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魔族、畑を荒らす、なお妹がブチ切れたようです

 俺たちはいつも通り畑に向かっていた。何もかもが平和なよくある一日の始まりだ。この前の魔族はアリスがお断りしてからこれといって干渉してこない。きっと一人きりの相手に手間をかけるのが面倒だと思ったのだろう。


 そして畑に着くとそこは酷い有様になっていた。芋は掘り起こされて砕かれ、瓜はもぎ取ってから折られていた。


 あらゆるものがぐちゃぐちゃに混ぜられて熟れるものは何一つとして残っていなかった。


 そして畑の中心に鈍い銀色をしたプレートが一枚置かれていた。


 アリスはプレートを拾ってそこに書かれている文字を読む。


「お兄ちゃん、こういうことらしいですよ」


 俺にポイッとプレートを投げる。それをキャッチしてプレートに彫り込まれている文字を読む。


『まつろうものには祝福を、逆らうものは破滅する』


「これは……」


 俺は土壌鑑定のスキルを使う。大量の魔力が検出された、しかもそれは人由来ではないようだ。


「あのクソ魔族言い度胸してるじゃないですか! よほど私に滅ぼされたいようですね」


 アリスから殺気が満ちあふれていた。それは鑑定のスキルで理解したのではなく兄としての感覚から伝わってくる。


「アリス……どうする気だ?」


 俺は恐る恐るそう尋ねた。


「とりあえずギルドに行きましょう、もちろん農業ギルドじゃない方の……ところへです」


 そうして俺は賢者の付き添いとして滅多に関わることのない通常ギルドの方へ顔を出すことになった。


 ギルドまでの道中でアリスはイライラを隠そうともせず呪詛の言葉を吐き続けていた。誰が相手でも必滅を心に決めている様子だ。


 そして俺が戦闘をすることになるんじゃないかと恐怖している中、ギルド前に着いた。


「たのもー!!」


 元気良く入っていくアリスに注目の視線が向けられる。一応アリスの適性はここのギルド向けだが農業ギルドへ向かうことの方が多かったので結構な視線を感じる。


「あら、アリスさん? 今日は何のご用でしょうか?」


 受付のプレシアさんはいつも通りの仕事の一部として割り切っているらしく、詮索するような目線は向けてこなかった。


「プレシアさん、魔族の討伐を依頼したいのですが構いませんか?」


「ま……魔族ですか!?」


 驚いているのは無理もない。この辺鄙な村に魔族との戦闘など縁のない話だ。


「ええ、魔族です。一応筋は通しておきたいので依頼という形にしようと思いまして」


 ギルドからゾロゾロと人が出て行った。この村に魔族と戦うほど血気盛んな人はいない。勝てない戦をやる人はまずいない、それでも野生動物の狩りくらいはできるはずだがやはり魔族討伐はハードルが高いのだろう。


「アリスさん、魔族討伐はこのギルドに出しても受けるのはあなたくらいのものですよ?」


「ええ知ってます、魔族は王国の敵ですからね。依頼にしておけば補助金が出るでしょう?」


 魔族は魔物より討伐報酬が高い、無論その分難易度は上がるし魔物と違って意思を持っているので逃げることもあり圧倒的に討伐難易度が高いが、狙って討伐するほど割のいい相手ではない。


「ちなみに……魔族の討伐依頼とのことですけど、遠出をして倒してくるんですか?」


 言外にこの村の近くに魔族がいるのかと探りを入れてくるプレシアさん、アリスはどこまでも容赦がなかった。


「そうですね、村を少し出たところで待っている魔族がいるようですからね。ぶっ倒してきますよ」


 ギルドに僅かに残っていた人たちがいよいよ誰一人いなくなった。危険な戦いに巻き込まれるのはゴメンだという話だろう。


「あのー……アリスさん、魔族が出たなら話題になりそうなものですが本当ですか?」


「賢者スキルの『探索』が嘘をついていなければと言う話ですけどね」


 プレシアさんはいよいよキャパシティを超えたのか顔から血の気が引いて白くなって、それを通り越して青みまで混じってきた。


「お願いします! この村のために魔族を倒してください!」


「任せてください!」


 こうして魔族との戦いは確定したのだった。もちろん俺もついて行くしかないのだろう。


 俺は覚悟を決めて戦いに参加することを受け入れた。

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