情報漏洩
三人称視点です。
「さて、聖魔連合の幹部の能力が厄介って話題に戻すけど、今回攻めてきた連中にちょっと自分の常識を疑うような能力を持った奴がいたのよ」
「だいたいの能力はそんなもんじゃないですか。そもそも魔法少女出現以前まではフィクションだった魔法なんてものが存在してる時点で今更ですよ」
「今回のはそれで済まないのよ。ちょっと変な質問するけど魔法が使えるのは魔法少女だけで、一人一種類までよね?」
「?、神子都なにを当たり前のことを言ってるんだ?まあ一人一種類かは神子都や栞を見てると時たま疑問に思うが」
神子都は懸り神を変更することで様々な権能を使用でき、栞はグリム童話に登場したものを出せたり語られた事象を再現できる。
二人の固有魔法を知らなければ複数の魔法を使用しているように傍目からは見えるのだ。
まあ神子都に関しては巫女の技術で実質固有魔法二つ持ちみたいなことになってはいるが。
「あんたの遺伝子魔法も大概でしょ。話を戻すけど、その常識を疑うような能力を持ってるかもしれないのはライズっていう男性のスケルトンよ。伊吹山でのスケルトンの目撃情報は無いからいつ聖魔連合に加入したのかは不明。能力は一緒にいた通波の姉である八世召との会話と私の魔法の詳細まで調べられたから能力は鑑定のはずよ」
「通波って姉おったんか。てか能力は鑑定って自分で言っとるやん」
「はずって言ったでしょ。問題なのは、そいつが明らかに四属性魔法である水魔法と土魔法らしき技を使ってたのよ」
「…神子都、そんな質の悪い冗談は言うもんじゃないよ。ひょっとしてさっき揉めたの根に持ってたりする?」
「揉めるのはいつもの事でしょ、そんなことで根に持ったりしないわ。今言ったことは冗談でもなんでもなく事実よ」
神子都の言葉により円卓メンバーの間にざわめきが起こる。
魔法を使用できるのは魔法少女に覚醒した女性のみというのが全世界共通の常識だ。この常識は魔法少女が出現した数百年前から変わらない。
しかし、そんな常識に真っ向から喧嘩を売る存在が今回出現したのだ。
「あの、本来の能力が魔法のコピーとかなのではないですか?コピーなら複数の魔法を使っていたことの説明はできます」
「その可能性も考えたけどそれなら不自然なのよ。もしコピーなら四属性魔法じゃなくて雑に威力の出せる固有魔法をコピーした方が効率がいいはずなのよ。四属性魔法は本人の熟練度の影響が大きいらしいし」
「たしかに、私も初めて水魔法を使った時は今の四分の一ほどの威力しか出せませんでした」
「それに固有魔法はできることが見るまで分からないって問題は鑑定持ってるなら無いだろうし、それなら尚の事コピーしない理由が無い。そもそもの話、鑑定又はそれに類似している固有魔法持ちは全員魔法少女連盟が把握してる上両手で数えられる程度しかいないのよ、もし野良で鑑定のような優秀な魔法を持った魔法少女が現れたら真っ先に囲い込むわ。だからどこで鑑定をコピーしたのかわからないのよ」
魔法少女は優秀な魔法を持った魔法少女が現れた際、悪の組織に利用されないように即座に囲い込むようにしている。
鑑定系などの優秀な魔法を持った魔法少女を連盟が見落としたとは考えずらい。
「…そもそも、前提が間違っているんじゃない?」
「どういうことフューチャー?」
「魔法は一人一種類ってのと魔法少女しか魔法が使えないって常識が間違っている可能性だよ。たしか、この常識が百パーセント正しいかは証明されてなかったなず」
「…たしかに、それなら全部説明がつく。それに常識が絶対正しいなんて証明されてなければ否定できないわね」
「けどそんな重要なこと、魔法少女出現初期に研究されてないなんてことあるんですか?」
「う、それは…まあ…はい」
魔法少女が初めて出現した日、それは同時に怪人が初めて出現した日でもある。
そのため栞が発言した通り、世界各国の軍部が魔法の研究を行った。しかし、そのどれもが目ぼしい結果が出なかった。
そのため現在は魔法の利用方法についての研究は積極的に行われているが、魔法そのもののメカニズムについてはあまり研究されていない。
「魔法少女以外魔法が使えないのは何か原因があるのではないですか?ゲームでは魔王が世界に呪いをかけて何かを制限するのはよくあることです」
「たしかに、それなら色々辻褄が合うな」
「それがホンマやったら誰がやっとんのや。まさか魔王がやっとるとでも言うんか?」
「さすがにわかりませんよ。あ、栞のあれならある程度分かるんじゃないですか?」
「…あぁ、あれですか。魔力消費が多いんで使いたくはないんですが、今使わなかったらいつ使うんだって話ですよね。白雪の魔法鏡」
栞が魔法を唱えると、所持していた単行本から光が飛び出し円卓の中央に豪華な装飾が施された鏡が現れる。
この鏡は白雪姫に登場する女王が所持している魔法の鏡だ。この鏡は常に真実を語る能力がある。
「さて、何を聞くのか決めてください。それと年に四つまでしか質問できないので慎重に」
グリム童話で魔法の鏡が質問に答えた回数は四回、そのためこの鏡に質問できるのは年に四つまでだ。
その上真実を語るという能力の特性上、明確な答えのない問と存在しない物は答えられないという弱点もある。
「とりあえず、魔法を使えるのは本当に魔法少女だけなのかはっきりさせましょ」
「確かにそうですね。わかりました、”鏡よ鏡、この世で魔法を使えるのは魔法少女だけ?”」
『いいえ。知的生命体かつ自らの魔力を開放した者ならば魔法を使用できます』
鏡のまさかの返答によって静寂に包まれる。
「…は?ちょ、ちょっと待ってください。鏡は故障…してない!」
栞が鏡の返答を疑い故障してないか調べるが鏡は正常に起動している。
「じゃあ本当に男性も魔法が使えるってこと!?」
「そういうことだな。神子都、このことは職員の人に伝えるのか?」
「伝えるわけないでしょ。伝えたら絶対混乱が起こる。このことは円卓メンバー間でとどめておいた方がいいわ」
もしこの情報が世に出てしまった場合、世の中の悪の組織がさらに戦力を拡大させる可能性が考えられる。この他にも各国の軍部が軍事利用しようとするのも容易に想像できる。
「そろそろ次の質問行きませんか?」
「そうだね。それじゃあ次は魔法が一人一種類かどうか聞こう」
「まあそうですよね。”鏡よ鏡、魔法は一人一種類まで?”」
『いいえ。四属性魔法なら誰であろうと学べば修得できます』
鏡の返答にまたも静寂に包まれる。
「─すっ、ちょっと一言いいですか?」
「いいですよ」
「Wo ist der gesunde Menschenverstand geblieben?」
栞が思わずドイツ語で叫ぶ。
魔法の鏡の返答は二つとも常識を真っ向から否定するものだ、叫ぶのも無理はない。
「うっさいわね。叫んだ所で現実は変わらないわよ」
「まあ叫びたくなる気持ちもわかるがな」
「けどまさか、本当に複数の魔法を取得可能だなんて思わなかったよ」
複数の魔法を取得可能、これが事実なら更なる戦力強化が見込める。
「けどどうやって修得するんですか?それが分からないことにはどうしようもありませんよ」
「それは各自調べてもらうしかないですよ。こればっかりは存在しない技術扱いになると思うので鏡でも答えは出ないはずです」
「せやな、双龍会の方でも調べてみるわ」
「それじゃあ次の質問へ行こう。早急に調べないといけないのは聖魔連合の本部の場所か?」
「まあそうよね。場所わからないことには攻められないし」
魔法少女連盟は現在聖魔連合の本部の場所を把握していない。場所が分からないことにはどうしようもないのだ。
「わかりました。”鏡よ鏡、聖魔連合の本部はどこ?”」
『聖魔連合の本部は月の裏側にあります』
「…すいません私の耳がおかしいんですかね、月の裏側って聞こえたんですけど」
「栞、ちゃんと月の裏側って言ってましたよ。サイファーにもそう聞こえましたし」
「…白雪姫の女王様もこんな気持ちだったんでしょうね、Machen Sie sich nichts vor, sterben Sie.」
「口が悪くなってるよ栞」
「!、す、すいませんフューチャーさん」
「気にしてないよ、気持ちはわかるし」
「しかし月の裏側とはね…、通りで見つからないわけよ」
伊吹山の戦い以降、魔法少女連盟の方でも聖魔連合の本部の捜索は行われていたが、目ぼしい進捗は無かった。
それもそのはず、聖魔連合の本部は地球に無かったのだ。見つかるはずがない。
「あの、最後の質問はとっといていいですか?今使うのはもったいない気がします」
「たしかにそうね。今日だけで機密にしなきゃいけない情報がゴロゴロ出てきたんだもの。この後のことも考えるととっといたほうがいいわ」
「ありがとうございます」
そうして栞は鏡を単行本の中へと戻す。
「今回鏡が答えた回答については所属チームのメンバー以外には話さないように。この情報が洩れたら碌なことにならないわ」
「そうだね。それと神子都、聖魔連合の本部の場所分かったけどどうするの?流石の私でも宇宙は無理だよ」
「フューチャーが無理なら大半無理よ。そもそも数人行けたところでどうしようもないでしょ、かなりの戦力がいることが確定してんだから」
分かっているだけでも連合長であるレイヴン、伊吹山の大将鬼頭白夜、複数の魔法を取得しているライズ、その他にも伊吹山の戦いで甚大な被害を出した幹部がいることが確定している。数名行けたところで意味が無い。
「とりあえず、今このことで議論しても時間の無駄だから次の話題へ行くわよ」
Wo ist der gesunde Menschenverstand geblieben?《今までの常識どこ行った!》
Machen Sie sich nichts vor, sterben Sie.《ふざけるな死ね》




