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超絶やさしい魔王とクズの極み勇者  作者: 仙葉康大
最終章 クリムとアン
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融合魔法

 再び影の中へ潜り、顔を出すと、ウルチが棒立ちのアンを殴ろうとしているところだった。クリムは影の中からウルチの足をつかみ、無化魔法を発動させ、強化魔法を打ち消した。同時に、もう一方の手で避ける気のないアンの足を払い、転ばせる。ウルチの拳は空を殴り、その衝撃は、木々をなぎ倒した。


「クリム」


 アンがクリムをまじまじと見つめる。


「アンちゃん、次っ」


 クリムは完全に影から抜け出し、ウルチの次撃を受け止めようとした。が、ウルチのかかと落としは、衝撃波とともにクリムとアンをその場に叩きつけた。


「どうして来たのよっ」

「どうして勝手にお城を出て行ったのっ」


 次の攻撃に備えようと、二人は立ち上がろうとした。ウルチの足がしなる。クリムがアンをかばう形でけりをもらいに行った。無化魔法を発動させたが、それでも、ウルチの純粋なキック力は二人をまとめて吹き飛ばした


「もういいから、どっか行って」

「まだよくないから、どこにも行かない」


 空中でもみ合っていた二人は、大樹の枝や幹に体をぶつけながら、落ち、地に伏した。


「これは私とあいつの問題なの。姉妹でもなんでもないあなたが、首を突っ込んでくる必要なんてないのよ」

「あるよ。だって私、アンちゃんの友達だから」

「あなたなんて友達じゃないわ」

「大丈夫。アンちゃんが何と言おうと、私とアンちゃんは友達だから」

「アン、そろそろお別れはすんだ?」


 木々の影から顔を出したウルチは、目を糸のようにして、口を三日月のようにして、微笑んでいる。


「クリムさん、最後の最後まで愚妹が迷惑をかけたわね。でも、安心して、次の一撃で仕留めるから」

「そんなこと、させません」

「させませんって言ったって、どうやって?」

「サビさん、あれ」

「フフ。クリム。君はいつから魔帝フレンズである私に命令するようになったんだい?」

「仕方ないんです。緊急事態んなんですから。早くしてください」

「おもしろいわ。クリムさんって追い詰められると、けっこう自己中になるのね」

「自分では気づいていなかったけれど、私も大概、自己中なので」


 クリムの影からでてきたサビの手は、魔導書を持っていた。受け取って、ページを開ける。


「アンちゃん、手出して、置いて」

「なに命令してるのよ」

「早く」

「嫌よ。これ、あなたとあなたの大好きな臣下たちが使った魔法でしょ。みんなで力を合わせるとか、私が一番嫌いなやり方だわ」


「アンちゃんの好き嫌いなんて知らないし、それに、みんなじゃない。ここには、私とアンちゃん以外いない」

「私もいるが?」とサビ。

「私もいるわよ」とウルチ。

「ちょっとお二人は黙っててください」


 クリムはアンに向き合った。


「私とアンちゃんでアンちゃんのお姉さんを倒すの」

「あなた、なにムキになってんのよ。別にいいじゃない。私が死んだって」


 クリムはアンを殴った。グーで。顔面を。


「な、なにするのよっ」


 アンは殴り返した。グーで。顔面を。


 二人はウルチなど放っておいて、相手の体の上にのったりのられたりしながら殴り合い、ののしりあった。


「バカ」

「アホ」

「死ね」

「そっちが死ね」


 気づいたら、笑っていた。クリムもアンも。


 途中から、笑い声を発しながら、それでも相手を殴るのをやめない二人は、互いを笑顔で睨んで言った。


「いいわ。ここで殺してあげる」

「それ、魔王である私のセリフだから」

「でも」

「その前に」


 二人、声を重ねて言う。


「あなたを倒す」


 そう言われて、ウルチはゴキブリを(あわれ)れむような目をした。


 二人はウマンジュの魔導書に手をついて唱える。


「フュージョン」


 赤と黒の光が散乱し、それが消えると、一人の女の子が現れた。髪は赤紫色で、肩に垂れている。その目は鋭いようで優しい。髪と同じく赤紫色のブラウスに、赤と黒のチェックのタイトスカート。腰にはススパイからもらった片手剣をさげている。


「あなたはクリムさん? それともアン?」

「アンクリムよ」


 クリムとアン、双方の声を重ねた声がした。

 


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