表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超絶やさしい魔王とクズの極み勇者  作者: 仙葉康大
エピローグ
59/59

第二次シュガークライシス勃発

 第二次シュガークライシスが起きた。


 ありとあらゆる国、街、村へ、ありとあらゆる砂糖、すなわちグラニュー糖や上白糖や黒糖を輸出していた帝国マイアが、ある日突然、その輸出をストップしたのだ。


 全世界は混乱の渦に飲み込まれた。


 菓子店の店主は砂糖を使わずに甘みを出す工夫をこらし、なんとかお菓子を棚に並べたが、売れ行きはよくない。


 みんなが砂糖を求めていた。


「早くしなさいよ、クリム」

「待ってよ。まだ詰めてもらってるから」

「はい、できたよ、クリム」


 シオから紙袋を受け取る。その中には、店に残っていた最後のグラニュー糖を使って作ったシュークリームが入っている。硬貨をわたし、お礼を言って、クリムは店を出た。


 店の正面、人が行きかう通りには、アンが箒を持って突っ立っていた。


「遅い」

「アンちゃんが約束の時間より早く来すぎただけでしょ」

「あなたには危機感が足りないのよ。私は一刻も早く、砂糖の効いたお菓子をお腹いっぱいに食べたいの。そのためにこれから、帝国の砂糖担当大臣を締め上げに行くのよ。なのにあなたと来たら、何悠長にシュークリーム買ってるのよ」

「いいの? そんなこと言って。このシュークリームのカスタードクリームには、本物のグラニュー糖が溶けてるのに」

「嘘。早くそれを言いなさいよ」


 アンはすぐ紙袋に手を突っ込み、取り出したシュークリームをひとかじりした。


「あー、これだわ。これよ、これ」


 クリムが見ていると、


「何見てるのよ、あげないわよ」

「いや、それ、もともと私が買ったやつ」

「あなたのものは私のものよ」


 クリムは嘆息した。

「まあ、別にいいけど。私、心広いから」

「自分で言うなんて、あなたもずいぶん恥知らずな奴になったものよね」

「アンちゃんよりは恥ずかしくないから大丈夫」

「それどういう意味よ」


 人々は足を止め、今や名物となった勇者と魔王の口喧嘩を見物する。


「いいわ、砂糖大臣をぶっ倒す前に、あなたをぶっ殺してあげる」

「無理だよ。アンちゃん、私より弱いでしょ」

「あ、殺す」


 アンが強化魔法を使っても、クリムはそれを打ち消せる。だから二人の喧嘩はただの殴り合い蹴り合いになる。


 野次馬がはやしたてる。


 砂糖がないせいで活気を失ったお菓子通りが、再び活気づく。


「ちょっと、あなたたち、何やってるのっ」


 群衆の中からナコの声がした。

 アンもクリムも真っ青になる。


「誰よ、通報したのは」

「そんなことより、アンちゃん、早く」

「分かってる」


 アンは犯人探しをやめ、箒にまたがった。クリムはその後ろにまたがる。


「しっかり捕まってなさいよ」

「安全運転」

「げろ吐いたら殺す」

「だから、安全運転してくれたらね」

「無理」


 箒が飛び上がる。


 一気に高度を上げ、急停止。方向転換し、急発進。その飛行は、王都を置き去りにした。風も雲もそのスピードにはついてこれない。


「クリム」

「なあに?」

「まだ落ちてないわね」

「落ちないよ。ちゃんと捕まってるから」


 クリムはアンの胴体にしがみつく力を強めた。


「大丈夫だよ。一人にはしないから」

「なにキモイこと言ってるのよ」

「ひどい」


 箒がさらに速度を上げる。

 アンが後ろを振り返り、笑った。

 クリムは笑い返す。

 そして、吐いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ