた伊吹山で初めて存在が確認された毒を操る少女よ。名前はまだわかってないわ」
「その少女なら阪神国際空港跡地であたいのメンバーが戦闘したらしいで。それと、何か伊吹山の戦いで一番殺害数が多かったらしいな」
毒を操る少女こと酒井菫は伊吹山へ向かっていた魔法少女の部隊の中団付近に真横から奇襲を仕掛けた。毒魔法という殺意の塊のような魔法を所持する酒井菫が最も人数の集中している中団を奇襲したことにより、魔法少女側にかなりの死者を出した。
「そうえば、双龍会のメンバー数名サマエルの権能で治療したわね。あの後大丈夫だった?」
「あぁ、今では元気に怪人しばけるくらい回復したわ。ありがとうな」
「いいってことよ。けど、伊吹山へ行った魔法少女には間に合わなくて後遺症が残っちゃった子もいるのよね」
伊吹山にてなんとか死亡を回避できた魔法少女であっても、身体の一部に欠損や不随などの後遺症が残ってしまっている。
「毒といえば、夏休み前に栃木県で毒の能力を扱う怪人によって結構な死者が出てしまった事件がありましたね」
「ありましたねそんな事件、たしか新人のいオウルという魔法少女が対処したはずです」
「たしかにあったけど今回の少女とは多分無関係よ。というかこの毒を操っている奴って魔法少女よね」
「いやそれについてはさっき栞の鏡で魔法少女以外も魔法が使えるって判明したやろ」
「けど伊吹山の時はまだそのこと分かってなかったでしょ」
魔法少女以外も魔法を使えると判明したのはついさっきだ、伊吹山の戦い当時はまだ魔法少女しか魔法が扱えないと思われていた。
そのため、必然的にこの毒を操る少女は魔法少女ということになる。
「けど毒魔法の魔法少女なんていたっけ?」
「たしかいなかったよな」
「メンデルの言う通りです。今確認しましたが魔法少女連盟に毒魔法を持つ魔法少女は所属していません」
「となると聖魔連合がこちらが把握する前にこの魔法少女を加入させたってことよね。いったいいつ加入したのかしら?」
「んなことより、こいつに関しては保護どうこうできる問題やないで。さすがに魔法少女に被害出しすぎや」
伊吹山の戦いで一番被害を出したのはじつは菫である。
「そうよ、一二三が言った通りこいつに関しては保護しようなんて思わないことね、特にフューチャー」
「え、名指し!?」
「当たり前でしょ。あんたのことだからこいつも保護しようとか言い出しかねないしね。毒の魔法少女にどんな事情があったのか知らないけど、通波と違って人殺しなんかの実害出ちゃってるからこちらでもかばいきれないわ」
「わ、わかったよ…」
「わかったならいいわ。それじゃあ次よ。次はいるであろう回復能力持ちについてだわ」
「回復能力…、たしか怪我を治すとかの純粋な回復魔法持ちの魔法少女ってかなり少なくありませんでした?」
「かなり少ないで。神子都みたいに魔法に回復効果が入ってる魔法やサイファーみたいに応用で回復魔法みたいなことしてる奴も含めたらもっと人数増える思うがな」
実際回復系魔法持ちはかなり少なく、日本にいる回復持ちは三桁にも満たない。しかも、長時間経過しまった怪我は治せない者がほとんどだ。
「だけどね、何人聖魔連合に回復持ちがいるか知らないけど一人や二人いれば多分回復間に合いそうなのよね。伊吹山にいた怪人達プラス数十名程度なら」
「どちらにせよ、回復できる人がいるなら真っ先に倒さないと鼬ごっこになりますよ。そればかりか私みたいに痛み分けになっても相手だけ回復してくる可能性もあります」
「そうね。それに回復なんて貴重な能力持ちは前線になかなか出てこないと思うから見つけ次第最優先で倒すよおに。これで回復持ちについては以上よ。最後はレイヴンと一緒に神界へ攻めてきた側近らしき人物よ。服装は緑色のローブ、体格的に女性だったはね」
「緑ローブの女性?それならあたいも空港跡地で見かけたで。確かフュージョンアルとか呼ばれとったな。そんでたしか植物操作系か肉体操作系のどっちかの能力持っとったで」
「あれ?私が神界で見かけた人は技名的に魂系の能力だと思ったのだけどそっちは違うの?」
「まさか別人か?」
「いや流石にこんな似てる人同じ組織内にいる?それも片方はボスの側近らしき立場なのに」
「…能力誤魔化されてんのとちゃうか?」
「その可能性あるわね。もしくは私の魔法みたいに複数の効果を出せる魔法か」
神子都の神懸り魔法は降ろす神を変えることで複数の効果を出すことができる。緑ローブの女性もそういう能力の可能性がある、というか実際そうである。
「けどまあ、レイヴンの側近の人物は強さというより立場的に要警戒ってだけだからあまり優先しなくていいわ。これで今回の会議で話したかったことは以上よ。他に話したい人はいる?」
神子都の質問に答える者はいない。
「いないようね。それじゃあ、以上をもって円卓会議を閉会するわ。みんな、お疲れ様」




