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超絶やさしい魔王とクズの極み勇者  作者: 仙葉康大
第四章 金とプライド
40/59

プライド

 アンは魔力を高めているが、硬化魔法にも勝る聖剣相手に、素手で戦うなど、勝ち目があるはずがない。

 だから、クリムは、光り輝く刀身に触れた。

 そして、魔法を発動させた。

 有を無に還す魔法を。

 一瞬だった。


 聖剣は消えて、あとには、洞窟の奥へと吹き込む風の音だけがその余韻を残した。

 アンもブーハも聖剣が消えた虚空を見つめている。

 クリムだけがうつむいてた。


「どういう、こと?」


 アンはさらに問いを重ねる。


「私の聖剣は?」

「ごめん、アンちゃん」

「ごめんって何?」

「私が、聖剣を消したの。魔法で」

「なんでよ」


 アンの声は震えている。


「なんで、そんなこと」

「あのまま戦ったら、アンちゃんがやられちゃうと思ったから」


 アンは目を見開くと、大股で一気にクリムとの距離を詰め、首元をつかんだ。


「それ、どういう意味よっ。なんで私があなたに守ってもらわないといけないのよっ」

「だって、守るとか守らないとかじゃなくて、私は、単に」

「聞きたくないわ。本当は自分の方が強い、そう思ってるんでしょ」

「そんなこと」

「いいえ思ってるわ。あなたは。自分が一番強い、そんなふうに思ってるのに、そんなことには気づいていないふりをして、誰よりも殺傷能力が高い魔法を使えるくせに、平和主義者のふりをして、魔王のくせに、勇者と仲良くする。馬鹿にするのもいい加減に――」

「落ち着きな」


 ブーハがアンの襟首(えりくび)をつかんで、クリムから引きはがす。アンはかまわず(わめ)き続ける。


「弁償しなさい。同じものを持ってくるまで許してあげないわよ」

「そんな無茶を言うんじゃないよ」

「だっておかしいじゃない。あの聖剣は私のものだったのよ。それを勝手にどっかへ消して、ごめんの一言で済むと思ってるわけ? 聖剣ってのは、勇者の証よ。聖剣を持ってない勇者がどこにいるって言うの?」

「お前さんを助けるためにやったことじゃないか」

「頼んでないわ。私は聖剣になんか負けなかった」


 クリムはアンのプライドを斬りつけてしまったのだ。


 クリムに守ってもらった。命を救われた。ただそれだけの事実が、プライドの権化(ごんげ)であるアンには耐えられない。


「絶交よ」


 そう言い捨てて、アンは洞窟の外へと走って行ってしまった。


「あんたは正しいことをした」


 ブーハの慰めを受けつつ、クリムはこのとき、確信した。

 正しさほど、間違っているものはないのだと。


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